*2月17日付記事 の続きです。

 

 

 R大学文学部史学科の院生・あんみつ君ニコニコの歴史トーク、今回は近現代史のしらたま教授オバケに、アジア太平洋戦争での南方戦線をテーマにした特講を受けています。

 

 本日は、ダンピールの悲劇 のおはなし。

 

 

 

 

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 あんみつむっ 「しらたま先生、ガダルカナル島の攻防戦は、人命・物資・兵器の大消耗戦になり、結果ここが、遅かれ早かれ訪れたであろう帝国日本の戦争遂行能力の限界点になりました。半年に及ぶ島周辺の戦いで海軍は互角だったのに、陸軍に膨大な犠牲を出したのは道理に合わない話です」

 

 しらたまオバケ 「米英豪連合軍の空母が輸送・補給を優先したのに対し、連合艦隊司令長官・山本五十六大将は艦隊決戦しか考えていなかった。たしかにソロモン海戦やルンガ沖夜戦では敵空母や戦艦を大破させる戦果を挙げたが、海軍は孤島で飢餓に苦しむ陸軍兵士のことなど眼中になかった、と言わざるを得ない」

 

 あんみつ得意げ 「1943年2月、ガダルカナル島からの撤退により、ソロモン海域はアメリカが制海権を握りました。当然、次なる進路は “山本の庭” と称されたニューブリテン島のラバウル基地、さらに南洋部隊が過酷な戦いを続けるニューギニア島です」

 

 しらたまオバケ 「ニューギニア島では後退を続け、わずかにラエ方面を堅持するのみだった。しかし大本営の杉山 元参謀総長は、ガダルカナル撤退の裁可を昭和天皇に仰ぐ際、ニューギニアは死守すると大見得を切っていた。天皇は撤退など許さないからね。だから大本営のメンツをかけ、ラバウルからビスマルク海をわたり、第51師団の大増援部隊を派遣する」

 

 あんみつショック! 「ところが1943年3月2日、ダンピール海峡で米豪連合航空隊に発見された木村昌福少将の水雷戦隊は、猛攻を受けて壊滅。兵器物資はおろか、3000人もの兵士が戦地にたどり着くことなく海に消えました。これがビスマルク海戦と、いわゆるダンピールの悲劇...」

 

 

 

 

 しらたまオバケ 「この戦いで連合軍戦闘機は、レーダーとともに反跳爆撃、という水切り石の要領で魚雷を駆逐艦の側面に命中させる新戦術を使った。さらに前方機銃で乗務員を直接掃射し、これも大きな殺傷力となった」

 

 あんみつプンプン 「こわいですね...ニューギニアへの増援はなお続き、計14万人が投入されましたが、ガダルカナル以上の飢餓に苦しみ、終戦時には2万人しか生き残っていなかったと言います。どうせ餓死するならと、口減らしのために無謀な玉砕突撃命令が何度も出たとか。ガダルカナル以上のヒドさです」

 

 しらたまオバケ 「劣勢を打開すべく、山本長官が考案したのは <い号作戦> つまり、空母でなくラバウルの基地から直接ゼロ戦を発進させてガダルカナルやポートモレスビーを空襲する作戦だ。1943年4月、山本は自ら陣頭指揮を執って出撃させ、艦船18隻、戦闘機134機を撃破する “大戦果の報告” に満足した」

 

 あんみつかお 「戦後に明らかになったところ、空襲の効果はわずかで報告は過大、むしろ日本軍ゼロ戦の撃墜の方がはるかに多かったんですね。しかも熟練のパイロットを多く失い、航空隊の質は一段と落ちることになります」

 

 

左:ラバウルで督励する山本長官  右:ライトニング

 

 

 しらたまオバケ 「錯誤の報告は、山本長官自身の命取りとなった。大戦果を土産に視察と激励のため、揚々とブーゲンビル島に飛び立った4月18日、暗号を解読して待ち構えていたジョン・ミッチェル少佐率いる18機の迎撃隊はまんまとランデブー(会敵)に成功、山本が乗る陸攻を撃ち落とした。使ったのはライトニングというエンジンを相胴にした戦闘機で、小回りが利かないが大型爆弾を搭載して高速で飛行できた」

 

 あんみつシラー 「日本軍はメザシって呼んでたとか(笑)。上空で鉢合わせって考えたら難しいでしょう...いかに暗号で山本長官の行動が把握されてたかわかります。ブーゲンビル島のジャングルで発見された山本の遺体は、機内で白い軍服に軍刀を持ち、眠るように事切れていたと言われますが、これは山本のカリスマを強調する粉飾のようですね」

 

 しらたまオバケ 「実際は即死ではなく、機体から這い出てしばらくして絶命したようだ。山本は享年59。元・越後長岡藩士の家に生まれ海軍のエリートコースに乗り、アメリカ留学や駐米武官を経験し、国際通で独伊との同盟には反対だったことは事実だが、カリスマ的名将のイメージは戦後の小説や映画で粉飾された部分が大きい」

 

 あんみつむっ 「山本の功績って、要は真珠湾奇襲と、二日後のマレー沖海戦だけですからね。ミッドウェー海戦では敗戦の責任を取らず、戦果を捏造する “大本営発表” を認めています。性格面では情実主義で賭け事大好き、愛人に軍事機密をしゃべるなど、お世辞にも折り目正しい軍人とは言いがたい」

 

 しらたまオバケ 「ともあれ海軍のトップである山本の戦死は、軍民ともに大きなショックだった。直後は秘匿され、戦死の発表は5月。6月に国葬が執り行われ、ドイツから勲章が贈られている。暗号を解読していることを知られたくなかったアメリカ軍はあくまで偶然を装い、戦果を公表しなかった」

 

 あんみつしょぼん 「開戦から1年5ヶ月、対米戦争について 『半年一年はずいぶん暴れてご覧にいれるが、二年三年となれば確信は持てぬ』 と公言した山本五十六ですが、皮肉にもそのとおり、ここからは坂道を転がり落ちていきます」

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。

 

 手詰まりとなる一方の南方戦線は、山本五十六長官の死により撤退の声すら出ず、ずるずると継続し人命を浪費していきます。

 

 次回は マリアナの七面鳥 のおはなし。

 

 

 それではごきげんようオバケニコニコ

 

 

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