近年、中国、北朝鮮、ロシア等の日本周辺の国々は盛んに軍備を拡張しています。今後も、中国は、経済的にも軍事的にも成長し続けるでしょうから、将来のある時点で、アメリカがこれに耐え切れなくなり、いわゆる日米安全保障条約を終了させ、在日米軍が日本から去って行くという事態も想定ぐらいはしておいた方が無難です。常に最悪の事態を想定してそれへの備えをしておくことはとても大事だと私は考えています。在日米軍が日本から去って行けば、アメリカ以外の核武装した軍事大国が日本を軍事的に傘下に入れようとするはずです。そして、その軍事大国は間違いなく民主主義国家ではありません。このような重大な危機が発生した時になって慌てて日本が核武装しようとしても時間的に到底間に合いません。

 しかし、拙著の先の二本目の論文で私が提案していた日本国憲法改正案の新条文の解釈を変更するだけで、少なくとも憲法上あるいは法的には、このような事態に十分対処できます。新条文の文言は変えずに、あくまで解釈だけを変更するというやり方です。

 拙著の二本目の論文で書いたように、国家生存権という概念の淵源(えんげん)つまり出どころは三つあり、一つ目の淵源は、日本国憲法第三章第二十五条の生存権で、二つ目の淵源は、日本国憲法第三章第十八条、第三十一条、第三十三から第三十五条等に見られる原則で(その原則とは、特定の条件を満たした場合に国家権力が外国人等を含む一般市民等に対して拘禁・逮捕・処刑等の実力行使することができるというものです)、三つ目の淵源は、自然界に見られる摂理です。人類は他の生物種より知能が優れているとはいえ、生物であることは間違いありません。生物は生存し続けるために、日々、同じ種の他の個体や他の生物種と多少の競争(生存競争)をしており、この争いによって当事者のどちらかが命を落とすことがあります。これは自然界に見られる摂理であり、日本人を含めた人類は自然界の摂理に逆らうことができません。そして、法律の世界では、人だけでなく、人の集合体である国家もあたかも一人の人間のように人扱いされます。(これを法人といいます)。ということは、自然界に見られる摂理にのっとって考えていくと、法人たる国家が生き残っていくためには、他の国家との多少の生存競争は避けられないということが分かります。

 拙著の二本目の論文によれば、三つの淵源の中で、主たる淵源はあくまで一つ目の淵源で、三つ目の淵源は脇役でした。順位をつけるとしたら、一つ目が一位で、二つ目が二位で、三つ目が三位といったところです。しかし、重大な危機に日本国が遭遇した場合は、この順位こそ変えないもののその差を僅差にするか、あるいは横一線の同順位にしてもいいと私は思います。

 こうなってくると、私の憲法改正案の解釈も少し変わってきます。ここからが新しい解釈になります。①から⑥まであります。①日本国は、世界中の他の全ての独立国家に対して、日本国の独立を尊重するよう要求する権利があります。②日本国は、自国の生存に必要な範囲内で、戦争・武力による威嚇・武力の行使・戦力の保持・交戦等を行う権利があります。しかし、日本国は、他国を侵略したり、征服したりする権利はありません。③自衛隊の本来の務めはあくまで日本の防衛ですが、世界が平和で安定していてこそ日本の平和と安定が守られるのだということにかんがみて、新条文を含めた日本国憲法の全ての文言とその目指す理想を考慮に入れつつ、必要に応じて、自衛隊を海外に派遣して、他の国の平和と安定等の実現のための応援や後押しをすることも、慎重に抑制的に行う限りにおいて認められます。④日本国は、自国の生存に必要な範囲内で、集団的自衛権を行使出来ます、つまり、日本国は、いわゆる日米安保条約が解消された場合、新たな集団的自衛権の輪(※要するに軍事同盟です。日米二国間の新しい条約も含みます。新条文を含めた日本国憲法の全ての文言とその目指す理想が似通った憲法を持ち、その憲法を遵守している国々との同盟が望ましいでしょう。)に加わることが可能ですが、実際に集団的自衛権を行使できるのはあくまで自国の生存に必要な範囲内であって、他国を侵略したり、征服する権利はありません。⑤日本国憲法第二章第九条が、戦争たるもの全般を行うことを日本国と日本国民に禁じているとしても、日本国と日本国民は、新条文が認める国家生存権の範囲内で実力行使つまり戦争が出来ます(この場合も他国を侵略したり征服したりすることは出来ません)。⑥自衛のための武力行使と侵略行為どちらの条件も同時に満たすような行為を自衛隊が実行することが、新条文を含む日本国憲法に抵触するか否かについて考えてみましたが、これは白でも黒でもない、灰色の領域に属するように思えました。以上の①から⑥が新しい解釈です。

 新しい解釈は、重大な危機が始まる前から必要に応じてある程度は採用するべきです。これは、アメリカ軍が日本に駐留している最中に、アメリカ軍が日本から去って行った後の備えを始めておかないと時間的に間に合わないからです。ここが肝心な点です。

 また、日本国が自ら核武装することについてですが、日本国は世界で唯一の戦争被爆国なので国民の間に核兵器に対する強い拒否反応がある上に、仮に核武装しようとしても国内だけでなくアメリカを筆頭に世界中から徹底的に反対・妨害されるでしょうから、私は、核武装よりも、むしろ、破壊力の点で核兵器に及ばないものの十分な抑止力が期待できるような新兵器の開発を行う方が良いのではないかと思います。

※国家生存権というものは私が考案した国家固有の権利で、私の日本国憲法改正案の柱になっている概念です。詳しくは当ブログの以前の記事をお読みになって下さい。今回は長い文章になってしまいました。読んで下さった方には心より御礼申し上げます。ニコニコ爆  笑笑い泣き