心の歩み、さまざま

心の歩み、さまざま

米国マサチューセッツ州で、サイコ(心理)セラピーをしています。
そこら辺に転がっている、日常の色々。
心理学の視点、文化の視点から斬ってみると、また別の物が見えてくるかもしれません。

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前までかかっていたセラピストが

別の仕事の為に去ってしまい、

私のところに来られ始めてから

まだ2回目のライオネルさん。

 

1回目はどちらかというと、

喜々として、

前回のセラピストに恋をして

最後のセッションで打ち明けた

というお話しや

 

自分が音楽が好きで、

楽器が弾けるお話、そして

趣味の写真の技術や、

カメラやレンズの専門的なお話を

楽しそうにされて、

 

「僕は先生にセラピーをしてもらうのに

 相性がよさそうだ。」

と言いながら、ウキウキと

帰って行かれました。

 

2回目の今日は、

ノックもせずにいきなり来られ、

最初から、表情から話し方から、

前回と全く違っておられます。

 

「アパートを追い出される。」

そう言って、ただただ、

ふてくされたように

うつむくライオネルさん。

 

かなりショックを受けておられる

模様です。

 

一方で私は、ライオネルさんの背景を

全くと言って良いほど知りません。

 

トラウマがあるというお話は

前のセラピストから伺っていたものの、

それ以外の情報は入っておらず、

何もわからない状態です。

 

しかも、お会いして2回目で

自分のトラウマのお話をされる方は

めったに居られません。

 

安心してお話をすることが

出来るようになるまでは、

セラピストとの信頼関係を

築き上げる時間が必要なのです。

 

ライオネルさん。

「俺は人間が本当に嫌だ。」

「こんな腐った社会、

 生きている価値はない。」

 

そう言われながら、

顔つきはどこか、

人懐っこい人が、

誰かに裏切られて、

ふてくされている、

そんなイメージです。

 

どうして、アパートを

追い出される羽目になったのかの

具体的な説明がなく、

漠然と、社会に対する

コメントが、間接的に漏れます。

 

家を探しているのなら、

施設内のハウジング・サービスが

受けられるのでは、と

別のスタッフに、メールを書くべく

ライオネルさんに、背景を

伺いました。

 

そうすると、ライオネルさん。

ハウジングのサービスは、

すでに10年以上受けておられ、

以前も、今回のようにアパートを

移動したこともあり、

 

今現在も、場所を移されるために

物件のリストを既に渡された、

と言われます。

 

けれど、

「見ないで送り返した。」

と。

 

「どうせロクな所はない。」

「いっそ死んだ方がましだ。」

 

そう言われながら、

しばらくうつむいておられます。

 

一緒にしばらくうつむいて

考えます。

 

ライオネルさん。

そう言われる原因があるのですね。

それは何なのでしょう?

 

「...。」

 

話されなくても結構ですよ。

 

これは、私の印象に過ぎませんが

随分、社会に対する期待が

大きいのですね。

 

社会が腐っていると言われましたが、

確かに、社会は腐っていると、

私も思います。

 

「あぁ、本当に腐っている。」

 

そう言われながら、

 

最近、別の件でも

似たようなことがあって、

本当にがっかりした

というお話をされる

ライオネルさん。

 

腐っている、そう言われる

ライオネルさんには、

 

未だに、社会に対する期待を

裏切られたくないと

思っておられる雰囲気が

伝わってきました。

 

伺ってみます。

 

まだ、ライオネルさんに

お会いして、間もないので

良くわかりませんが、

 

ライオネルさんには、

もしかすると、

子供の頃、

だれか周りの大人に、

甘えたくても甘えられなかった

そんな経験がおありでは

ないですか?

 

その途端、頭をもたげ、

目を見開いて、真剣に

こちらを見る

ライオネルさん。

 

「あぁ、俺は、アル中の父親に

 殴られ続けて育った。」

 母も殴られた。

 両親は離婚したが。」

 

2回目の面談で、いきなり

痛いお話をお話しされました。

 

それなら、と、

まず、最初の段階で行う、

家族構成を含めた背景の説明を

伺いました。

 

「俺は、4人兄弟の長男で、

 皆んな男。

 みんな殴られた。

 母は優しかった。」

 

うつむくライオネルさん。

 

お父様の暴力は

いつから始まりましたか?

