数あるオペラの中でも特に好きな『ローエングリン』。新国立劇場の今シーズンでは5回の公演が予定されていますが、5月29日の3日目の公演に続いて、6月1日の4日目の公演も観てきました。
40分の休憩を2回挟んで5時間かかるので、通常よりも早い17時開演。さすがにこの開演時刻だと会社員は少ないようで、年齢層はやや高めかな。S席はまだ若干残りがありましたが、A席以下は完売でした。また、今日(6月4日)の最終公演も全席完売です。
【第1幕】 17:05~18:10
3日前にも観て、ブログに感想をたっぷり書いた(こちら)ので、今回はゆっくり落ち着いて観ようというわけで、前奏曲も落ち着いた雰囲気でゆったりと聴けました。が、欲を言えば、この前奏曲は泣けるほど感動させてほしかった!
それから、フォークトさんがすば抜けて素晴らしいのはもう前回再確認したので、今回はエルザ(マヌエラ・ウールさん)をガン見しよう … あ、いや、あの… 注目して聴こうと決意。
エルザの衣装は、白いやや短めのドレスですが、首の後ろに飛行機や長距離の車に乗る時につける枕みたいなのがついてる。毎回気になるけどあれは何なのかな…
木管とともに登場する可憐なエルザ。「エルザの夢」を含め、歌はこの前もかなりよかったですが、今日は前回よりはるかによかったと思います。
ちなみに、第1幕最後には、首の後ろにあるあの枕を捨てていました。ということは、枕みたいなのは何かの象徴なのかな?
【第2幕】 18:53~20:17
やはりオルトルートの威圧感がすごい。それに影響されたテルラムントも地底から出てくるような悔しさや復讐心がよく出ていました。
エルザを現す例のふくよかな木管に伴われて、エルザが可憐に登場。第1幕からの夢見る乙女による「そよ風のアリア」は特に美しかったです。
たいへん美しい木管によるエルザのテーマ『Gesegnet soll sie schreiten (姫の歩みに祝福よあれ)』は感動的。この旋律に伴われて登場するときには、奈落からせり上がってきて、少し奥に歩くと、上を向いたままさらに足下が3メートルくらい上がるというあたかも銅像のような演出。とても綺麗なウールさんに視線は釘付け。すると、例の巨大な傘が下りてきてエルザを閉じ込めると、真っ赤な衣装のオルトルートが傘の中に入り、エルザを罵倒。
エルザは、第1幕の夢見る乙女から成長し、オルトルートと闘う女性として力強い声を聴かせるウールさんが素晴らしい。不安な気持ちをか細くしかも伸びやかな声で。今回は特にウールさんに焦点を当てて ''聴いて'' いましたが(ただガン見していたわけではないのです!)、声はやや細めで、エルザらしくまさにお姫さま。非常に素晴らしい。ひたすらガン見です。やっぱり…
第2幕はオルトルートがかなり重要な役ですが、ローエングリンが後半にしか登場しない分、エルザ役も重要です。婚礼に向かうエルザ一行の登場の際にまた例の木管の合奏があります。やはり気づいたのですが、私はこのエルザの木管が大好きなのです
ようやく登場するローエングリン。フォークトさんが出てくると空気が変わります。
大好きなエルザの大聖堂への行進。よく見る(聴く)と、エルザがこけるのはちょうど禁問の動機のところ。なるほど! こけた理由がはっきりしました。
この曲は何度聴いても感動します。ここも、欲を言えば、泣けるほど感動的な演奏だったらなぁ~
【第3幕】 21:00~22:03
エルザがローエングリンに名前と素性を教えるように迫る場面も、今回はエルザに注目していたからか、エルザにのめり込む感じ。ウールさん、いいじゃないですか! 素晴らしい。
3つの大きなオブジェが奈落に沈み、約70名の男声合唱団がせり上がってくる場面は壮観。
エルザを抱きしめながらの『名乗りの歌』は、今日も素晴らしい至福の時間。フォークトさんのローエングリンを生で聴ける次の機会はいつなのだろうか。感動して泣ける… ローエングリンの深い悲しみと諦めが胸に刺さり、エルザとほんの少し離れた時のエルザのうつろで悲しげな表情を見て、さらに泣ける…
フォークトさんは、4年前も、3日前も、この日もプロンプターと握手。こういうところも大好きです。
この日も客席からはすごい拍手と bravo、brava、bravi。夜遅いので、前回より若干カーテンコールは短めでしたが、22時15分まで10分ちょっと続きました。
飯守さん指揮の東フィルは、前回コケたところがあったけれど、今回も… 例えば、第3幕に3階舞台そばの客席で吹いたバンダ。音が外れたのもあるけど揃わないのは指揮が分かりにくいのかな。飯守さんの指揮は結構遅い。4年前のペーター・シュナイダーさんはもっとすっきりした演奏だったと思いますが、今年聴いた2回ともがゆっくりしていて、メリハリに乏しくてなんとなくもっさりしていました。ここはある程度趣味の世界なので、いい悪いではないですけどね。やはり、王の登場で何度も何度もファンファーレが出てくるし、目立つ旋律があるので、演奏は何かと難しいと思いますので、すべてバシッとキメるのはたいへんなのでしょうね。もちろんですが、感動する演奏をした場面もたくさんありました。大好きな作品だけに私の要求水準が高いだけなのかもしれないですが、2回とも大満足というわけではなかったのは、この演目については、飯守さんの解釈と私の趣味とはちょっと合わなかっただけだと思います。
いずれにしても、今回は2回観ることができて、本当によかったです。チケットがあれば、最終日の今日も行きたいくらいです。飯守さん、フォークトさん、ラングさん、ウールさんをはじめ、出演者の皆さん、新国立劇場のスタッフの皆さん、ありがとう!
素晴らしいオルトルートを聴かせてくれたペトラ・ラングさんは、11月にウィーン国立歌劇場『ワルキューレ』のジークリンデ役での来日が決まっています。
【指揮】飯守泰次郎
【小姓】前川依子、熊坂真理、丸山真木子、松浦麗
【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【協力】日本ワーグナー協会
【芸術監督】飯守泰次郎
【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【協力】日本ワーグナー協会
【芸術監督】飯守泰次郎
来シーズンは、『ワルキューレ』で開幕。チケットを確保しているので、とても楽しみです。