以前フェリペ2世がちょっと気になったことがあった。

 

過去記事→フェリペ2世のコッドピース

 

ティツィアーノ画(プラド美術館蔵)

 

今年になってようやく(!)彼についての本を読んだ。

(まだ一冊きりだけど)

山川出版社の世界史リブレット「人」シリーズ。

このシリーズ、コンパクトながら内容がしっかりしている。

 

私がなんとなく抱いていた彼の胡散臭いイメージ……

それはどうやら、黒い伝説」と言われるもののようだ。

思いっきり踊らされてたね(苦笑)

 

この言葉自体は、

20世紀初頭のフリアン・フデリーアスの論文

「黒い伝説と歴史の真実」における、

他国の歴史に対する中傷的見方、という文脈。

それが、一般に流布していた悪意や偏見に満ちた

スペイン帝国およびフェリペ2世の歴史像を、

反駁・擁護の立場から「黒い伝説」と呼ぶようになった。

 

もとはオランダ独立戦争の中心人物だった

オラニエ公ウィレムがフェリペ2世を糾弾した

『弁明の書』(1518)から始まるのだって!

(後世、無批判にそれを広めたのがヴォルテールらしい←)

 

誤解してたよ!

ごめんねフェリペ2世!

彼は「書類王」と異名をとるほど、

毎日毎日膨大な報告書に丹念に目を通し、

熱心に政治に取り組んでいたらしい。

 

……とはいえ、「カトリック王」を自負する彼

(実際に「カトリック王」の称号は、

カスティーリャのイサベル1世とアラゴンのフェルナンド2世が

教皇アレクサンドル6世=チェーザレ様のパパね~

から賜った、由緒あるものだ!)

熱心はいいが見方・立場によって独善的ではあるよな。

 

その強引さがたたって、晩年は少し寂しい……

ちょっと本書の最後のほうは切ない感じ。

 

 

しんみり終わるのもなんなので、

また冒頭に戻って、

フェリペ2世のパパ、カルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)の

肖像画もなかなかすごかった!笑

 

ヤーコプ・ザイネッガー画