 

「俺が生まれた頃か、その前から。」

 

「俺は、『人々』は嫌いだけれど、

 個人の人間は嫌いじゃない。」

「それに、人が苦しんでいるのを

 見るほど悲しいことはない。」

 

そう言われながら、弟さん達が

殴られた状況を思い出し、

自分への暴力よりも、そちらの方が

悲しかった、と言われました。

 

「俺は話をするよりは、聞く方が得意。

 同時に、みんなの世話が好き。

 だけれど、

 自分の事を置き去りにしてしまう。」

「この年になっていまだに、

 ちゃんとした仕事を持っていないのは、

 兄弟の中で俺だけだ。」

 

と言われました。

 

なるほど。

それなら伺います。

お母さまとお父様が離婚されたのは

ライオネルさんが何歳の時ですか?

 

「13歳の時。

その2年後に、父親は自殺した。」

 

痛い!痛いです。

15歳の少年には、痛すぎるお話です。

 

最初から突っ走る、ライオネルさん。

 

ライオネルさんの当時の心情を

お察ししつつ、その心の痛さを感じる

私の表情を見て、

ライオネルさんは、

改めて何かを感じられたのか

涙を流し始められました。

 

しばらくして。

 

ライオネルさんのお話から、

私はやはり、お母さまは、

ご自分とご自分の子供を

守る手段に踏み切るまでに、

長男を産んでから13年もかけられた、

 

つまり、ご自分よりも

相手の世話を優先してしまう

人であったかもしれないと

納得しました。

 

ライオネルさん。

ライオネルさんが、人のニーズを

優先するのは、

お母さまゆずり、ということは

ありませんか?

 

「!」

 

しばらく黙られるライオネルさん。

 

「それはとってもそうかもしれない。」

 

ライオネルさんの中で、

何か思い当たることがあるのか、

しばらく思慮深い顔をして

考えておられます。

 

「以前、セラピストに言われて

 気づいたことがあったんだ。

 母は優しかったけれど、

 俺らを守ってはくれなかったって。」

 

相手の怖さを感じないために、

自分の気持ちを押さえつけてしまう。

そんな親達の中には、

自分の子供達の気持ちをも同時に

見ようとせずに過ごしてしまうことは

往々にしてあり得る様です。

 

そこで伺います。

 

それはライオネルさんにとっては、

きっと、

頼りたくても、頼る存在が

居なかった、ということでしょうか?

 

生まれてからすぐに、

当然期待していいはずの相手から、

思う存分得るものが得られず、

期待外れの寂しい思いと、

落胆の気持ちを沢山

経験してこられたであろう

ライオネルさんには、

 

社会の対応ががっかりな時、

無意識に子供の頃の

落胆と共に寂しさも

よみがえってしまうのかもしれません。

 

そうでありながら、同時に

子供の頃に満たされるべき

基本的な欲求が満たされずに

過ぎてしまった為に

 

未だに人にも社会にも

甘い欲求を実は捨てきれずに

持ち続けている、

そんな様子も伺えますが

いかがですか?

 

そんな話をしていたら、

最初のふてくされたように

うつむいておられた表情とは

全く違う、

考え深い顔になっておられました。

 

今にも死んでしまうのではないか

というコメントもしておられたけれど、

念のため伺ってみます。

 

ライオネルさん。

以前もハウジングのお世話になった

と言っておられましたが、

今の部屋は、それ以来ですか?

 

「その時に仕方なく決めた。

 あの時も酷かった。」

「あの時も死にたかった。」

 

そのお部屋を今は離れたくないのですね。

 

「...。」

 

その酷かった時を、以前は

どうやってサヴァイブされたのですか?

 

「わからない。友人かな。」

 

今でもその人達は居られますか?

 

「いない。」

 

先週、以前のセラピストに

恋をされたと言われましたが

アパートを見つけられて

生き延びられた結果、

彼女にも会えたのですね。

 

「そうか。うん!」

 

ストレスを乗り越えるスキルは

お持ちですか?

 

「何それ?」

 

前のセラピーでは?

