本日は、最近読んでおもしろかった書物です
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・吉川英治 「神州天馬侠」 (講談社,1966)
先日、新車の一ヶ月点検があり、小1時間の待ちのあいだ、ディーラー店内の書棚にあった児玉 清さんの書評本を見ていたら、なんともおもしろそうだったので、その日のうちに図書館で探した古い時代小説です。
1925年5月から1928年12月まで講談社 「少年倶楽部」 に連載された少年向けの冒険活劇。図書館にあったのは1966年に講談社から出た 「吉川英治全集」 のハードカバー版です。
天正十年三月、滅亡した武田勝頼の遺児 武田伊那丸 が、武田家再興を目指して奮闘する筋立て。500ページの長編ながらスピーディーなアクション満載でたいへんおもしろかったです。
少年向けといいながら、言葉遣いや戦国時代の時代背景の描写はかなり微細で、戦前の子どもって難しい文章を読んでたんだな と感心。
中盤は 鞍馬の竹童 と、泣き虫蛾次郎 という少年登場人物のライバル対決がやや冗長で、こういうところで少年向けなのか と納得しました。
ちなみに子役時代、テレビドラマで蛾次郎を演じた縁で芸名にもらったのが、「男はつらいよ」 の源公でおなじみの 佐藤蛾次郎さん です。
伊那丸に忠義一徹の 忍剣 に、木隠竜太郎、山県蔦之助、巽小文治、小幡民部、ヒロインの咲耶子、敵には南蛮妖術使い 和田呂宋兵衛 や 鼻かけ卜斎、蚕婆、燕作、半助 と魅力的な登場人物満載ながら、もうひとつキャラクターの深みがないのが残念といえば残念でしょうか。
雑誌連載小説というのは、毎回毎回がおもしろく読めることを求められているので、単行本にした際に筋立ての起承転結がなく、ローラーコースターのような展開で取りとめがないのが難点。
本作もその点では御多分に漏れないですが、かえって飽きずに楽しむことが出来ました。
武田家再興を念願 と言っても、史実では再興してないし、伊那丸も架空の人物なので、どう収まりをつけるのか と心配してしまいましたけども、後味の良い爽快なエンディングでした。

