6月4日、《TOKYO MX2》 で放映した 「サムライ(原題:LE SAMOURAI)」 を観ました。
オリジナル公開は1967年10月のフランス・イタリア合作映画。
主演はかのアラン・ドロン(1935~)で、当時の夫人だったナタリー・ドロン(1941~2021)が初監督。情婦役で共演もしています。
‟ジュリー” 沢田研二さんのヒット曲に 『サムライ』(1978年1月,2位) があり、あ~、この映画が元ネタなんだなとわかりました。♪片手にピストル 心に花束 なんて、およそサムライっぽくないですからねぇ。
元ネタといえば、アラン・ドロンのニヒルで色気ダダモレな感じもなんだかジュリーと似てる。偶然じゃなく意識はしてたのかなぁ。ちなみに情婦の名はジャーヌで、ジェニーではありませんでした。
内容はドロン演じる一匹狼の殺し屋ジェフ・コステロの物語。ナイトクラブの支配人暗殺を依頼されたジェフは仕事を遂行するも、パリ警察の必死の捜査で重要参考人に挙げられます。
また依頼相手のギャングは、最初から使い捨てるつもりで別の殺し屋にジェフの始末を命令。警察・ギャングの双方から追われるジェフは、報復のため敵のボスが潜む先のナイトクラブに単身乗り込むのでした...
ドロン演じるジェフ(左)、パリ名物のメトロで逃亡(右)
“フィルム・ノワール” と呼ばれるクライムサスペンスの名作だそうで、世界中の映画に影響を与えたらしい。どっちかというとストーリーよりも映像表現の特徴が際立ちます。これが ‟フランス映画のような” と形容される様式美なんでしょうね。
上映105分とふつうの長さかと思いますが、セリフが最低限の少なさで、ひとつひとつの所作をまったくもって丁寧に描いてます。無言のまま着替えてアパートの部屋を出て階段を降り、車に走らせるまで ダラダラと じ~っくりとカメラを廻したり。
情婦ジャーヌ(左)、裏社会からの依頼(右)
ジェフの孤独の表現か、部屋で飼っている一羽のカナリアの ピーピー という鳴き声がひっきりなしに響き、トランペットのみのBGMがまたムード満点。
つまりはアラン・ドロン当時31歳のスターの輝きに依拠した映画、と言い切っては身もフタもありませんが、いかに芸術的な映像であってもそれを活かすのは ‟世紀の二枚目” なればこそ。
身もフタもないといえば、なんでタイトルが 「サムライ」 なのかと思えば、<サムライ=孤独で無情な殺し屋> という解釈なのでしょう。‟死ぬことと見つけたり” 的な武士道のゴタクも、人斬り包丁ぶらさげた野蛮な見映えの前には通用しないもんです。