アマゾンでこのDVDを買ったのは2019年の5月だった。送料込み2000円しないという安値で、音声も字幕もイタリア語のみ。しかし、物語は知っているから、会話の端々が不明でも充分観賞できる。
買った当時、さっそく同好の士とオールナイト上映鑑賞の場で通しで観たことがあった。
作品については、監督があの「ブーベの恋人」や「パンと恋と夢」のコメンチーニ。妖精があのロロブリジーダ。ピノキオ役の少年もゼペットじいさんもズバリ適役。その他、あれこれあるんだが、とりあえず割愛。
で、日付が変わったので、昨日になるんだが、夕方から、途中休憩を入れて通しで観た。
原作と違って、主人公のピノキオは、ほぼ全篇を通じて人間として行動する。人形に戻るのは、いたずらが過ぎて妖精からのおしおきを受ける時だけである。
したがって、常に少年が主人公のドラマになる。
「ピノキオ」という設定を外して観ることも可能である。事実、私はいつのまにかそう観ていた。
貧しく独り身のゼペットの処へ少年が現れる。ゼペットはこの少年を我が子として愛する。
しかし、少年は学校教育をはじめ、大人による強制が嫌いである。だから、そこから脱出し逃げる。それに、そもそも少年にとっても、世間の様々な誘惑は実に魅力的だ。もともと生命力の強い彼は、ゼペットの愛情は感じつつも、いつのまにか離れ、世間を渡り歩いてゆく。当然、彼を騙し、食い物にする大人たちもいる。その荒波も彼は乗り越える。
やがて、彼は養父であるゼペットと再会する。
巨大なサメの腹の中で、である。
その頃、ゼペットは厭世観にとりつかれていた。貧しさから来る寒さ、飢えはもうごめんである。ここは違う。暖かく、サメの飲み込んだ新鮮な魚はあるし、今や、サメの腹の中の一部を書斎にして、偶然、サメが飲み込んでしまった本に熱中している。
ここで生きてゆけばいい。世間に戻るのはウンザリである。
しかし、少年は養父を説得するのだ。もう一度、人間の世界に戻ろうと。
引きこもらず、いっしょに生きてゆこうと少年は言う。
養父は少年に促され、少年と共に戻る。
ネット上で、イタリア語に堪能な人が、かつて、このドラマについて論究していたのを読んだことがあった。
ラストでの浜辺を駆ける二人の会話は
「カネはないぞ」「いいよ、父ちゃんといっしょなら」といったやりとりらしいことを知った。
このドラマのテーマは、血縁を超えた、新しい家族の絆ではないだろうか。
尚且つ、そこには、少年と養父の人間としての成長もしっかり描かれている。
本作の再観賞は、そうした新しい発見をさせてくれたわけである。