それから赤月は4度仕事を変えた。どれも長続きしなかった。そして2度程居住地を変えた。どこにも友達は出来なかった。彼の唯一の友達は知久ただ1人のままだったのだ。

 

  どうしよう‥。もうこれで4回目だ。何故辞めてしまったのか分からない。分からない!分からない。どうしてか辞めて仕舞う。何故なんだ! 1回目は職場の階段が怖くて辞めた。2回目は何だか寂れてて辞めた。3回目は上司が気に食わなくて辞めた。4回目は本当に行きたく無くて辞めた。どれも飲食業だったが、楽しそうだと思ったのか、なんなのか就職しやすそうという理由から職に就いた。「僕は大学にも行ってない。」それに1年間程何もしていなかった。(生活保護を受けていて、その空白の期間は農業をしていたことになっているが、案外誤魔化せる。)僕には資格も無いし、やりたい事もない。どうしようか。どうしよう。

 

 と、そんな時、彼は愛知県名古屋市の名古屋駅でふらついていた。近鉄名古屋駅やらゴチャついているが見慣れて仕舞えば大した事もない。駅構内をブラブラすることはよくあったのだが、この日もブラブラとしていて、新幹線から降りた乗客がわんさかと増大した。近くに赤福の売っているコンビニが有って、その横には雑貨屋、その横には服屋が軒を連ねていた。駅ビルのようだった。何となく品物を見ているフリをしていてぼんやり時を過ごしていた。この時間にならないと彼は外出をしなかったが、あと2時間程時間を潰さなくてはならない。何故なら彼の大家と遭遇したくないからだ。もし、仕事をしてないことを気づかれてしまったら非常に気まずい。この時間には大家は帰ってきそうな時間帯の為(先日出会した時間なのである。)あと2時間は此処をぶらつかなくてはならない。どうしようか。ついでに彼は丸3日と就職活動もしていなければ、何処かに出かけたわけでも無く、ただゴロゴロとベット上にのたまっていただけなのである。そんな怠惰な時を過ごしている事がもしこの広い駅ビルを歩いているだけで気取られてしまったら大変な事になるのであろう。(実際には何も起きないのだが。)そんな軽微な不安を抱えながら仕事をしていない優越感に浸りながら歩いていた。何もない。何をする事もない。ただ弄んでいる長々とした時間があるだけだった。精神的にもこの間々ではどうしようと思っていた時だった。

 

 

 

 続く