ホンダダックスの持ち主と話し込んでしまいました | 恋着、横着、漂着 遊び盛りゆるゆるのびのび60代

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2年早く退職して機能と効率のタガを外すことが出来ました。
人生をゆるゆるのびのびと楽しんで味わって行きたいと思う60代です。

 日曜日は孫娘のお宮参りに日高市の高麗神社へ出かけた。

 曇り空のため陽射しはほとんどなく、涼しい風も吹いていて祈願される孫娘にも快適なひとときだった。

 帰りがけに、ふと見るとホンダダックスが停まっていた。

 私はカミサンと二人でカミサンのクルマに乗って来た。待たせるのはカミサンだけだから、我がままぶりを発揮してしばらくダックスに見とれていた。

 

 

 写真はホンダのホームページから拝借した。この時、停まっていたダックスも同じ赤だった。

 そうなのだ。

 もしかしたら、これに乗っていたかも知れないのだ・・・と何だか、ちょっと感慨深い。

 まだ新品である。ピカピカしている。AT車だ。

 跨るわけにはいかないが、大きさも丁度いいなあ。乗り心地もいいだろうなあ。

 持ち主はまだこの愛車に戻らないのだろうかと辺りをそれとなく見回したら、何となく遠慮がちに笑顔で近づいて来る女性がいる。どうやら離れず夫殿もこちらに歩いて来る。40代前半とお見受けする。

 あ、そうか。ダックスの横には同じホンダ120CCの何と言うバイクか知らないが(笑)、停まっている。こっちは夫殿のバイクだろう。

 「こちら、乗っていらっしゃるんですか」と尋ねると

 「はい、そうです」と答えてくれ、しばらく立ち話に付き合ってもらう形になった。   

 「まだ新しいですよね。どれくらい走りました?」

   「5000kmくらいです」

 「ATですよね」

 「そうです」

 

 原付小型二種の免許も持たない自分は、去年の夏に取得するつもりでダックスを仮予約したのだが、三カ月待たされて音沙汰もないので、しびれを切らして同じホンダのバリオトライクを買ったことを伝えると

 「私も半年待たされました」と。

 しかも、一軒目の仮契約店は信用できないと判断して、違う店で仮契約をし直したら、さほど待たされず買えたと言う。

 好判断だったのだろう。それでも辛抱強いなあ。

 ナンバーを拝見すると、鶴ヶ島だった。

 住んでいらっしゃるのも鶴ヶ島で、自分は飯能に住んでいると言うと

 「飯能にはよく出かけます」とのこと。

 ご夫婦とも乗るのは休日限定らしい。

 「この間出かけた山中湖よかったですよぉ」と言うと、「あっ、行きました」と。

 ならば、299号線で群馬、長野までぜひ・・・などとおすすめした。

 夫殿はただ笑顔のまま黙っていて、女性とだけ好き勝手駄弁らせていただき、楽しいひとときを持った。

 

 ついつい饒舌になってしまったのは、間近でダックスを見るという機会が今までなかったからだ。

 気が付けば饒舌の余り、持ち主のこの女性がどんなバイク歴を持っているのか、ダックスは何台目なのかといったことも聞かずじまいだった。

 それにしても・・・

 人とバイクも出逢いなのだよなあと改めて思う。

 仮予約しながら三カ月待たされて、しびれを切らし、トライ購入に踏み切った自分。

 仮予約店は変えながらも、半年待ってダックスを購入したこの女性。

 お互いに決めたバイクは違うが、買って大正解だったし快適に乗れている。

 それともうひとつ。

 こんな風に、行きがかりで立ち話をし合うということの楽しさ。それがきっかけでお互い連絡先を交換し合うなどということはない。だからいいのだ。

 この日は、私の方はバイクに跨ってはいなかったが、ささやかなバイク旅での偶然の出会いがいいのだと改めて思う。

 

 ついでに少々脱線するが、退職して会わなくなった他人というのは多い。同じ事務所で机を並べる同僚の他にも同僚がらみが色々いた。嫌いな奴らも少なからずいた。その連中の居住地については事細かくは知らないが、近くではないから、日頃、偶然にも合うことは今後もめったにない。

 その連中の存在というのは、今や、私の内面では「ゼロ」もしくは「死んだも同然」なのである(笑)。

 かつて不愉快な思いをした奴、軽蔑し切った奴というのは、会う義理もないから「消えて」くれている。

 

 一方で、バイク、トライク旅で出逢い、お互い興が乗って立ち話ながら話し込んで・・・という相手は一度だけの遭遇である。

 意気投合の仕方が尋常ではなく、連絡先の交換までする・・・という相手は、おそらくだが今後もないだろう。

 だから、当然のこと、なあんのストレスもないのだ。

 

 今年の一月に作った自家製本を送ったところ、ある一人から「リハビリ中ですね」という返信をいただいた。

 「ココロのリハビリ」ということになるのだろうが、退職して半年が経っていたその頃、その指摘はうーむ・・・と自問する機会にもなった。

 ひとつの事業体に29年いたのだが、最後の7年間は仕事そのものが、それまでとガラリと変わったのだった。その7年間で、私はかなり「やられていた」と今では思う。

 だから、と言っていいのか、今、私は新しい人間関係など作りたくないと思っている。今週から始まるアルバイトは週3日、1日6時間だから、何らかのストレスが発生しても解消は難しくもないだろう。

 「独り芝居」上演に向けては、芝居小屋となる喫茶店の店長とスタッフの、せいぜい2人と行き合うだけである。

 他人様と出来るだけ関わらない・・・などと決意したところで、そもそも日常の中であれこれ関わり合う他人様はゼロにはならない。だから、せめて固定した人間関係を可能な限り持たない。固定していなければストレスの度合いも低い。

 

 そんなことも考えさせてくれた(笑)ホンダダックスとその持ち主との一度限りのささやかな交流だった。

 

 

   ※関連文献  諸富祥彦『孤独の達人』