中村吉右衛門さんの最後の「俊寛」 | お気楽マーニャのブログ

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中村吉右衛門さんの、最後の「俊寛」を、生で観ることが出来なかった。今のうちに、と国立劇場の資料室で、録画を拝見。今月末までなら、希望すれば、拝見できます。






吉右衛門さんの俊寛は、歌舞伎座や、国立劇場で何度か拝見したことがある。でも、最後に生で拝見したのは、30年以上前の舞台。中村勘三郎さんの「俊寛」も、歌舞伎座で拝見したり、宮島での録画をテレビで拝見したことがある。他の役者さんのも。正直な私の感想は、感動的な話ではあっても、つまらない演目。役者さんの演技がくどくて、くさい、というもの。まー、私に鑑賞眼が無いゆえですが、、。だから、吉右衛門さんの、最後の「俊寛」は、観てみたかった。そして、本当に感動しました。俊寛そのもの。かなり、足腰が弱っていらっしゃる様子だし、長台詞や歩いた後の台詞は、息があがっていて、苦しそう。でも、その身体から絞り出される言葉には、真実があり、ストレートにこちらの胸に飛び込んで来る。まだ若い役者さんが、どうにか俊寛の人生を感じさせたい、上手く、重厚に見せたい、と声を張り上げたり、無駄な動きをしたりすると、本当にくさい演技になってしまって、こちらは興ざめる。昔、テレビの放送で観ただけだけど、吉田玉男さんの、文楽の俊寛は、最後の場面、胸にググッと来た。これを越える歌舞伎はあるのかしら?吉右衛門さんの、今回の俊寛は、人間の多様な感情が、最後の瞳から伺えて、あー、本物の芸を見せて頂けたと、感謝感激でした。岩の上から、去り行く船を見つめる吉右衛門さん。自分の意思からとはいえ、遠ざかる船を最初は怨みがましく、厳しい眼(まなこ)で見つめる。その目が、安堵になり、悲しさに染まり、だんだんと、諦めの色になり、最後は虚無になる。自分の運命を受け入れ、近づく死をも受け入れる俊寛。吉右衛門さんも、ご自分のお体のことは、良くわかっていらっしゃったのではないかしら。あくまでも、私の妄想ですが。スケールが大きくて、カッコよくて、知的で、色気のあった歌舞伎役者さん。素晴らしい俊寛に会えて嬉しかったです。いつか、NHKで放送して頂きたいわー。余韻を引きずりながら、友人とランチ。感想を言い合いながら、新鮮て美味しいお魚を頂きました。