本日は、「みつまめフォークジャンボリーギター」。


 邦楽フォーク&ニューミュージックの名曲を曲単位でクローズアップし、歌と世の中の背景に思いを馳せます。

 今回は、井上陽水 『事件』


 5月25日、信じがたい酷い事件が起こりました。
 岩手県滝沢市で、アイドルグループの握手会に凶器を持ったならず者があらわれ、メンバー2人とスタッフの、計3人を負傷させた事件です。

 このニュースを知り、慄然とすると同時に、ふとこの曲を想起しました。

 1979年9月発売の井上陽水氏のアルバム 「スニーカーダンサー」 の一曲で、大相撲を舞台にしたかなり怖い歌詞です。小室 等さんがレゲエのリズムに乗せて曲をつけました。
 アルバムについてはこちら → 「スニーカーダンサー」


       『事件』 (作詞 井上陽水/作曲 小室 等)

         ♪事件はみぞれまじりの寒い日に起きた
          行司から勝ち名のりを受けた力士が
          次の土俵に上がる力士に力水をつけて

          嵐の様な拍手を両脇にして
          花道を引き上げようとしていた時に
          たくさんの客の手が
          力士の背中に触わろうとしてた
          その中にカミソリも混じっていたのサ

            相撲協会は驚いて信じられないと言った
            ここに来る人達はみんな良い人達のはずだ
            何百年もこの形式を守り続けてきたのだ

          たくさんの客の手が
          力士の背中に触わろうとしてた
          その中にカミソリも混じっていたのサ

          みぞれはすでに雪になり
          白い肌の様に積もった


 陽水氏による音源はなかったのですが、カバー演奏動画を上げておられる方のクオリティが素晴らしかったので、そちらを引用させていただきます。







 さて、「事件」 については重々報じられていますが、ふしぎな意見をお持ちの向きもありますね。以下のような。


 ①警備に問題があったのでは 
        ↓
 たとえ万全の警備を敷き、タレントが無事だったとしても、闖入者があったこと自体が大騒動となったはず。主催者に反省材料を求めるのは 「イジメられる側にも責任」的発想でしょう。
 
 ②イベントではたびたびトラブルがあった。こうなることは予想できたはず
        ↓
 無差別に危害を加えようとする凶悪事件がごろごろあったというのでしょうか。このグループが無数の屍をさらしてきたとでも? 違いすぎる事犯のレベルを混同するのは 「昔は体罰が当たり前だった」的発想でしょう。

 ③CDを購入させる目的の握手会自体が、そもそも商法としてあこぎ 
        ↓
 だからといって凶器を持ち込んで襲撃していい理由になるのでしょうか・・・凶悪犯罪を正当化しかねない、おそろしい価値観ですねぇ。

 ④昔にも美空ひばりさんや、松田聖子さんなど類似の事件があった
        ↓
 けっして現代特有の事件ではないという論旨なのでしょうが、この意見の根底には当世アイドルファンへの偏見が見え隠れしています。責めるべき容疑者ではなく、会場に集っていた人々すべてを異端視する、おそろしい価値観ですねぇ。


 大人気グループゆえ必ずしも好もしく見ている人ばかりでないのは想像つきますが、問題は 「ほとんどの人が」 「ごく当然の社会的ルール」 を守ることで成り立ってきたイベントが、たったひとりの凶行で台無しになることのはず。イベントの是非ではないでしょう。

 それこそ曲中にある
    ♪ここに来る人達はみんな良い人達のはずだ  
     何百年もこの形式を守り続けてきたのだ
を根底から壊すことなのですから、社会的影響は甚大です。
   
 どんなやっかみがあっても、ピントの外れた感想を持つばかりか、それをオンライン上に垂れ流すのはみっともないことだと、自分は思います。

 なにより負傷された3人の、心身ともどもの快癒を祈念いたします。