12月2日、BS日テレ 「木曜は! 特選時代劇」 枠で放映した 「座頭市と用心棒」 を観ました。

 

 凶状持ちの盲目の剣客・座頭の市は、言わずと知れた勝 新太郎さん(1931~1997)の代名詞。1962年から1973年まで映画が25作。1974年から1979年までテレビドラマに移行し(フジテレビ)、4シーズン合計100本制作されました。

 

 ちなみに息子の鴈 龍太郎さん(1964~2019)が撮影中に真剣での殺傷事故を起こしたのは1989年2月公開の松竹映画で、これが復活作にして最終作になっています。

 

 「座頭市と用心棒」 は1970年1月公開の大映映画で、映画版20作目。なんと三船敏郎さん(1920~1997)が共演して、かの黒澤映画 「用心棒」(1961) のキャラクターで登場します。役名は違いますけど、配役クレジットに役名はなく、劇中でもとくに名乗らず “用心棒のセンセイ” としか言われないのはわざとでしょう。

 

 

三船敏郎は当時49歳、勝新は38歳

 

 

 クリーチャーの夢の共演といえば、「フレディvsジェイソン」(2003) とか 「エイリアンvsプレデター」(2004) とかハリウッドでも流行ったことがありますが、邦画では 「キングコング対ゴジラ」(1962) 以来のおなじみですね。後年、黒澤 明監督と勝新は 「影武者」 降板事件で邦画界を揺るがしますから、その勝新と “ミスター黒澤映画” の三船敏郎さんと共演とは、その意味でも因果を感じさせます。

 

 ほかにも大映の看板女優・若尾文子さんがヒロインで、サイレント時代のスター、嵐 寛寿郎さんも出演しています。さすがに鞍馬天狗ではありませんが(笑)。勝プロモーション制作で、東映の大監督・岡本喜八さんがメガホンという豪華さ。おかげでシリーズ最大の配収になったそうです。

 

 場所も時代もわかりませんが、察するに天保年間の上州でしょうか、からっ風吹きすさぶ静かな寒村に養生にやってきた市は、村が以前と様変わりして、ヤクザのせいで荒廃しきっているのにショックを受けます。どうやら八州廻りの役人とつるんで、公金を横領して隠した大金の所在を巡りイキリ立っているらしい。

 

 ヤクザの小仏一家の用心棒として雇われているのが三船敏郎(いちおう佐々大作というらしい)で、対立する烏帽子屋の主人弥助の護衛を頼まれたのが市。用心棒と市は敵対関係になりますが、九頭竜なる冷酷なヒットマンが村に現れるや様相は一変、公金の在り処を探るため、用心棒と市は協力することになります。

 

 ストーリーが魅せるし、退廃しきった村の描写もリアルで、殺陣の迫力もすごい。115分の上映時間で、3回しか中断しませんでした(自分は映画鑑賞の集中力がホントにないのですw)。市のキャラクターとはいえ、やたらと “めくら” などの差別侮蔑用語が出てくるのにはヘキエキしましたが...

 

 剣よりピストルを使って残忍に人を殺傷する冷酷な九頭竜を演じるのはかの怪優・岸田 森さん(1939~1982)で、当時30歳という若さなのにニヒルな雰囲気を出せる俳優は、現在ほんとに見当たらないですね。見事な存在感です。

 

 三船敏郎さんの殺陣は実は大して上手くなく、以前 「用心棒」 をBSで観たときは白黒のうえチャンバラ音もなかったので、実に退屈に思ったものですが、勝新演出のタマモノか役者としてのバリューのおかげか、やたら大物感があります。

 

 クライマックスは小仏一家との大チャンバラと九頭竜との対決。ラストのラストで、若尾文子さんのヒロイン梅乃をめぐる恋の鞘当てから、市と用心棒が斬り合う展開が意外でした。

 

 さすがに決着はつかず、その梅乃のおかげで再度和解に至るものの、お互いズダボロ、半死半生の傷を負うまで闘うのは見ごたえがありました。

 

 ほぼ勝新、三船敏郎という大スターの存在感がすべてといった映画です。逆に言うとこれほど浮世離れしたスターがたくさんいたあのころ、銀幕が黄金時代だったわけですね。

 

 ちなみついで、市の含み笑いが低音の 「オォッホホホホ」 というのが中村玉緒さんとまったく一緒。もしかしたら玉緒さんが真似てるのかなと思いました。