『影のない女』(1)概要 | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

今日は

リヒャルト・シュトラウスの誕生日(1864年生まれ)。『ばらの騎士』『サロメ』『ナクソス島のアリアドネ』『エレクトラ』『カプリッチョ』など15のオペラを書きました。聴いていない作品がまだ少しありますが、私はその中の最高傑作は『影のない女(Die Frau ohne Schatten)』だと思っています。というより、数多あるオペラの中で最も愛する作品。

本作品を上演するには大編成オケが必要で、読み替え演出でなくてメルヘンの世界そのものを舞台に乗せるには制約があることから、以前は上演される機会が多くなかった。一方で、1955年のウィーン国立歌劇場の再建記念公演(カール・ベーム)、1963年のバイエルン国立歌劇場の再建記念公演(ヨーゼフ・カイルベルト)で上演されている。また、カラヤンが1964年ウィーン国立歌劇場退任公演で、サヴァリッシュもバイエルン国立歌劇場退任に際して採り上げています。サヴァリッシュはその一環で1992年来日公演で上演しました。このように祝祭的なイベントで上演されるような作品で、最近ではポツポツと上演されるようになりつつあるのは嬉しいことです。例えば、2010年新国立劇場(指揮:Erich Wächter)、2010年マリインスキー歌劇場(Gergiev)→ 翌年来日公演、2011年ザルツブルク音楽祭(Thielemann)、2012年スカラ座(Marc Albrecht)、2013年バイエルン国立歌劇場(Petrenko)、2013年MET(Jurowski)、2014年Royal Opera House(Bychkov)、2017年ベルリン国立歌劇場(Mehta)、2017年バイエルン国立歌劇場(Petrenko)、2018年ハンガリー国立歌劇場(Péter Halász)

ホーフマンスタールがこのメルヒェン物語を着想したのが1911年2月、台本が仕上がったのが1915年4月で、作曲が完了したのがちょうど100年前の1917年6月。初演は1919年10月10日ウィーン国立歌劇場(指揮:フランツ・シャルク)。日本初演は1984年。

ストーリーや比喩・暗示は難しい。ホーフマンスタールがこれを小説に仕上げたので読んだことがあるが、小説はさらに難しい。分かりにくいのは第2幕で、5場に分かれているためごちゃごちゃしているのは否めない。第2場の皇帝のモノローグ(どうやって皇后を殺そうかとひたすら迷うどうでもいい歌)の場面はストーリー上なくても成立しそうなものだけれど、これがあるから舞台転換の際のチェロの独奏があるのだし、皇帝の聴かせどころなのだから、まぁいいでしょう。カラヤンも同じように考えたのだと思いますが、場の順序を入れ替えました。しかし、第1幕が2場、第2幕が5場、第3幕が4場もあり、王宮、バラクの家、皇帝の鷹狩りの場、地下の暗闇、霊界と目まぐるしく場面が展開していくのはそれはそれでとても面白いし、シュトラウスが作った舞台転換の音楽は非常に素晴らしい。例えば、第1幕第2場に移行する(王宮→バラクの家)音楽のオーケストレーションは何度聴いても素晴らしいし、先述の第2幕第2場への舞台転換(バラクの家→鷹狩りの場面)で演奏されるチェロの独奏も美しい。
 
本作品のテーマは要するに、夫婦愛。子どもを産むこと。影を持たない(=子どもを産めない)皇后が、石になりそうな皇帝を守るために、子どもを産みたくないバラクの妻から影を買い受けようとしていく中で… バラク夫妻や皇后は葛藤を通じて真実の愛を見つける… それが表現されるのが第3幕冒頭の涙なしには聴けないバラク夫妻による非常に美しい二重唱であり、皇后の「Ich - will - nicht」です。試練を乗り越えて幸せをつかむ『魔笛』に登場人物も含めて類似性があります。
 
さて、2013年にバイエルン国立歌劇場で『影のない女』が新制作で上演されると知ったけれど、当時は事情があってミュンヘンに行くことは叶わなかった。しかし、もうすぐ観ることができるので、今からとても楽しみです。
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今日はバイエルン国立歌劇場来日公演(1992年、指揮:サヴァリッシュ)で予習した。バイエルンはドイツ語字幕しかないらしいからね。
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続く…