子羊達に眠る時間は与えられてるだろうか。我々は気上線に従って歩いていく。

 

 天使は言った。「ぼくは天使だもの。ずっと天国に居なくちゃならないんだ。もしここから抜けだせるのなら、ぼくは耐え難い苦痛を伴っても好い。そうか!この苦痛はその耐え難い苦痛の最中なのかな。だとしたら皆は許され、神は褒美をくださるに違いない!神は存在するのだから!何しろ天使のぼくが言うんだからね!」天使はいい気になって私に高らかな微笑を向け言った。「本当にそんな楽園が在るの?ただの妄想でしょ?私はどうなんだろうって思うよ。現に貴方の姿が見えていることは確かだけど、それで神さまが居ることにはならないし、神さまが全て赦してくださるとも判らないじゃない。大体神さまが許してくれないと生きられないの?自分の手でどうにかしようとは思わないの?他力本願じゃない。」私はずけずけと物申した。「そりゃ、自分でどうにかしたいさ。でもご覧よ。ぼくには羽が生えてる。自分でどうにかしよう?とっくに試したさ。でもどうにもならなかった。だから神をねだっているんだ。それにぼくたちには価値なんか無いんだ。求められているのはその役職なんだよ。」天使はむざむざと言い放った。私はどうすることも出来なかった。「確かに…そうだけど、でも貴方の価値が無いなんて嘘だよ。私はこうして話していると面白いわ。」私は嘘を吐いた。「そうかな。でもそれは個人の感想に他ならないんだ。真理を証明する手立てにはならないんだよ。」天使はやけくそ気味に微笑んだ。私は面倒臭くなってしまった。「やっぱり本当に…貴方天使?そんなんでいいの?人間に馬鹿にされてしまうよ。天使としての誇りをもったら?」私は蔑みも交えた表情になってしまった。「そうやって欲しがるのはやっぱり『天使』じゃないか…。もう飽き飽きだよ。ぼくは疲れた。眠ることにするよ。」天使は毒々しい滾りを以って最後には弱弱しく言った。

 

 

 その六畳の部屋に置かれているベットに赤月は腰を降ろした。明日は仕事だ。今日あったことを思い返していた。美夜とは一応連絡先を交換した。何かメッセージを送ろうか?どうしようか。美夜からは何も連絡は無い。赤月は多少は満足した気になって風呂に入ることにした。

 

 

 

続く