本日は、「みつまめフォークジャンボリー」。
邦楽フォーク&ニューミュージックの名曲をピックし、歌と世の中の背景に思いを馳せます。
今回は 井上陽水 『最後のニュース』。
11月27日、陽水氏デビュー50周年を記念したトリビュート・アルバム発売に乗っかって、陽水氏関連の記事が多くなってます。
1990年10月発売のアルバム 「ハンサムボーイ」(過去記事) 収録曲で、1989年12月に先行シングル化、同年10月にスタートしたTBS 「筑紫哲也NEWS23」 のエンディングテーマでした。
陽水ファンならずとも、トーキングブルース調で地球上のさまざまな事象をイマジネーション豊かに描写するこの曲は有名でしょう。
改めて聴くと、2019年のきょうびに至っても何ひとつ解決していない、むしろ事態は悲劇的に進行し、地球の破局が眼前に迫ってきたような思いすらします。
今年、ニュースを観ていて、自分が直視できない、顔を上げられない人物がありました。
ひとりは周庭(アグネス・チョウ)さん。
学民の女神と言われ、今年の香港の民主化デモの象徴的な方です。美人なのと日本語が出来るのとで、よくテレビの取材を受けていました。
でもいくら日本語で必死に訴えかけてくれても、自分個人はもちろん、日本国民も政府も、彼らに対し何も助力できない。
それどころか、本邦SNSは、11月20日に香港理工大の近くにいて不当逮捕された東京農大の学生を非難さえしたのです。アグネスさんの嘆息を想像すると、恥ずかしさにうつむくよりない。
ニュースで高みから眺めるだけなのをSNSでは 「冷笑系」 と呼ぶそうですが、胸に手を当てたとき、香港の若者たちと比して、われわれってそんなエラいのでしょうか。
もうひとりは、スウェーデンの16歳の環境活動家 グレタ・トゥーンベリさん。
9月、ニューヨーク・国連気候行動サミットでの演説は大きなインパクトでした。自分はこれを観て、うつむくしかありませんでした。
なぜなら、われわれは気候変動が取り返しのつかない破局を招く今世紀後葉には、確実にこの世にいないからです。
しかしグレタさん、またそれより若い世代、これから生まれてくる子どもたちは、破局寸前の世界で生きなきゃならない。
その責任をどう取ってくれる、と詰め寄られたとき、人間の取る行動は、うつむくか、現実から目を逸らし居直って逆ギレするか。
スピーチのあと、グレタさんへの共感、賞賛の一方、世界中のキレる中高年からのバッシングに曝されたといいます。気候変動なんて起きてないとか、オトナに吹き込まれた道化だとか。
“みんな泣いたあとで誰を忘れ去ったの”
“のどかだった空はあれが最後だったの”
“森の花の園にどんな風を送ってるの”
“声のしない歌を誰が聞いてくれるの”
「最後のニュース」 を告げたあと、“今あなたにGood-Night ただあなたにGood-Bye” で歌は終わります。
グレタさんは 「How Dare You」 と厳しい言葉を投げかけましたが、穏やかに優しく Good-Bye と言われるのも、突き放されたような切なさを感じます。
それでは 『最後のニュース』(作詞/作曲:井上陽水 編曲:井上陽水・川島裕二) です。
♪ 闇に沈む月の裏の顔をあばき
青い砂や石をどこへ運び去ったの
忘れられぬ人が銃で撃たれ倒れ
みんな泣いたあとで誰を忘れ去ったの
飛行船が赤く空に燃え上がって
のどかだった空はあれが最後だったの
地球上に人があふれだして
海の先の先へこぼれ落ちてしまうの
今 あなたにGood-Night ただ あなたにGood-Bye
暑い国の象や広い海の鯨 滅びゆくかどうか誰が調べるの
原子力と水と石油達の為に 私達は何をしてあげられるの
薬漬けにされて治るあてをなくし
痩せた体合わせどんな恋をしているの
地球上のサンソ、チッソ、フロンガスは
森の花の園にどんな風を送ってるの
今 あなたにGood-Night ただ あなたにGood-Bye
機関銃の弾を体中に巻いて
ケモノ達の中で誰に手紙を書いてるの
眠りかけた男達の夢の外で
目覚めかけた女達は何を夢見るの
親の愛を知らぬ子供達の歌を
声のしない歌を誰が聞いてくれるの
世界中の国の人と愛と金が 入り乱れていつか混ざりあえるの
今 あなたにGood-Night ただ あなたにGood-Bye