なくしがたい大事なものって、どうやってしまっておく?
誰にも見つからないようにしまっておく?
それとも、いつも肌身離さず持ち運ぶ?
僕は断然、しまっておく派。
だって肌身離さずって言っても、どうしても目が離れる時間があるから、怖いもの。
だったら絶対安全!っていうところにしまいこんでしまったほうがいいでしょう?
だけどね、
大事に大事にしまい込んで。ずーっと奥底に眠らせてしまっていたらね、
まずどこにしまったかを忘れて。
次にしまいこんだことを忘れて。
最後には、
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「なー?それでさ」
「へぇ」
「久しぶりに飲んだのに突然そんなこと言いだして」
「へぇ」
「途中で....って聞いてんのかよキュヒョナ」
「聞いてますって。ワインの瓶が突然デカくなって天井突き破った話でしょ?」
「俺の話のどこをどう読み取ったらそうなった?」
目の前で繰り広げられていたやり取りは、拗ねたジョンウニヒョンをキュヒョナがめんどくさそうに慰めて終わりを告げた。
衣装も合わせてあとは各自最終確認をする時間。つまり言えばやることがなくて暇な時間。バックステージを撮るためのカメラがあれば別だけど、今日の講演では来ないらしいことを事前に確認していたから、おとなしく楽屋のソファで一人携帯を見て過ごしていたら始まった二人の会話。
一方的にジョンウニヒョンがしゃべってキュヒョナが適当に相槌をうついつものやり取りだったけど、なんだか今日はキュヒョナのスルー率がいつもより高かった気がする。
今だっていつもなら機嫌直しにはたから見たら気持ち悪い笑顔を(テレビには放送できない感じのにやけ顔で本当に気持ち悪い)向けて抱き着くぐらいはするのに、さっさと腰を上げて楽屋から出て行ってしまった。
パタン、と少し大きめの音を響かせてしまったドアを少し驚いたような顔で見た後、眉を下げてこちらを見やったのが視界の隅に映ってため息が漏れた。
「....今のはジョンウニヒョンが悪いんじゃないんですか」
「何が?」
何がってそりゃ、自分の恋人が優しく微笑みながらほかの、しかも自分と似てるって世間で騒がれる親友の話してたら怒るにきまってるでしょ。
キュヒョナからジョンウニヒョンが好きだって話をされたとき大して驚かなかったことを覚えてる。
明らかにジョンウニヒョンに向ける眼差しがメンバーに向けるそれじゃなかったし、寝言でジョンウニヒョンの名前をつぶやいてるのを聞いたことあったから。
ごめんなさい、誰にも言うつもりはなかったんです、けどもう、おかしくなってしまいそうで。
そう涙を流しながら言うキュヒョナを突き放すほど僕は鬼じゃなかった。だから、協力した。世間ではキュミンなんてカップル名で呼ばれてる僕とキュヒョナの仲の良さを利用して、キュヒョナが想いを伝える機会を作ったのも僕だった。
だからか二人が晴れて付き合うことになったとき、何かこたえるものがあって。
僕に真っ先に伝えてくれた二人を目の前にして、何故か涙がこぼれたことを覚えてる。ボロボロ涙をこぼしてしまって慌てさせたなぁ、なんて今思い出しても恥ずかしい記憶だ。
そんな経緯もあってか、この二人ののろけ話を聞くのも喧嘩話を聞くのも大概僕で。グループ内でジョンウニヒョンとキュヒョナが険悪な雰囲気になってたらまず僕に聞け、なんて暗黙の了解ができてしまうぐらいだった。本当、迷惑な話だよね。
今日もその一環なんだろう。まだ無表情のまま、何もわかってませんという顔でこちらを見るジョンウニヒョンにめんどくさいというポーズは崩さず向きなおる。
そんな顔してどうせわかってやってるくせに。
「ジョンウニヒョンはキュヒョナが僕とばっかりつるんで、しかも逐一その話されたらどう思います?」
「仲良いなって思うけど?」
「......僕にキスしてたら?」
「パフォーマンスなら仕方ないよな」
「...........」
「悪かったヒョンが悪かったから無言で棒を構えるのはやめろソンミナ」
ほらね。やっぱり確信犯だった。
棒は構えたまま睨みつけたらジョンウニヒョンはさっきの顔から一転意地悪い笑顔を浮かべて、キュヒョナが出て行ったドアを見やってくふ、と笑いをこぼす。
