9月2日放送のNHKスペシャル 「未解決事件File.07 警察庁長官狙撃事件」 を観ました。

 

 “日本中に大きな衝撃を与えた事件を徹底検証、未来への教訓を探るシリーズ 『未解決事件』” として、2011年から不定期に制作されている特番の第7弾です。

 

 

 

 

 1995年3月30日、國松孝次警察庁長官が狙撃され重体になった前代未聞の事件。

 おりしも3月20日の地下鉄サリン事件で、オウム真理教に強制捜査の手が入った直後だけに、オウム信者による報復との見方が濃厚でした。

 

 しかし結局事件は迷宮入り。2010年3月の時効成立後、青木五郎公安部長が 「オウム信者によるテロ」 であった見解を示し、逮捕も出来なかったのに犯人と弾劾したのは反則、と反発を招いたのでした。

 

 自分はけっこう未解決事件に興味があり、「新潮45」 2004年4月号で、自ら犯人であると告白した “東大中退スナイパー” 中村 泰氏(現88歳)の存在は知っていました。彼は現在、別な事件で逮捕され岐阜で無期服役中です。老齢で重病を患ってるそうなので、シャバに出てくることはないでしょう。

 

 この事件では、警察官の小杉敏行巡査長がオウム信者であり、脳機能学者・苫米地英人による脱マインドコントロール治療の結果、長官狙撃を自白した、という1997年2月の日本テレビ 「きょうの出来事」 報道も話題になりました。

 

 結局小杉氏は犯人ではなく、苫米地氏に偽記憶をインプットされてしまったものだったのですが、この自白を警視庁が隠蔽したことから、前田健治警視総監の更迭に至っています。

 

 番組では、中村氏が真犯人であるとほぼ断定したトーンだったのが驚きでした。

 つまるところ、捜査を主導した公安部は、当初の見立てである オウム犯人説 に固執。もしこれが違っていたとなると体裁が悪い、と意固地になったため、中村氏の捜査に乗り気でなかった というのです。

 

 

NHKが検証に使ったという超膨大な捜査資料

 

 

 刑事部は特命班を組んで中村氏を調べ、相当な手ごたえを得たにも関わらず、公安や検察が横槍を入れたため、検挙はされませんでした。

 

 そのかわり、2004年7月に小杉氏ら4人のオウム信者を無理やり逮捕するも、釈放・不起訴。

 時効後、犯人呼ばわりされたアレフが名誉毀損として東京都を訴え、賠償を勝ち取っています。

 

 体面と保身が第一で、そのためなら未解決でも構わない というお偉いさんの態度に、現場で必死に仕事をした捜査員の虚脱感は如何ばかりか。

 

 中村氏に関しては、2003年7月に産経新聞が、八王子スーパー強盗殺人事件(1995年7月)にも関与したと報じましたが、不発に終わっています。不気味な人物なのは事実。

 

 真相としては 限りなくクロに近いグレー という番組のトーンに共感するものですが、迷宮入り というのは結局 警察内部の自壊 であるのだなと思わずにいられませんでした。

 

 

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