記憶にかかわる脳内の感情回路、化学物質 | 恋着、横着、漂着 遊び盛りゆるゆるのびのび60代

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2年早く退職して機能と効率のタガを外すことが出来ました。
人生をゆるゆるのびのびと楽しんで味わって行きたいと思う60代です。

 しばらく前に川崎市に引っ越した元同僚と会う機会を持った。彼女は大学時代の同窓生でもあり、カミサンも同様である。私たち夫婦が川崎市まで出向き、のんびりとランチを摂りながら駄弁った。

 話の中で、ある上級生のことが話題になった。

 ガボちゃんというニックネームの女性で、「覚えてる?」と聞かれた私は答えた。

 「よく覚えてるよ。市松人形みたいな髪型で学生なのに田舎のオバサンっぽくて愛嬌があって。1学年上で、卒論書いてた時に、悪友のTさんとお互い進み具合を心配しながら、お互い清書し合って、といったような何だか訳の分からないことやってた。同じゼミの俺らと同級生のHのことをよくからかってたなあ」

 少々驚かれた。

 私の記憶が微に入り細を穿つものだったからだ。

 

 私は、そうした旧友のあれこれをつぶさに覚えているのだが、どうやら他人様はそれほど覚えてはいないらしい。

 かと言って、こんなものは特技でもなんでもない。まるで生産性に貢献しないものであることは明らかだ。むしろ生産性とは無縁であるからこそ、覚えているのかも知れない。

 

 そんなことを考えながら、『脳と心 人生をつむぐ臓器 記憶』を手に取ってみた。NHKサイエンス・スペシャル「驚異の小宇宙・人体Ⅱ」の書籍版である。

 私の「生産性に貢献しない記憶」に関わるくだりがあった。

 人の脳には、感情の回路があるのだそうだ。

 その回路の中核は、記憶を創り出す海馬の中をめぐっているのだが、その回路からアセチルコリンという独自の化学物質が分泌されるらしい。このアセチルコリンが記憶を強める役割を持つという。

 とすると、もしかしたら、私の脳の中のアセチルコリンの分泌量は、少しばかり多いのかも知れない(笑)。

 尚、このアセチルコリンの不足がアルツハイマー型認知症に関係ありという説もあるという。

 いいじゃないか、私は認知症になりづらい・・・かも知れない。

 

 さらには、記憶に関連して分泌される化学物質は脳の中だけではないというから驚きだ。

 ストレスを感じた時には、副腎皮質から化学物質エピネフリンが分泌されるのだが、軽いストレスならばエピネフリンが適度に分泌されて記憶力は高まるが、強すぎると過剰分泌となり逆に低くなるらしいのだ。

 このことに関わって、ある人物が仮名で紹介されている。

 Hさんという27才の方で、学校の先生だったのだが、赴任直後、故郷を飛び出し55日間放浪後、病院に収容された。

 その後、放浪中の55日間は彼の記憶になく、両親に対しても自分の親という実感を持てなくなってしまったという。

 治療にあたった医師は「忘れることで過去の自分を許すことも人生にとって重要」とコメントしている。

 それにしても、脳ばかりか身体がとどまらせたくない、一切消し去りたいほどの強いストレスをともなった記憶というのも、すさまじい。

 私にはないし、一般的にも珍しいだろう。

 

 ところで、記憶というのは細胞化して定着するようなのだが、それは個々バラバラなのではなくて、いくつかのグループが一つの図形を記憶している・・・といった態らしい。

 だから、記憶というのは、つながりなのだ。これは、私の好き勝手な解釈であり、単純に換言してみただけだが。

 たとえば、本書でも例に挙げられているのだが、おぼろげな記憶は連想によって、はっきりとした記憶に辿り着くことが多い。

 昨晩の私がそうだった。

 独り芝居のビラの構想が浮かんできて、そのひとつ「鏡花」関連の素材をみつくろおうと思った。

 私にとって、鏡花と来れば、女優だった田中真理さんである。

 彼女の最も活き活きとした和装の姿は、あの映画しかない。ええと・・・ひでえ映画だったけど、とにかく田中真理さんはよかったからなあ・・・何ていうタイトルだっけ・・・忘れた・・・あ、南らんぼうが主役だった。北村透谷役だったけど、「田中真理、南らんぼう」だけで検索して、すぐにヒットするだろう・・・。

 と、途中からはネットに頼ってしまったのだが、判明した。

 肝心の画像も保存しておいた。

 しかし、今、映画のタイトルは、もう既に忘れている(笑)。

 なぜなら、どうでもいいからである。

 田中真理さんの和装の画像が見つかれば、それでよかったわけで。

 

 本書は、囲み記事風のエピソードも充実している。

 その中の一つに「既視感」にまつわる解説がある。

 「既視感」とは過去のあいまいな記憶を現在の鮮明な画像で埋め合わせてしまうだけなのだという。

 そうだと思います。

 勝手な解釈なんですね、自分本位の。自分の感情や願望先行の。

 ハーイ。

 オカルトにすがっちゃダメですねえ。

 オカルトなんかにすがったり頼ったりしなくとも、脳科学ってめちゃくちゃ面白いんですからね。