R大学文学部史学科の院生・あんみつ君ニコニコは、ようやく一部の対面講義が再開され、その準備に毎日登校しています。

 

 久しぶりにぜんざい教授ねこへびにも会えるようになり、また新しいテーマでの歴史トークを楽しみにしているようです......

 

 

 

 

チーズ コーヒー

 

 あんみつラブラブ! 「ぜんざい先生、こんにちは~。あっ、シャトレーゼのトリプルチーズケーキじゃないですかぁぁ、今月出たばかりの。ふわふわスフレも好きですけど、チーズクリームたっぷりのコレも美味しそうですねぇ」

 

 ぜんざいねこへび 「最近はチーズ味がブームだからねぇ。シャトレーゼはボリュームのわりには324円でおトクだ。イタリアントマトの3種のチーズスフレは大きくて美味しいけど、472円もする(笑)。ところで、君はこの間まで、しらたま先生オバケに幕末・明治でずいぶん鍛えられたんだってねぇ」

 

 あんみつショック! 「はいぃ~。ぜんざい先生とは幕末の勉強をしたことがなかったので、ついていくのがたいへんでしたぁ。でもいちばん考えさせられたのは、黒船来航による開国以後、国内を近代化して海外に進出、欧米列強に帝国主義国として追いつこうとした軍事熱の大きさです。長年鎖国していたというのに、開国となったらいきなり膨張政策ですからねぇ」

 

 ぜんざいねこへび 「鎖国していたからこそ、海外の事情に疎く、観念的でしか考えられないことで空想的な海外経略策がもてはやされた面もある。実際に鎖国政策が完成した直後にも関わらず、徳川幕府において海外派兵が議論されたことがあるんだから」

 

 あんみつえっ 「あっ、ええと、三代将軍・徳川家光治世の正保三年(1646)正月ですね。林高(りんこう)という中国人が、長崎奉行・山崎権八郎正信に書状を持参。送り主は鄭芝龍(てい・しりゅう)の命を受けた部将・周崔之(しゅう・さいし)からで、内容は日本に明王朝への援軍を要請するものでした」

 

 ぜんざいねこへび 「鄭芝龍(1604~1661)はマカオのポルトガル商人の元に身を寄せていたが、18歳のときに平戸(現:長崎県)を根城にしていた海賊の頭目・李旦(りたん)の部下となり、平戸一官のふたつ名をもらった。李旦が死ぬと芝龍が頭目を継ぎ、福建地方の海賊を統合、南シナ海を制圧して最強の海の軍閥となった」

 

 あんみつべーっだ! 「その勢威に、明王朝も彼を遊撃(海将)に任じ、軍事的にも経済的にも頼りとしました。彼が平戸にいたころ、藩主・松浦重信家臣、田川七左衛門の娘マツと結婚して二児を儲けています。そのひとり福松こそ鄭森、のちの鄭成功(てい・せいこう,1624~1662)です。こうした縁故を頼って、鄭芝龍は日本に援軍を要請してきました」

 

 ぜんざいねこへび 「鄭成功は明王朝に忠節を尽くして戦い、王朝から国姓たる <朱> を名乗ることを許され、<国姓爺(こくせんや,爺=有徳の人)と称された。彼は人形浄瑠璃の作者・近松門左衛門が正徳五年(1715)に脚本を書いて初演された 『国性爺合戦』 で主人公として描かれ、日本でも知られる英雄となる」

 

 

鄭成功記念館(平戸市) 像はマツと福松

 

 

 あんみつむっ 「幕府は将軍家光をはじめ、老中や御三家が参集して協議。ウワサを聞いた諸大名も沸き立ちます。どうやら、みんな出兵に前向きだったようですね。“南海の竜” と異名をとった紀州大納言・徳川頼宣は、全国の牢人侍10万人を率いて自ら渡海すると息巻いたと言います。好戦的なところ、長い戦国時代が終わって平和を謳歌している感じじゃぜんぜんない...」

 

 ぜんざいねこへび 「ここで彦根藩主にして幕府大老・井伊掃部頭直孝は出兵断固反対を主張した。将軍や御三家を前に 『豊太閤の愚挙(=朝鮮出兵)を繰り返すおつもりか!』 と声を張り上げたという。これで計画は棚上げになったのだが、そのうち福建の鄭芝龍本拠地が陥落した報告が届き、正式に出兵は中止となった」

 

 あんみつかお 「このとき、鄭芝龍・成功の親子は脱出したものの、マツは命を落としたと言います。攻めてきたのは女真と呼ばれる満州族の建てた新王朝・清の大軍。時代はちょうど、明が滅び清が興こる歴史の転換点でした」

 

 ぜんざいねこへび 「日本が戦国時代にあった16世紀後半、明は社会経済のめざましい発展を遂げたが、政治的には国家財政の破綻などで衰退をみせていた。その原因のひとつに、豊臣秀吉の朝鮮の役で李朝に援軍を送り、莫大な戦費を強いられたこともある(万暦三大征)。そのうち、かつて満州と言われた中国東北部の女真に大首長・ヌルハチ(1559~1626)が登場し、明を脅かす」

 

 あんみつ得意げ 「12世紀に同じ女真から興こり、中国の北半分を支配した金王朝に倣って <大金> を称したヌルハチとの戦いに加え、国内政治の腐敗で “起義” と呼ばれる地方軍閥や農民の反乱が起きると、明王朝は滅亡に向かいます。落日の王朝を最後まで支えたのが、国姓爺こと鄭成功でした」

 

 ぜんざいねこへび 「日本に生まれた英雄の、大陸と海を股にかけて強大な敵と戦った叙事詩は、鎖国下の江戸時代日本で大人気となった。それではここから、鄭成功の事績を中心に明末/清初の中国と、鎖国下の日本を絡めつつ見てみようか」

 

 

 

 

 

 今回から始まる 「国姓爺合戦(こくせんやがっせん)」。

 

 鄭成功が明帝を守り、起義軍頭目・李自成や、清の英傑・ドルゴン将軍らと覇を争う一大スケール巨編です。

 

 

 それではごきげんようねこへびニコニコ