万城目学『八月の御所グラウンド』(第170回直木賞受賞作) | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

第170回直木賞受賞作…万城目学『八月の御所グラウンド』(2023.8)を読みました。私が京都出身ということもあって、とても面白かったですキラキラ

 

十二月の都大路上下ル』(2022年5月)と『八月の御所グラウンド』(2023年6月)の2篇。

死んだはずの名投手とのプレーボール
戦争に断ち切られた青春
京都が生んだ、やさしい奇跡
女子全国高校駅伝 ―― 都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。
謎の草野球大会 ―― 借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。
京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとは 
――
今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない青春の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る感動作2篇

 
京都大学法学部卒業の万城目さんらしく両方とも京都市内が舞台。両方とも12月の・・・、8月の・・・と月がタイトルに入っています。


十二月の都大路上下ル
上下ルは「かける」と読む。女子全国高校駅伝で病気の心弓先輩に代わって1年生坂東(サカトゥー)が急遽走ることになった話。ものすごい方向音痴の設定と物語の肝になる新◯◯が出てくるところがメインのお話なんだけど、走る小説が好きな私(三浦しをん『風が強く吹いている』、瀬尾まいこ『あと少し、もう少しとしては、そういうキワモノの設定じゃなくて王道の走るというテーマで書いてもらえたら、素材としてはいいので、もっと感動したかもしれない。でも、『八月の御所グラウンド』とのセットということであれば、やはり新◯◯が登場しないと繋がらないから、これはこれでありなのかな。京都出身者なので、馴染みのある地名がたくさん出ていることもあって、とても面白く読めました。
 
八月の御所グラウンド
もともとは『八月の御所G』というタイトルで、出版時に改題されたそうです。ま、京都出身者でも、「御所G」が何か分かるのは、京大や同志社など御所近辺で遊んだりスポーツする(していた)人くらいなので、改題したのは正解なのかな。河原町今出川に実在するセカンドハウスが何度も出てきたり…

 

京都大学生くらいしか知らない農学部グラウンド…いわゆる「農G」を使ってみたり、百万遍や東大路通などが出てきたりと、登場人物が京大生なのがかなりの親近感がありました。また、朽木クンが冒頭彼女にフラれるのですが、その彼女の実家がある四万十に(もしフラれていなければ)八月に一緒に行くはずだったというのが、四万十川、四万十町が心の故郷だと思っている私には最初からツボにハマってしまいました爆笑また、私は中学三年生まで野球少年だったので、いろんな意味で親近感満点の作品ウインク

8月のめちゃくちゃ暑い季節の早朝に好き好んで野球する人なんてかなり珍しいですが…大学卒業のための卒論免除(?)のために教授からの命令で「たまひで杯」で優勝すべく野球するのですが、そんな季節に人数が集まらないのに…教授は行けばなんとかなると。『十二月の都大路上下ル』と似ていて不思議と…ストーリーの詳細は伏せますが、ありえないファンタジー小説だけど万城目さんの語り口がいいのか、とても読みやすくてどんどん引き込まれていきました。

スターバックスであっという間に読んでしまった。さくらシフォンケーキは安定の美味しさウインク


というわけで、結構好きな本でしたキラキラウインクラブラブ