 

「やっていない。」

 

例えば、もう何もかも嫌になって

しまい、『投げ出したい』いう気持ちになった時

思い詰めるところまでいかずに

気を紛らわすスキルのようなものは?

 

「死にたくなったら

 入院したことはあるけれど。

 でも、これがまた酷くて...。」

 

そりゃ、病院は酷いでしょう。

それに、それはご自身のスキルでは

ありませんよね。

 

でも、ライオネルさんの場合、

既に沢山のスキルをお持ちでは

ないですか?

 

「え?」

 

落ち込んだ時に、気を紛らわす方法は

何か思い当たりませんか?

 

「音楽...かな?ギター弾く。」

 

いいですね。他には?

 

「写真はいいね!

 写真を撮りに行く!

 カメラはないけれど、

 とにかくアパートに一人でいると

 気が狂いそうになる。」

 

とにかく家を出る。いいですね。

 

「でも、この町には浮浪者が

多すぎて、気分転換にも 

なりやしない。」

 

バス代を払う余裕などは?

 

「ある。 なるほど。」

「あ、それと以前、山登りした。」

 

いいですね!

呼吸器官と心臓を動かすのは

実は一番良いのです。

 

考えたくないのに考えてしまう

ということはありますか?

 

「いっつもそうだ。」

 

それは、脳の真ん中にある

帯状回という部分が、

いわば異常活動している状態です。

 

そう言いながら、

コンピューター画面に

脳の図を開きます。

 

鬱の人の脳は、活動が下がっていると

思われがちですが、実は

この帯状回がオーバーヒート

している状態が多いようです。

 

抗鬱剤は、この帯状回の部分の

活発を抑えてあげる働きもあります。

 

「俺、調子の悪い時

 物を忘れたり、

 一つの事をやろうとしていたのに、

 いつの間にか違うことをしていたり

 なんか集中できない。」

 

それは、前頭葉と言う

高度な機能をする脳の部分が

充分に働いていないこととも

言えます。

 

前頭葉は、集中したり、

物事を整理して考えたり、

物事の先を見たり、

衝動を抑えたり、と

人間が人間らしく生きるのに

大事な部分ですが、

 

心肺を動かして血流を良くすれば、

脳全体にまんべんなく

血が届きやすくなり

 

前頭葉にも血液が届けば

思考もはっきりすると同時に

余計な心配事もなくなる、

というわけです。

 

「なぁるほど。」

 

「確かに、出かけるのが

 億劫でも、

 歩いて帰ってきた時は

 出かける前よりも

 調子がいい。」

 

ライオネルさん。

 

話しておられる様子からみて、

波長が合っている感じが

します。

 

そして、

オフィスに来られた時の、

今にも消え入ってしまいそうな

顔色の悪さがいつのまにか

消えておられます。

 

これから、なんとなく

私とのセラピーを

続けて行かれることに対する懸念も

『おそらく大丈夫』

という手応えがありました。

 

ライオネルさんが、これからの新たな

厳しい道のりを

超えて行かれなくてはならない。

 

そのまず最初の一歩として

今回はとにかく安心して

ご自宅へお返しすることが

出来たことは、よかったです。

 

ライオネルさんの神様。

 

ライオネルさんが

心を開く方向に導いてくださり

有難うございました。

 

そして、ライオネルさんが

上手く軌道に乗られることを

お祈りします。

 

カレンさんの

ドメスティック・バイオレントな彼との

関係を客観視することができるまでの

この長い過程の中で、

 

もう一つ、同時に時間をかけて

マスターすることが出来たのが、

コーヒーを絶つことでした。

 

大好きなコーヒー。

朝ごはんを食べない時も、

コーヒーは欠かせなかった

というカレンさん。

 

読者の方も、

「何でコーヒー?」と

言われるかもしれません。

 

1.朝ごはんを抜くこと

2.カフェインを取ること

 

これらはどちらも、実は

心配性を高める危険性が

あるのです。

 

空腹になると

交感神経が刺激され

人の体は「狩りをする」べく

戦闘状態に入ります。

 

同時に、カフェインを取ることで

心拍数や脈拍が上がる事は

ご存知の多い方も多いでしょう。

 

