「リラ冷えの街」 | Kyoto Corgi Cafe 2

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Kyoto Corgi Cafe 2 佐野洋子さんの「覚えていない 」にあった「山小屋の渡辺淳一」が笑えたので、「リラ冷えの街」を読んでみました。いや、面白かったです。「接吻」なんて言 葉、久しぶりに目にしました。なんか妙になまめかしい。それにしてもこんなに登場人物に共感できない小説も珍しい・・・。
人工授精という昭和45年の発表当時は画期的だっただろう医療技術をモチーフにするあたりはいかにも渡辺淳一。精子提供した相手にアプローチしてはいけないというルールを破って強引に近づく有津。そもそも見知らぬ女性の名前を10年間おぼえていて、妄想し続けていたこと自体ひいてしまうワケですが、和服が似合う美人の未亡人左衣 子は有津に引かれていくんですね。逢う度に変わっていく自分におびえながら、悪いのは有津で、悪くなる素質が自分にあるとは左衣子は考えない。「受身の生 活に慣らされた女が受け身でしかものごとを考えないのは無理なかった」・・・だそうです。こういうのをやまとなでしこって言ったんですね。で、妊娠した左衣子に堕ろせと言う有津。「妻子と別れ、人々に釈明して左衣子と新しい家をつくる過程を思うだけで遠く、長く、二人だけの日々の喜びとは別の煩雑さがあっ た」つまりやりなおす気力と自信がないと。妻との生活を「誰もが好きだから一緒にいるわけではない。しかし形だけは整えねばならない」と最初から最後まで 身勝手な有津。作家が男性だから女性キャラが都合よく描かれるのは仕方ないとして、これが女性読者に支持されるんだから驚きです。「リラ冷え」という言葉 は今は季語にもなっているそうですが、元々はこの作品で使われたのが初めなんだとか。ロマンチックな小説として評価されてたってことですね。佐野洋子さん が呆れるのはもっともです・・・。