盛田隆二の「サウダージ」を読みました。表紙にひかれて手にした初の盛田作品。サウダージとは郷愁とか追慕などと訳される失われたものを懐かしむやるせない思い。元々はアフリカから南米に奴隷として連れて来られた人が大西洋の果てに故郷に思いを馳せるような感情を、ブラジルの人達はこの言葉で表現するんだそうです。作品が発表された92年は外国人労働者が急増した頃。日本人の父とインド人の母と共にインド、ロサンジェルスで暮らし、今は人材派遣会 社で働く主人公裕一。若いパキスタン労働者シカンデルやバーの雇われママのフィリピン人ミルナ、裕一の父の愛人のフィリピン人フェーなど登場人物も国際色豊かです。アジア系外国人労働者の知り合いもなく、中高生の娘もいないので、切なさや喪失感を持ちながら都会に生きる彼らの暮らしがどこまで現実味があるのかよくわからないけれど、良識ある外国人や男性たちと比べて日本人女性が恐ろしく身勝手で節度がない。奔放な父の再婚相手衿子や家出した中学生あずさだ けでなく、面接試験で不採用になった女性や派遣先でトラブルがあった女性が、仕事を斡旋するだけの間柄の裕一に関係を迫るあたりは呆れます。不採用の電話は逆切れしたり延々と泣き言を言う人がいて採用通知の何倍も労力を要するらしいけど、これって結構マジな話なのかな?孤独に甘えて自分を貶めていくのか居場所をみつけるかはその人次第。「人間ってまぬけな生活に熱中して大切なことを忘れてしまうのよ」と日系4世のルイーズが言ったことで、裕一は母が住むイ ンド行きを決意します。作品発表から約20年。当時よりも日本は心の平穏を得られる国になったでしょうか??