それを知ったカレンさん。

 

最初は、

「冗談じゃない!」

と言った顔つきで、

「でも、コーヒーがないと 

 目が覚めないんです!」

と言っておられました。

 

朝ごはんは、食べる気には

なれない、と。

 

その習慣ができてしまった人には、

確かに最初は難しいかもしれません。

 

けれども同時に、朝は、

体内のストレス・ホルモン

のコルチゾールのレベルが

一番高い時。

 

つまり、鬱々している人が

最もつらいのは朝の時間。

ベッドから出るのが、

なかなか簡単にはいかないのも

コルチゾールのレベルが高いから

というわけです。

 

けれど夕方から夜にかけて、

ストレス・ホルモンが下がると、

体も自由に動き、

色々やる気がでてくる。

 

なので、ついつい夜更かししてしまう。

そして翌朝起きるのがつらい。

 

この悪循環にさらに拍車をかけるのが

朝のカフェイン、と言えましょうか。

 

ストレス・ホルモンのレベルを

朝一番に下げるには、

朝シャワーやぬるま湯、

朝のストレッチ、散歩などが

最適と言われます。

 

こうしておけば、日中に

何かストレスを感じても、

ホルモンのレベルが

「ビンっ」

と上がることも防げるというか、

 

自分の不安や衝動をコントロール

しやすくなるというのは、

朝の運動を日ごろしている方には

実感のできることと思います。

 

朝、体を動かして、

酸素を十分に取り入れることは

様々な意味で

健康的です。

 

そうして、少しでも良いから、

何か体に良いものを

口に入れる。

 

朝、胃が動くという習慣を

徐々に身につける、ということの

大切さ、

これをカレンさんにもお話ししました。

 

空腹状態では、

交感神経が働いてしまい、

落ち着きません。

 

それに、

脳も体もエネルギーを

必要としています。

 

そう言われたカレンさん。

 

「オートミールなら食べられる。」

と言われ、そして

 

徐々にデ・カフェに切り替えようと

試みたようです。

 

けれど、

「デ・カフェの味がきらい!」

と言いながらも、

 

1日4-5杯から

1日半杯に減らし、

「最近は、コーヒーが飲めなくなった」

という状態にまで半年かからなったとか。

 

飲めなくなった理由は:

 

以前は、飲んでも何ともない

と思い込んでいた。

 

けれども、コーヒーを

減らし始めてから、

 

飲んだ日は、自分の心臓が

ドキドキする気がしてきた。

とのこと。

 

以前よりカフェインに

敏感になったのではなく、

 

以前もドキドキしていたのが

日常化して気づかないでいた

と言った方がよいかもしれません。

 

以前は、セッションの中でも

しょっちゅう腕時計を見たり、

話の最中で話の内容を変えたり

していたカレンさん。

 

お話の内容も

「息子が車の事故に遭ったらどうしよう?」

「息子が電話に出ないの。10回もかけたのに。」

と言った状態。

 

ご自分でもそれが、自分の中の

不安症から来ているとは気づかずに

「母親が息子を心配するのが当たり前。」

とそのような言動を正当化していました。

 

ところが。

 

とりわけ運動もしていないのに、

コーヒーの量を減らして

朝ごはんを食べ始めたら、

 

最近は落ち着いて、

ずっと目を見て

しっかりと考えて

お話しできるようになっておられます。

 

抗不安剤は、以前も今も変わらず

飲み続けておられますが、

抗不安剤とカフェインは、

体内でうまく働ないことも、

体でもって自覚された様子。

 

そして今は、

「不安を感じている自分」も

以前より自覚できるように

なられたようです。

 

何よりも良かったのは、

「前より眠ることができるように

なりました。」

とカレンさん。

 

起きがけは、シャワーを浴びて

何とか目を覚まし、着替えて

とにかく家を出る。

 

家の周りを数歩散歩してくると、

朝ごはんを食べてもいいかな

という気分になっている。

 

「前はオートミールの量が

 半分だけだったのですが、

 今はオレンジジュースか

 卵も食べるようになりました。」

 

