「私はちゃんと胸のボタンは閉めていた!」
今は田舎の小さなクリニックで
医者として働いているジルさん。
彼女の両親は南米から移民してきた
白人と黒人の混ざった女性。
最初は仕事での悩みでセラピーに来たけれど。
話しが進み始めると実は
幼い頃から 父親に性的嫌がらせをされ
母親はそれを知ってか知らぬかの毎日
だったとか。
「もうちょっと肌の隠れた服を着なさい。」
娘の顔を見る度に言っていた母。
いつもハイネックで肩も出さず
足も隠れる洋服を着ていた彼女は
「これ以上どうすれば良いの?」
と思いつつ
おびえてい生きている様な母に対する
情けなさと同情を感じて
生きてきたとか。
そんな彼女。
ある日セッションが始まるや否や
ある日患者であるオヤジに胸を触られた、と
パニック状態。
「私はちゃんと胸のボタンは閉めていたけれど!
ボダンの多い服だったけど
胸は開いていなったし!」
と、矢継ぎ早に私に報告。
私は何も悪いことをしたとは思っていない
信じてほしい、という感じで。
ジルさん。
あなたは
何も悪いことしていませんよね。
「そうだれど!」
ジルさん、あのですね。いいですか?
例え
女性が薄着で外を歩こうが、
裸で夜の街を歩こうが、
誰もその女性を勝手に触ったり
レイプをしちゃいけないんですよ。
これ、基本です。
わかりますか?
これを言うとたいてい
安心する女性のクライアントさんが多い中、
彼女はハッとした顔で
その後何故か
気まずそうに黙っていました。
その翌週、私に言ってきました。
「私が間違っているのかしら?」
何がですか?
「私、ジムに行って、
足や胸を出した女性を見ると、
『襲われても知らないからね』って
思っちゃうんです。
あんなに堂々と肌を出せるって
おかしくない?って。
私がおかしいんでしょうか?」
なるほど。
ジルさんの場合は、
お母さまが常にそういうメッセージを
貴方に送りつづけてきたから
貴方の脳は忠実に
お母さまの命令をインストールした
のではないですか?
びっくりした顔のジルさん。
父親が近づいて
貴方を触るのは、
貴方が肌を隠していないから悪い
と。
しばらく黙っていた彼女。
ですが
この時点で彼女の中で
まるで糸がプチンと切れたが如く
何かが起こったようでした。
その翌週からは、
家族の話をする度に
パズルを解くように
作業する彼女がいました。
「お父さんは税金もずっと払わなくて
請求から逃げるようにしていたのを
お母さんが尻ぬぐいをしていた。」
「お父さんは外に女が何人居ても
お母さんを怒鳴っても
お母さんを足拭きの様に扱っても
お母はいつもお父さんを怒らせないように
お父さんの周りでは
黙ってばかりで、忍び足で居て」
「私達にも、お父さんを怒らせないように
お父さんが面倒に感じないように、って
言い続けてきた」
「弟が父親に殴られていた時も
私は弟に、
『あんたがあんなことをお父さんに言うから』と
今思うと
被害者の弟を、私、責めていたかも。」
「それってもしかして
お母さんが私にしたのと
同じ行為を
していたってことね。
笑える。
全然おかしくないけど。」
そして、その後は
彼女の母親に対する
怒りが表出したセッションが続きました。
そこへ聞いてみます。
ジルさん。
若かったころのジルちゃんは
色んな感情があっても
きっと誰にも話すこともできなかったの
ですよね?
その頃の感情は、一度忘れても
消えはしないのです。
もし今の貴方が
あの頃に戻れるとして、
誰に何を言っても良いとしたら
誰に何を言いたいですか?
「お母さん。」
「自分さえ我慢すれば良いみたいな
悲劇のヒロインぶっていたけれど、
結局私達にも我慢させただけじゃなくて
私を守ってくれなかったよね?」
「お父さんが私にしていた事を知ってたでしょ。
知っていながら何もしなかったわよね。
しかも
知っていながら私に嫉妬していたでしょ?
私を責めていたわよね。
偽善者じゃない?」
「あんな男って文句言いながら
本人のまではいい子ぶって。
いい子ぶって。
何それ?」
「なんでお父さんと別居しなかったの?
なんで早くに別のところに
連れて行ってくれなかったのよ?
だいたい
なんで今でも一緒に居るのよ?」