「仕方ないだろ?だってキュヒョナ目に見えて不機嫌になってくんだよ、可愛くてさー」
そういって切れ長な目を細めて、今度ははっきりクスクス笑うジョンウニヒョンにまたため息が漏れる。この前ジョンウニヒョンが釣れない、なんて言っていたキュヒョナに言ってやりたい。お前、遊ばれてるよって。
ジョンウニヒョンは表情管理がうまくて、かなりの演技派だ。キュヒョナだって頭の回転が早いほうだけど、惚れた弱みってやつなのかジョンウニヒョンに対してはその頭は十分に機能しないらしくて。こんな風にジョンウニヒョンはそんなキュヒョナをよくからかって遊んでる。
遊ぶのは一向にかまわないんだけれど、それに僕を巻き込むのはいただけないんだよね。板挟みになってそれぞれから愚痴という名ののろけを聞く僕の立場にもなってほしい。
「....ほどほどにしとかないとまた反撃くらいますよ」
「あー....わかってる」
「立てなくなったって言われてももうフォローしませんからね、僕は」
「.........」
やりすぎたときのことを思い出して無言になったジョンウニヒョンにほくそ笑む。あの時は本当に大変だったんだから、もう二度とないようにしてもらわないと困るんだ。
持ったままだった今日のライブでのパフォーマンスに使う予定の棒を机に戻して、いやでもなぁ...なんてまだ懲りてないらしいジョンウニヒョンの話を適当に相槌を打ちながら聞き流す。こうやって僕と二人で話すのもあんまりキュヒョナはよく思ってないらしいことをこの人は知ってるんだろうか。知ってるんだろうなぁ。本当めんどくさい二人だ。
そこまで考えたとき、意地悪い顔でのろけ話を(本人曰く『愚痴』)続けていたジョンウニヒョンがぴたりと話をやめて真剣な顔でこちらを見る。
「....ありがとうな、ソンミナ」
相変わらずの突然の反応にどう返していいかわからず、固まる僕を余所にポツリ、とさっきより幾分か小さい声で口に出したのは僕への感謝だった。
「...え?なんですか突然」
「いや、気持ち悪がってもいい関係なのにさ。普通に受け入れてくれて話まで聞いてくれて、いつも感謝してるから」
「え、そんな、いいですよ。今更じゃないですか。キュヒョナは大切な弟ですし、ジョンウニヒョンだって....」
ジョンウニヒョンだって?
なんだろう。
「俺だって?」
「....大切な友人ですし?」
「なんで疑問形だよ」
俺もソンミナみたいな弟を持てて幸せだよ、なんて笑顔で頭を撫でてくれたジョンウニヒョン。
何故かドクン、と跳ねた鼓動に動揺して、何か言おうとしたそれは音にならなかった。
「あ!ジョンウニヒョンまた...」
「げっ」
機嫌を落ち着かせたのか今度は静かにドアを開けて帰ってきたキュヒョナを見て、ジョンウニヒョンは僕の頭から手をどけてしまった。
メンバーは勿論みんな良い友人でもあるんだけど、ジョンウニヒョンはなんだかその枠にタダで入ってくれない。
どちらかというと苦手なタイプで、同じグループにでも属していなければ多分ここまで深く関わる気にもならなかっただろう人だ。
だからなんというか、ドンヒやキュヒョナみたいに友人っていうには違和感があって。歌に関して妥協しないその姿は尊敬するし、独特な世界観を全面に出すそのキャラクターは、これといってなにか抜きんでるものがない僕にとっては眩しく映ったりする。
苦手だけど、それでも近づきたくて、傍でずっと見ていたくなって、いなければ探してしまう。なんだか不思議な感覚。
昔も考えて何か名前がついた気がするけど、なんだったか。
「...ねぇ、ミニヒョン?」
「...ん?ごめん聞いてなかった。なに?」
「あんまり話聞かせるのはどうかって話ですよ」
いくらジョンウニヒョンがミニヒョンにとって数少ないヒョンだからって、ねぇ?
そのキュヒョナの言葉がストンと落ちてくる音がした。
ヒョン。
そうか、それを抜かしてたのか。
「.....ミニヒョン。どうかしました?」
「いや、うん。ジョンウニヒョンは....そうだね」
「?ソンミナ大丈夫か?」
「ジョンウニヒョンが話しすぎるからですよ」
「俺のせいか!?」
慌ててこっちを気にするジョンウニヒョンに笑いがこぼれる。
笑った僕をみて安心したようになんだよ、と笑うジョンウニヒョンの後ろで、
安堵したようにこちらを見るキュヒョナの顔が、何故か頭から離れなかった。
END