そうすると、気のせいか、

以前は眠かったお昼の後、

午後になっても、今はちゃんと

集中して新聞を読んだりも

できるようになっている、とのこと。

 

そんなカレンさん。

他人に言われたことを忠実に行うのを

得意な方の様です。

 

その生活が板についてから

一年たって、今度は徐々に別の

心の健康法を紹介していきました。

 

そのお話は、また今度。

 

***

 

関連ブログ:

 

暴言を吐く相手と彼と別れられない自分。カレンさんの場合・1。

 

人の世話に振り回される自分。何故?カレンさんの場合・2

 

DVな彼と別れるまでの過程。カレンさんの場合・3

 

これは、ドメスティック・バイオレントな

相手と、なかなか別れられないという

前々回書かせていただいた

カレンさんのお話の続きです。

 

カレンさんを傷つけては、

カレンさんにしきりに電話しては

泣きついてきたボーイフレンド。

 

かと思えば、次の時は、

怒りと共に罵倒しながら

メッセージを残す彼。

 

振り回されるだけ振り回され、

自分を責め続けていた彼女。

 

セラピーに来始めて1年。

彼女は徐々に、

気づいていった様です。

 

以前まで、

「彼が変わるかもしれない」と

期待していたものの、

 

それを待っている間に

自分の命がすり減っていることや、

彼を今の形で「支える」ことが

彼の為にもならないということを。

 

つまり、カレンさんが

相手を許容している限り、

彼も自立することができない、

という事でもあります。

 

「彼がセラピーに行ってくれれば

 良いのだけれど。」

こんな風に言ったこともある彼女。

 

けれど、心理セラピーは、

本人が話をする気にならない限り、

機能しないのが事実です。

 

そして、カレンさんに必要なのは、

「自分の問題の原点に集中すること。」

 

問題の原点は、

彼女の中に内在している

断ることに対する恐怖。

拒絶することに対する義務感。

などなど。

 

過去の問題に触れたがらない

彼女の場合は、

 

私のサポートの元で、

とにかく、相手との距離を

保つ努力を始めて行かれました。

 

まず最初の一歩は、

彼からの電話に出なくなった

カレンさん。

 

そんなカレンさんに対し、

防波堤を立てた後の荒波が

次々と押し寄せてきました。

 

カレンさんの相手の男性は

アパートの廊下で会った時に

大声で罵倒したり、

友人を装って

アパートに入って来たり、

友人を利用して、

カレンさんに近づこうとしたり。

 

そんな彼との境目を

築き始めてから、

彼女に変化があらわれました。

 

以前全く怖いと思っていなかった相手に

恐怖を感じるようになった。

 

以前は怒鳴られても、

物を投げられても

なんとも思わなかったのに。


「私が彼を、怖いと思う

 なんて...。」

 

怖いと感じるのが正しいのです。

それはまっとうな感情です。

 

慣れてしまって

見えなくなっていたものが

あった。

 

色んなことを徐々に、

自然の形に戻してあげる。

 

そんなプロセスにもなりました。

 

セラピーの中で

さらに色々な『対処法』も学んで

すぐに使い始めたカレンさん。

 

廊下で相手に罵倒されると、

相手に楯突くでも

無視するでもなく、

 

ニッコリ笑って

「そうね。うん。そうね。」

と言って、相手が静かになるまで

頷く。

そのまま去る。

 

これをやってみたら、

「相手がすごい不思議そうな顔をして

 喋るのをやめた!」(笑)

と愉快そうです。

 

ある意味、相手の逆襲を

恐れて踏み出せなかった

カレンさん。

 

徐々に自分と相手を冷静に

見ることができるようになった頃には、

 

今まで自分は何のために、

あんな奴の為に苦労を

していたのだろう、と

 

渦中に居た自分を、

客観視するようになりました。

 

「私は度々、自分が彼を

 変えてあげることができると

 信じていた。」

「出来ない自分がダメな

 人間なんだと思い込んでいた。」

「思えば8年間も、

 彼の残虐な行為に

 耐えていたのね。」

「謝る時の彼がかわいそうだった。」

「でも、いつ彼の中から

 モンスターが出てくるか、

 いつもビクビクしていた。」

「彼が何故あんな

 言動をするのか

 一生懸命に理解しようとしていた。」

「でも、今はそんなのどうでもいい。

 私が傷つく、それは嫌。

 それだけ。」

 

