前作『新感染 ファイナルエクスプレス』は素晴らしい映画だった。
私はホラーを苦手としているのでゾンビムービーとしての良し悪しを語れる立場ではないが、そのような自分にもあの映画が素晴らしいことは分かる。
私以上にあの手の作品を毛嫌いする母ですらも、無理やり見せてみたら最後には感動から涙を流さざるを得なかったくらいだ。どのジャンルのファンかを問わない、広範な人間に訴求する魅力が「新感染」にはある。
私はホラーを苦手としているのでゾンビムービーとしての良し悪しを語れる立場ではないが、そのような自分にもあの映画が素晴らしいことは分かる。
私以上にあの手の作品を毛嫌いする母ですらも、無理やり見せてみたら最後には感動から涙を流さざるを得なかったくらいだ。どのジャンルのファンかを問わない、広範な人間に訴求する魅力が「新感染」にはある。
それが一体どうしたのか。
なんであれの続編としてこれを作っちまったんだ。根本的な映画としての在り様がまるで別物じゃないか。誰があの恐るべき完成度を誇るファミリームービーに、こんな頭の悪い(誉め言葉)続編をくっつけようと思ったのか。
なんであれの続編としてこれを作っちまったんだ。根本的な映画としての在り様がまるで別物じゃないか。誰があの恐るべき完成度を誇るファミリームービーに、こんな頭の悪い(誉め言葉)続編をくっつけようと思ったのか。
しかもちゃんと面白いし。どうなってんだ。
さて、今作のプロットはシンプルだ。
元軍人である主人公が、白人マフィアの手引きによって、ゾンビに埋め尽くされてしまった母国に取り残された2000万ドルを回収する。
その過程であれやこれやと問題が起こるのである。
2000万ドルを仁川港まで持っていけばゲームクリア、半額の1000万ドルをみんなで山分けしてハッピーエンドである。これが作中で繰り返されることで観客に大目標の存在を印象付け、物語が彷徨う事を防いでいる。
2000万ドルを仁川港まで持っていけばゲームクリア、半額の1000万ドルをみんなで山分けしてハッピーエンドである。これが作中で繰り返されることで観客に大目標の存在を印象付け、物語が彷徨う事を防いでいる。
途中にはいくつか「寄り道」もあるが、それぞれにおいても目的が単純明快なので混乱することはない。序盤のノリにさえついて良ければ、あとはスムーズに興奮し、そして感動させてくれる。
もちろんハリウッド超大作に比較すると、劣る部分はある。
廃墟のセットは安っぽいし、カーアクションはCG感が強く出すぎていて質量を欠いている。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などと比べれば、さすがにシンプルな迫力ではかなうべくもない。
しかしながらそこはアイデアの見せ所。実車撮影では不可能なアクロバティックなカーアクションをふんだんに盛り込むと同時に、ゾンビという定番のクリーチャーをフィールドギミックとして活用することで、マリオカートよろしく展開の幅を広げて退屈を防いでいる。
その分現実性は低下せざるを得ないが、ゾンビのルールと車両の運動性能については最序盤で分かりやすく紹介され、常にその範囲内でのみ自体が推移する。だから現実性は無くても現実感は失われない。
ジャンル映画の常として、欠点もなくはない。
前作のようなコンセプトレベルの斬新さはないし、シナリオもところどころに綻びがある。
前作のようなコンセプトレベルの斬新さはないし、シナリオもところどころに綻びがある。
作品内でのルールは一貫しているが、前作『新感染』のルールからは逸脱している。続編としていかがなものかという批判はあって当然だろう。
単体の映画としては……と言いたいところだが、今作の場合単体ではちょっと成立しづらい。
前作でゾンビクライシスが発生するその導入を描いているからこそ、こちらが破綻しきった後の韓国の描写に集中することができたという面はある。
特に主人公ジョンソクのバックボーンは前作ありきになっていて、全く新規の作品であれば説得力は減っていただろう。
つまり前作の世界観を流用してその恩恵を存分に受けながら、精神性はほとんど継承しないというなかなかにズルい作品だ。このやり方を許容できるかどうかが、本作から受ける印象に多大な影響を与えることになる。
総括すると、これはかなり難しい映画だ。
圧倒的完成度の前作とはまるで別物のジャンルムービーであるのに、これを十全に楽しむには結局前作の鑑賞が必要になる。
万人に受ける作品ではないと思うし、怒られても仕方のない売り方をしている。
ただそれでも、私はたくさんの人にこの作品を見てほしい。
とりあえず、前作からの縁で本作を見たいとお考えの方には、うるさめの音楽をヘビロテして脳細胞を痺れさせておくことをお勧めする。
マキシマム・ザ・ホルモンとかお勧め。