一瞬一瞬を大事にしようと考えこの場にやって来た。それは空虚だった。それは花だった。未知なる道標だった。

 

 

 私は何処かで立ち止まった。抱え込んでいた手を解き、信頼の目を寄せる。何かに気を侵されていた。そんな気がする。不思議なことに前までの後悔は無くなっていた。一体どのくらいの時間が掛かったのかは分からないが、健やかな気持ちになっていた。晴れ晴れとしてさえいる。私は群青の空を見上げこの空が嘘ではないことを識った。世界が拡がったのだ。空気が青い。澄み切った心。どこにだって行けそうだった。私は輾転した。そんな夢。それを信じるかは今はやっぱり如何でも好い。この実際の構図が解けるまでは…。

 

 

 赤月は仕事場から抜け出して(正常にだが)依存性のある夜空に問いかけていた。僕はこれから何処に行こう。なぜならやはり昨日の夜の感覚が忘れられなくて癖になってしまったのだ。仕事だけの日常じゃ物足りない。何かが足りない。そう思えてならないのだ。何か…こう、何かなくてはならない!赤月は夜の街に繰り出した。そこには煌びやかな商店街、大都会ほどではないが盛えている駅前。不意にクラッとした。なんの予兆か?

 

 

 駅ビルをブラブラしている。赤月は訳もなく商業施設に入って行ったりした。10分ほど歩いているうちに急に帰りたくなった。自分でもよく分からないのだがそう思った。その途端、誰かに声を掛けられた。

 

「赤月?」

 

「え?」

 

振り返るとそこには憎んで憎んで頭の中では何度も殺した、あの母親が立っていた。