こんな風にまで言えるように

なっていきました。

 

時折セラピーで

「寂しいと言えば嘘になる。」

「懐かしい部分がないわけではない。」

と言いながら、

 

「でも、振り回されるのは、もう嫌。」

ときっぱり言っておられました。

 

ここまで来られたカレンさん。

 

ここまで来ることそのものにも、

相当の勇気を必要とされた

ことでしょう。

 

良く頑張られました。

 

これからもカレンさんが

幸せへと歩み続けることを

応援します。

 

***

関連記事:

 

暴言を吐く相手と彼と別れられない自分。カレンさんの場合・1。

 

人の世話に振り回される自分。何故?カレンさんの場合・2

 

前回書かせていただいた

カレンさんは、

別の人の間でも、いつも

「世話役」のように

見られているようです。

 

自分の食事を用意しては、

「沢山作ったから」という理由で

同じマンションに住む人を招いたり。

 

困った人が居たら、かくまってあげたり。

 

これはカレンさんにとっても

「息子が連絡してくれない時は

 寂しいしどうせやることもないし」と

人を助けることで

生きがいを感じていたといわれます。

 

けれど、そのマンションの人間関係は、

カレンさんにとって、

いつも居心地が良いものだけでは

ない様子でした。

 

同じアパートの人で、

ドラッグ中毒の女性が

薬を飲みすぎた時に

カレンさんが介護をし

徹夜で看病したり、

 

鬱の人の相談に乗ったり。

 

私がいないと彼女たちが死んでしまう。

と思うと、邪険に断ることは出来ない、

というのが、

セラピーで彼女の口から

恐る恐る語る言葉でした。

 

カレンさんが世話をするのは

友人だけではなく

息子の孫の世話もあります。

 

正確に言えば、孫の母親、

つまり息子のガールフレンドが、

カレンさんをベビー・シッターとして、

都合の良い時に利用している形。

 

それを断らないカレンさん。

「彼女の為じゃないわ。」

「孫は可愛いし。」

「一緒に居たいと思うから。」

 

そう言いながら、

自分を擦り減らして

人の世話をしておられます。

 

自分を擦り減らすパターンは

前回のボーイフレンドとの関係

もしかり。

 

人の世話の為に徹夜して、

その挙句、

自分のセラピーには行けない。

なので今日のセッションは

キャンセルします。

 

そんな時、次のセッションで

お話をしました。

 

カレンさん。

カレンさんにとって、

何が一番大事ですか?

 

「え?」

 

セラピーは気分転換でも

あるかもしれないですが、

治療である事も事実です。

 

「はい。」

 

ご自分のケアをせずに、

何かそれ以上に大切なことが

ありますか?

 

このように聞かれた時、

すぐに悟る人と、

批判されたと思う人と

いるようです。

 

カレンさんはすぐさま

私に謝りました。

 

「セラピーを休んでごめんなさい。」

 

つまり、

批判されたと思ったのでしょう。

 

カレンさんは昔、

義父にひどく叱責されたり

ひどい目に遭った経験のある人です。

 

人に批判されるのではと

非常に敏感な彼女。

 

それを承知していたので、

このようにお話ししました。

 

カレンさん。

私の為に私に謝ったり、

私を喜ばせることは

全く考えないでも結構ですよ。

 

ご自分のニーズのお話です。

 

セラピーはカレンさんの為の

物であるはずですね。

 

「はい。」

 

ではカレンさんの人生は?

誰の為の物でしょうか?

 

「...。」

 

こんな問いかけに、

まごまごして、返事が出来ない

カレンさん。

 

わかりました。

では、別の質問をします。

 

カレンさんは、泳げますか?

「泳げません。」

 

では、友人が池で

溺れていたら、助けますか?

 

「助けると思います。」

 

その結果どうなりますか?

 

「...。」

 

カレンさんは、言語化のなかなか

できない方なので、

こちらからカレンさんの思いを

言語化する試みをすることが

しばしばあります。

 

浮輪なしに、溺れている人は

助けることは、

どういうことでしょう?

