本日は、最近読んでおもしろかった書物です本

 

 

 ・神門(ごうど)善久 「日本農業への正しい絶望法」(2012,新潮選書)

 

 

 著者は京大農学部出身の農学博士で、現在は明治学院大の経済学教授。

 タイトルは刺激的ですが、主旨としては農業界の正しい現状を直視・理解することで、将来への希望を模索しよう というもの。

 

 “冷酷な事実を伝えよう。今の日本農業は、形ばかりのハリボテ化に向けて一目散だ”

で始まる本文は、小見出しを挙げると

 「有機栽培のまやかし」 「担い手不足のウソ」 「企業が農業を救うという幻想」 「減反悪玉論の誤解」 「日本ブランド信仰の虚構」 「六次産業という幻想」 「JAバッシングのカン違い」

と、報道に顕れる農業界の問題点をメッタ切りに切り捨てます。

 

 自然農法、農商工連携、地産地消、食育、定年帰農・・・新しい農業のありかたとして提案されているキーワードはすべて <欺瞞> であり、品質の低下と採算の悪化、国際競争力の貧弱さにおいて右肩下がりを続けている現実をこれでもか と読まされると、背筋が固まる思い。

 

 それらすべての遠因は、農家を文字通り 票田 としてバラマキを繰り返した政府与党の政策はもちろん、消費者の奇怪な 「日本の作物は安全で良質」 という意識にも見出せると説きます。

 

 ほとんどの作物の品質はとっくに欧米・東アジア諸国に追いつかれ、追い抜かれているのになぜかこの思い込みは健在。それが技術力において停滞を招いている と指摘するのです。

 

 農地は転用が制限されている代わりに、税制で優遇されており、補助金も篤い。「日本は農業を完全に止めれば、国民所得は跳ね上がる」 との記述はまんざら大げさではなさそうです。

 

 著者の信条なのか、やたらとハイテク化・機械化を嫌って個人の職人芸を至高としたり、現代人の味覚は落ちた と昔はよかった的な記述が散見されるものの、本書の問題提起は大いに勉強になりました。

 

 

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