年間会員になっていた読響のメトロポリタン・シリーズは全8公演。最後の第22回を聴いてきました。
一応、本公演は2月下旬に完売となりましたが、これまでの本シリーズとしては売れ行きが鈍いです。スペインをテーマにしたどれも有名な作品ですが、率直に言うと、会員になっていなければチケットを買わないだろうなと思います。
アランフェス協奏曲は2009年4月に文京シビックホールで、金聖響(女優ミムラさんの元夫)指揮、木村大のソロ、東フィルの演奏を聴きましたが、ギターは音が小さくてやっぱりオーケストラに向いていないと実感。ただ、大好きなラフマニノフの交響曲第2番を聴くために行った公演でした。
ボレロもなぁ~… 超有名ですが、そんなに好きというわけではない。
そういうわけであまり気乗りしないし、海外出張直前なので行くのを止めようかと思いましたが、週末に仕事することに決めて、聴いてきました。
2016年3月4日(金)19時開演
東京芸術劇場
ビゼー:「カルメン」組曲から
ファリャ:「三角帽子」第2組曲
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
(アンコール)
タレガ:アルハンブラ宮殿の思い出
ラヴェル:ボレロ
【指揮】ユージン・ツィガーン
【ギタ】朴 葵姫(パク・キュヒ)
読売日本交響楽団
超有名な『カルメン』。不遇のうちに若くして亡くなったビゼー最高の作品で、どこを切り取っても名曲。1981年生まれツィガーンの指揮による気持ちのよいスカッとした演奏。読響の演奏は統一感が希薄でなんか合ってない気がして必ずしも上手いとは思えなかったけれど、16型大編成オケがこの名曲をブンブン鳴らしていたのがとにかくよかったです。
ファリャの『三角帽子』。週末仕事した上に今週は毎日ずっと夜遅くまで仕事していた金曜日。完全に眠ることはなかったけど、やや眠かった。それほど気持ちのいい演奏だってこと。
休憩は15分と短めです。
1年間ずっとお隣同志だった60代くらいのご夫婦のご主人さんと少しずつ仲良くなってきたので、休憩中はおしゃべり。
「ギターはあの有名な人で聴きたかったですね。誰でしたっけ?」
「村治佳織さんのことですかね?」
「最近見ないですね」
「舌の腫瘍でここ2~3年休養されていますから」
「舞台の真ん中にあるあの機械なんでしょう?」
「おそらく、ギターは音量が小さいから、PAだと思いますよ」
ってな具合で、ご主人からの質問攻めに回答したり、京都談義したり。
アランフェス協奏曲はだいたい予想したとおり、10-8-6-3-2 とかなり小編成のオケ。これくらい小さくないとギターが埋没するから。先述のとおり、中心にマイクとPAが準備されて、朴葵姫さんが赤というよりも朱色のドレスで登場。ぽっちゃりとまではいかない、でもとても健康的な印象。
積極的には聴きたいと思う曲ではないのですが、でもやはり名曲だと思います。特に、哀愁漂う有名な第2楽章が素晴らしい。イングリッシュホルンと朴葵姫の物悲しいギターの美しい旋律は胸を打ちました。
アンコールの『アルハンブラ宮殿の思い出』。1985年生まれの朴葵姫が人気があるのが分かるような気がする。健康的でチャーミングな笑顔だけど、音色が美しい。哀しさの表現も巧み。
最後のボレロは再び16型大編成。冒頭から小太鼓がボレロのリズムを刻んで、フルート、クラリネット、ファゴットと受け継がれていく単調だけど多彩な音色を楽しめる。演奏自体はまずまずでしたが、やはりこの曲は盛り上がりますね。
まだ30代半ばのツィガーンを聴くのは初めて。若々しく、お隣さんの奥さまは「イケメンね」とご満悦。指揮は分かりやすく、聴いているこちらにもメッセージが伝わってくるようで、またいつか聴いてみたいと思える指揮者でした。
これにて読響メトロポリタンシリーズはおしまいで、来季は再編される。お隣さんは来季も継続されるようで、「1年間ありがとうございました。またいつかどこかで」とご挨拶。マナーも良くて、奥さまといつも一緒で仲良さそうないい感じの方でした。河村、神尾、小曽根、ラ・サール、辻井といったソリストに期待し、比較的好きな作品も多くて年間会員になりました。河村尚子さんや辻井伸行さん、リーズ・ドゥ・ラ・サールはやはり素晴らしかった。コバケンさんもよかった。一方で、年間通して聴いたのですが、ものすごく感動して涙が出てきたというような公演がなくて(辻井さんのアンコール『悲愴』第2楽章くらい)。正直言うと期待した水準には達せず、総合評価としてはそこそこかな…
来季は継続しないで、1回券でつなぎます。まぁ、4月以降も東京にいるのかどうかも分からないしね…