週刊ミニコミ紙の編集会議に関わっている傍ら、更により狭い地域のミニコミ紙の編集をする羽目になったことをしばらく前に書いた。A4版表裏二面の気楽なミニコミ紙で、せいぜい隔月に一度発行すればいい程度の気楽なものである。
裏面の連載企画としてスタートした記事のひとつに「地元の個人商店」があり、第1回では私の昔の同級生が続けている理髪店について書いた(6/10 「シリーズ 地元の個人商店」)。
他にも「本の紹介」(これは他のメンバーに依頼済み)と「コレが元気の素です」というコーナーを設けた。
で、「コレ・・・」の第1回は、ある知り合いで83才の男性。
元同僚が地主の畑を借りて色々と作っている。「インカのめざめ」という高級じゃがいもを収穫している際の写真なども撮らせていただいた。おみやげにも頂いた。「栗みたいに甘くて実が詰まっている」と言われて食べてみたら、実にその通りだった。
生きて行く上での「元気の素」は、人それぞれだろう。
それを聞き取らせていただき、記事にするのは、実に何とも楽しいものだとしみじみ思った。
この御仁は、自分自身のあれこれなど語らない。畑仕事と収穫した野菜果物のことを語るだけである。それに、そんなに巧みな弁舌でもない。
しかし、だからこそいいのだ。
自分自身のあれこれなど語らずとも、佇まい、振る舞いが、もうその人を現わしている。記事にできるかどうかは、こちら次第なのだ。
むしろ、訥弁の方が人間味がある。
これまで知らなかったその人物の意外な一面も伺うことができる。
その人の「元気の素」は、その人にとってのささやかな、しかし不可欠な生きて行く上での楽しみであり悦びである。
さて、第2回は誰に取材しようか・・・と、隔月程度の発行でいいのに、もうその気になっている。
つい先日は、95才になる男性の自宅庭内プランターを見せていただいた。
記事にするかどうかは別として、95才という高齢にも関わらず、背筋がシャンとして、楽しそうに語る姿は実に魅力的だった。
実家の近所に住む88才の男性も記事にしてみたい。
この方は実に多趣味で、その多趣味の内のひとつである「梅干しづくり」は素晴らしい出来で、これはもう南高梅よりも良質かも知れないと思わせるものである。
そうなのだ。
この取材は、私にとって「人間に対する信頼」を取り戻すための極めて有効な機会なのだ。
特に、この数日の間で、アルバイトを辞めるキッカケになった古参者によるパワ・ハラうんぬんと職場の非人間的構造的致命的欠陥の渦中にあった自分にとっては尚更である。
ささやかな人間賛歌をめざす取材は、私自身にとって必要かつ有意義な取り組みとなりつつある。
※関連文献・・・岸田秀、町沢静夫『自分のこころをどう探るか』