2月1日からBS12(トゥエルビ)で、大映の伝説的時代劇映画 「眠(ねむり)狂四郎」 シリーズを順繰りに一挙放映するというので、第一作 「眠狂四郎殺法帖」 を観てみました。

 

 

 

 

 公開は1963(昭和三十八)年11月。白黒かと勘違いしてましたがカラーでした。失礼しました汗うさぎ

 

 主演は伝説の名優・市川雷蔵(1931~1969)。

 名前は聞けど、きちんと観たことがなかったというのが観ようと思った動機です。当時32歳でシリーズは全12作あり、亡くなった年まで続きました。享年37。若くしてお亡くなりだったんですねぇ。

 

 原作は柴田錬三郎(1917~1978)が週刊新潮で連載した一話完結の連作で、のちにテレビでは片岡孝夫(仁左衛門)さんとか田村正和さんが演じました。2021年4月にお亡くなりの正和さんが生前最後に出たのが 「眠狂四郎 The Final」 で、2018年4月に放映されています。

 

 眠狂四郎は、転びバテレンのオランダ人医師が長崎で日本人女性に産ませた混血児。ニヒルでダンディ、残虐さと優しさの二面性があり、よく女性に惚れられるも刹那的に接するキャラクターです。剣豪としての秘剣はかの ‟円月殺法”。

 

 第一作はあまり設定が作りこまれておらず、‟雷さま” の役者個性に依拠した感じ。市川雷蔵は母子家庭に生まれ、歌舞伎役者に養子縁組されたのだとか。その家は権門でなかったうえ、しかも養子の雷蔵は歌舞伎の世界で冷遇されたため、映画界に転身した経歴です。生い立ちに陰が差しているのは狂四郎と共通するものがあります。

 

 また、170cmの瘦身で生まれつき体が弱く、激しいアクションはまったく出来なかったらしい。剣でゆら~り円を描いたら血煙立てて相手が斬られてる円月殺法は、省エネの意味で好都合だったことでしょう。

 

 筋立ても、加賀藩で前田中納言斉泰と政商・銭屋五兵衛の、密貿易の儲け取り分を巡る争いに狂四郎が巻き込まれるというなかなか凝ったもので、シンプル勧善懲悪のテレビ時代劇とはずいぶん違ったテイストです。

 

 ライバルの拳法使い陳孫には、当時 ‟城 健三郎” の芸名だった若山富三郎。雷蔵さんと並ぶ大映の看板スターだった弟・勝 新太郎のヒキで当時は大映所属でした。

 少林寺拳法の使い手という設定にはかなり驚き。1982年の香港映画 「少林寺」 より古いというのに。今まで知りませんでしたが、少林寺拳法というのは戦後1947年に日本人が創始した新興宗教/武術なんだそうです。

 

 ヒロインは当時24歳の中村玉緒さん。すでに勝新とは結婚してました。お父さんが中村鴈治郎ということで、雷蔵さんとは歌舞伎界以来の昔馴染みだったとか。近年は体調不良と言われてましたが、パチンコ 「牙狼」 のCMに出てたのでよかった。

 

 古すぎる映画のうえ時代劇なので、つまらなかったら雷蔵さんの雰囲気だけわかればいいかな、と思っていたのですが、想像よりよく出来た映画でした。昭和の伝説になっているのに納得。