 

たとえ泳ぎの達者な人でも

危険なことです。

なぜでしょう?

 

「私も溺れてしまうから。」

 

ですね。

 

「じゃぁ、私が泳ぎの特訓を

 受ければいいってことですか?」

 

いえ、

正しい助け方は、救急隊を呼ぶ、

つまり、専門家に任せる、

ではないでしょうか?

 

カレンさんは、母親役も

ベビーシッター役も

ナース役もしておられますね。

 

ご自分をすり減らして。

 

でも、

薬を飲みすぎて自殺を図る人や

鬱の人の相談相手などは、

カレンさんがやっては

いけないことです。

 

プロに任せてください。

 

私は普段セラピーで

助言をすることはしませんが、

これは、相手にとって危険です。

 

この時、カレンさんは、

少しほっとしたような顔をされました。

 

やってはいけない。

それなら、相手に断るのも

怖くない。

ということかもしれません。

 

そして、カレンさん。

 

私はカレンさんのセラピストなので、

カレンさんの心にとって何が一番

良いか悪いかに集中したいです。

 

カレンさんが人を助けをしたい

本当の理由はなんでしょう?

 

「悪いと思うから。」

 

そうですか。

 

‐人に断ることに恐怖を感じるため

‐人を助けないことに対して

 罪の意識を感じるため

 

そんな感じですか?

 

「はい。」

 

他に、

‐ 自分の寂しさを紛らわすため

 

というのはありますか?

 

「どれも、あります。」

 

では、カレンさんには

その理由がどこからくるのかを

セラピーで考えていただく事に

集中していただけますか?

 

人の事ではなく、

ご自分の心の体力を

つけていただくことを

お願いしたいのですが。

 

「はい。」

 

そんな話をしながら、

セラピーを繰り返した暁。

 

カレンさんは徐々に、

変わっていきました。

 

まず、

「泊りがけで何日も

孫の面倒を見るのは、

体力が持たない。」

と自分の言葉で

言われるようになりました。

 

少しずつ、自分のニーズが

視野に入るようになった様子。

 

けれど、一方で、

クセはなかなか治りません。

 

セッション中にかかってきた電話を

受けて「孫が待っているから」と

セラピーを飛び出しそうに

なることも。

 

そんな時、

今、心の中で何が起こっておられますか?

と伺います。

 

すると、

「孫がかわいそう。」

と。

 

それを突き詰めると、

「すぐ行かないと、息子に怒られる。」

と。

 

その気持ちの根源は、

どこにあるのでしょう?

 

場合によっては、

それが、カレンさんが昔受けた

義父のカレンさんに対する

酷い言動と関係があることに

気付くかもしれません。

 

自分の言う通りにしないと

機嫌が悪く、自分や母親に当たった

義父との歴史を知っている私。

 

でも、カレンさんにはそれとの

つながりを見ることがなかなか

できませんでした。

 

「わかりました。

 先生がダメっていうなら、

 行きません。」

 

このような表面化されない

彼女の本音。

 

私が彼女の昔の義父のように

機嫌を損ねるのを

無意識に恐れている

ということにつながるもの

かもしれません。

 

かといって、私に

「どちらでも良いですよ。

ご自分が一番良い形が

良いのですから。」

 

と言われると、逆に

困ってしまって

「どうしてよいか、言ってください!」

と言いたくなる彼女。

 

「息子にも叱られたくないし

 先生にも叱られたくない!」

 

という意識が働く様子です。

 

そんな中、

とにかく、ボーイフレンドや

友人や、息子との間に、

我々がBoundaryと呼ぶ

「超えてはいけない壁」を

作っていただくことに

専念しました。


それはどういうものかというと:

*人の問題に首を突っ込まない
*自分の問題をまず優先する
*相手の決断がどんなに悪く見えても任せる、尊重する
*自分と他人の問題の境目を見極める

*他人のプライバシーを探ったり想像したりしない

 

この後、カレンさんはみるみるうちに

良くなっていったのです。

 

続きをまた書かせていただきます。

 

***

 

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カレンさんは、一人暮らしで、

人のお世話が大好きな人です。

 

