みつまめの「このレコード聴いてみたビックリマーク
       「LION&PELICAN」
               井上陽水



 古今東西あまり関係なく、みつまめのお気に入りレコードを披露している「このレコ!」、今回は邦楽ニューミュージックから、1stアルバムより順を追って取り上げております、井上陽水氏の作品です。
 本作で、第11弾となります。


        「LION&PELICAN」 (1982年12月5日発売)

            1.とまどうペリカン
            2.チャイニーズ フード
            3.約束は0時
            4.愛されてばかりいると
            5.カナリア
            6.ラブ ショック ナイト
            7.リバーサイド ホテル
            8.お願いはひとつ
            9.ワカンナイ
            10.背中まで45分


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                   レコード

 フォーライフレコード参加後、「招待状のないショー」以降の作品の流れの、ひとつの集大成、あるいは到達点を窺わせる驚異的名盤です。

 ちょうど同時進行で、ジュリーこと沢田研二さんのアルバム 「MISCAST」 の全曲作詞・作曲を手がけたせいか、’80年代のニューウエイヴ/アダルトオリエンテッドを取り入れたサウンドは、詞曲ともに、なんとも艶っぽい雰囲気を振り撒きます。

 沢田研二さんの 「MISCAST」 は1982年12月10日発売(最高11位)で、シングルになったのは 『背中まで45分』。
 以前、当ブログにおきまして取り上げておりますので、よかったら参照ください。
                → 「MISCAST」

 陽水氏のアルバム 「LION&PELICAN」 では、多様な当時気鋭のミュージシャンと共同作業しており、編曲クレジットには伊藤銀次さんや後藤次利さん、中西康晴さんの名前を見ることが出来ます。

 前作から加わった川島“バナナ”裕二さんとは、いっそう深く関わっていて、ジュリーに提供した曲は、すべてバナナ氏がデモテープを作製していたとのことです。
 
 12月5日に発売された 「LION&PELICAN」 は、アルバムチャート最高7位。
 
 完成度に相応しいビッグセールスとはいきませんでしたが、こののち6年後、ドラマ 「ニューヨーク恋物語」(主演 田村正和/岸本加世子) の主題歌に起用された 『リバーサイド ホテル』 が、1988年11月にシングルチャート最高6位のヒットになっています。

                   acoustic guitar

 本作は、以前、自身の曲で何が最高傑作か、と聞かれた陽水氏が、「うっかりするとそれに該当するかも」 と自賛した 『とまどうペリカン』 の、ピアノの下降コードが、あたかも深遠な夜の世界に誘う、といった趣きで始まります。





 「LION&PELICAN」・・・全曲に詳しく触れたいくらい、名作揃いの超傑作なのですが、紙幅上、ざっと俯瞰するに止めます。

 ニューウエイヴ/テクノ方面のサウンドセンスが華やかな 『愛されてばかりいると』 や 『ラブ ショック ナイト』 は、’80年代前半の洋楽の流行を上手く取り入れることに成功。

 また、自身の故郷の炭鉱町で、有毒ガスを探知するために炭鉱夫が鳥カゴを携えていた、という記憶からイマジネーションを膨らませたという 『カナリア』 の不思議な響き。

 ♪ 人々の愛を受ける為に飼われて 鳴き声と羽の色でそれに答える
   カナリア カナリア カナリア 
   盗賊は夜を祝い君にうたわせ プリンセスからのながい恋文を待つ
   カナリア カナリア カナリア (略)
   鳥籠はいまも部屋の隅に飾られ 入り口の鍵の場所は誰も知らない
                    (『カナリア』)


 陽水氏にしては珍しいクリスマスソング 『お願いはひとつ』 では、時節の陰影を切り取る歌詞の内容もさることながら、「語感とメロディーの調和がうまくいった」と自賛しています。

 ♪ ベルの音が街に鳴り響く
   ジキル、ハイドまでがクリスマスプレゼントを買う
   野外音楽堂の外で 子ども達の歌う賛美歌にも賛美されない
                    (『お願いはひとつ』)


 石川啄木 「雨ニモ負ケズ」 を本歌取りした 『ワカンナイ』 のシニカルさ・・・詩の全文を知らなかった陽水氏は、ハードボイルド作家の沢木耕太郎さんに問い合わせたそうです。
 そしたら沢木さんもわからなかったため、わざわざ沢木さんは、書店に啄木の詩集を買いに行ったとか(笑)。

 ♪ 雨にも風にも負けないでね 暑さや寒さに勝ちつづけて
   一日、すこしのパンとミルクだけで
   カヤブキ屋根まで届く 電波を受けながら暮らせるかい?

   南に貧しい子どもが居る 東に病気の大人が泣く
   今すぐそこまで行って夢を与え
   未来の事ならなにも心配するなと言えそうかい?

   君の言葉は誰にも ワカンナイ・・・
                    (『ワカンナイ』)


 そしてそして・・・わたくし みつまめが井上陽水氏の楽曲中、ベスト級と断じて已まない名曲(たぶん) 『チャイニーズ フード』 は、陽水氏シュールな詞世界の極致です。

 ♪ チークダンスをさりげなく踊り 
   ミートボールの転がる距離を計るのは お互いにムツカシイ
   バックギャモンで手に入れたクラブ そこのディナーを飾れるものは
   暗がりで笑ってる あのギャング
   強い力と 誘惑の間で 転びかけてた

   サーフボードのすべりが妙だぜ 
   ペークライトをはり合わせたのはなんとも不思議な その海で
   オーシャンカラーの色彩の色で 
   ビートポンプを見せつけたのはアザラシ その後をブルーシャーク
   強い力と 誘惑の間で 泳ぎ続けた
  
   最新の夢 テレビチャンネル、サイレンのひびき 
   ため息までがフー お茶まで熱くてフー
   みんなで食べるステキなチャイニーズ フード
                   (『チャイニーズ フード』)



 長文になり恐縮です(笑)。
 まだまだ書きたいこともありますが、ひとまずはこの辺で。

 それでは最後に、『リバーサイド ホテル』 をご紹介♪