年末の休みに夫と近所の温泉に一泊旅行へ。途中、ちょっといいレストランでランチ。会計が終わったら、「領収書はご入用ですか」と聞かれました。


気を利かしたつもりでしょうが、どう見ても(服装、会話など)夫婦・カップルのプライベートランチです。プライベートの飲食費を経費で落とす自営の客がどれだけ多いのかが察せられて、勤め人の共働き夫婦としては、ちょっとげんなりプンプンプンプンプンプン


学生時代にケーキ屋さんでバイトしていた時も、明らかに子どものおやつなのに、領収書を要求するお客さんがいたものです。


そんなことを思い出したのも、「トレーサー」を見ていたせいかも。イム・シワンが国税庁の調査官を演じます。


脱税する悪者たちを次から次へと成敗してくれる痛快なドラマかと思っていたら、(そうした面もあるんですが)権力と金をめぐって陰謀が錯綜するサスペンスであり、父と息子の相克を描いた人間ドラマでもありました。


イム・シワン演じる調査官も、そのライバルである同僚も、敵役の財閥の息子たちも誰ひとりとして健全な父子関係にありません。その歪みが人をどのように変えるのか、自分が抱える欠損をどうやって乗り越えるのかが描かれます。


必然的に、俳優たちが火花の散る演技合戦を繰り広げます。クローズアップが多用されるなか、複雑な表情とその微妙な変化を自在に操る演技力に感心しきりでした。


並みいる演技派の先輩俳優のなかで主役を演じたイム・シワンも演技ドルのトップ俳優の面目躍如。もう彼には「アイドル出身」という枕詞は不要とはいえ、アップに耐えるというより、アップでこそ映える顔立ちの美しさと透明感はやはり別格。


国税庁や税務調査のドラマというと食指が動かない人も少なくなさそうですが、難しい専門用語が理解できなくても(←私のこと)十分に楽しめるドラマでした。