そんなカレンさんには、

ボーイフレンドが居ます。

 

普段は、冗談も面白く、お茶目な彼。

 

でも、時折口が悪く、ひどいことを言って

ひどく傷つけることもある。

 

本当のところを言えば、

一日に一回は暴言を吐く。

 

彼の虫の居所が悪いと、

自分のせいであると怒られる。

 

しょっちゅう口論になる。

 

これも時には

自分のせいかなとも思う。

 

私さえちゃんと聞く耳を

持っていれば、

相手も落ち着くのかもしれない。

 

自分が情けなくなる。

でも、別れられない。

 

最近は、我慢せずに、

口論の後は、隣の州に住んで居る

2人のお姉さん達の家へと

出かける。

 

しばらく、顔を見たくない。

もう傷つくのは嫌だ。

 

そんな思いで、

逃げ出すようにして

アパートを出てきたのに。

 

彼から、

電話何度も入る。

 

電話に出ない、と

心に決めていたのに

 

涙声で謝っているのを聞くと、

許してあげようかな、

と思ってしまう自分がいる。

 

本当のところ、

どうしてよいのか、

全然わからない。

 

アパートに一人でいるのも

正直さびしい。

 

一人でいると、

テレビを見るくらいしかない。

 

とりわけ出かけるところもない。

 

でも、今のところ、

他の男と居ることは

考えもつかない。

 

それに、

彼が落ち着いていて

まともな時は、

一緒に居て居やすい人だから。

 

そう思いながら、

 なんとなく

ずっと続いてた関係。

 

でも、一緒に居ると、

予期しない時に、

いきなり

ひどい言いがかりをつけられたり、

あらぬことで責められたりする。

 

そんなことの繰り返し。

 

でも、謝る彼の姿は、

まるで小さな男の子みたい。

  

優しい所もある相手だから、

いつかは変わってくれる

気もする。

 

彼には私が必要。

 

そんな風に思いながら、

ずっと関係を続けていた 

そんなカレンさん。

 

セラピーに来られるようになって

初めて『自分のせい』

ことに気付かれたそうです。

 

セラピーに来られてから徐々に、

実は彼を

『怖い』と思う

自分に目覚めたとか。

 

けれど、

この男性との付き合いが、

DVとなんら変わりないことに

気づいて納得するまでは、

さらに1年以上かかりました。

 

肉体的暴力を振るわない相手

だから、

DVとは思っていなかった。

 

でも、

暴言を吐く

責任を人に押し付ける

自分の友人や家族を侮辱する

脅して何かをさせようとする

 

まともな時は、

彼と話をするのは

ぜんぜん問題ないし。

 

でも、『嵐』が前触れもなく

やってくる。

 

そんな中でも、

別れ話をした時の

彼の逆襲が怖い気もする。

 

自分が離れると、彼は

鬱病になって

自殺してしまうかもしれない。

 

そう言われながら、

彼からの攻撃に耐えながら、

ずっと鬱状態になって

耐えておられるカレンさんでした。

  

この仕事を通して、

私の目に見えてきたものの一つに、

人は「最悪の状態」まで到達しないと

変わろうという意思が生まれない

のかもしれない

ということです。

 

ドラッグをしている人々は、

自分が窮地に追い込まれない限り

治療を受けようとは思わない。

 

同じように、

なんとか人生を乗り越えてられている人も、

セラピーにかかろうとは

なかなか思わない。

 

ご本人が

「この状態から抜け出したい」と

思わない限り、

なかなか変わらないようです。

 

そもそも相手と別れるのが

簡単に出来るのであれば、

とっくの内に、

暴言を吐くような相手とは

付き合っていなかったはず。

 

同時にそんな中、

心配してくれる家族や友人が、

「あんな酷い奴とは別れろ。」と

助言してくれるものの、

 

それが出来なくて

苦しんでいる自分。

 

「未だにあんな男と

付き合っている私、馬鹿みたい。」

と自分を責めて、

さらなる鬱に陥るケースも

少なくありません。

 

けれど彼女は徐々に

安心して話ができる環境の中で、

自分の中に眠っていた

様々な見たくなかった感情と

向かい合うようになっていきました。

 

続きは又書かせていただきます。