とりあえず1ヶ月だけ、と、つもりでディズニープラスを久しぶりに復活。で、最初に見たのが「愛だと言って」


キム・ヨングァンとイ・ソンギョンのラブストーリー。去年、珠玉の名作と色んなところでおすすめされていた作品です。


うーん、ひたすら暗い。全体の9割くらいが暗い。暗いといわれる「空から降る一億の星」よりもさらに輪をかけて暗かったです。


ただし、こちらは暗いといっても大した悲劇が起こるわけではないので、安心して暗さにどっぷり浸れます。


以下、ネタバレありです。


キム・ヨングァン演じるドンジンについて、ウジュ(イ・ソンギョン)は、後ろ姿が哀れだと評しますが、あの立派な肩と広い背中で世の中の不幸と孤独を一身に背負っているかのよう。


でも、よく考えると、ドンジンは被害者意識の塊なんですよ。


ウジュは、自分より不幸に見えたドンジンが悲しそうで、哀れに思えて、やがて惹かれていくわけですが、ウジュの方が断然不遇で、不運なんです(だから、復讐しようとするわけです)。


有望なアスリートで成績だって悪くなかったのが、父親が不倫に走り、なんだかんだで大怪我をして、母親も癌になって、進学を諦め、夢も展望もないアルバイト生活に、すっかり笑顔を失っています。


一方のドンジンは、とんでもなく利己的な母親を除けば、継父だった人物に大事にされ、大学や会社ではいい先輩・後輩にも恵まれ、美人でお金持ちの(ちゃんと愛情だってある)恋人と趣味のキャンピングを楽しむ生活。


結果、7年付き合った恋人に浮気されて捨てられたのは辛い経験だけれど、ウジュに比べれば(比べなくても)、十分に恵まれた人生だったはず。


なのに、自分の人生に足りないものばかり数えあげるんです。あげく、「一度も幸せだったことがない」って。えっ?


恋人との幸せそうな回想シーンは何だったの? 幸せだったからこそ、裏切られてどん底に落ちて、人間不信になったんじゃ?


もちろん物質的に恵まれた人生が幸せとは限らないし、(「涙の女王」にならえば)「幸せそうに見えてもポケットに石ころ」なのもわかりますが、ドンジンは幸せなふりをする努力すら放棄してますから(社長がこんなに負のオーラ全開な会社、私なら速攻で退職します)。


だからこそ、出会いと別れを通じて、不幸な過去と自己憐憫から解放されたふたりに、(ドンジンの母親が落とす影を考えると)あのラストは不要でしょう。


私なら、自信にあふれて働くウジュを見かけて、笑顔で去っていくドンジンで終わらせます。想いあっていても別れるしかないときもあるし、そんな別れこそ、笑顔を取り戻したふたりのポケットに隠れた石ころのはず。