甲子園に「バント」が戻ってきました。第107回全国高校野球選手権大会で9日に行われた1回戦の聖隷クリストファー(静岡)対明秀日立(茨城)戦で、春夏通じて初出場の聖隷クリストファーは、6犠打を絡めた「スモールベースボール」で5ー1と快勝しました。
2ー1と1点リードの八回、一死一、三塁。前の打席で安打を放った5番・谷口に、上村監督はスクイズのサインを出しました。谷口は内角高めの初球にバットを寝かせ、勢いを殺した球を一塁線に転がしました。鮮やかな追加点で勢い付き、打線はこの回3点を奪って明秀日立を突き放しました。
聖隷クリストファーは1時間のバント練習が日課で、本塁から近い位置に弧を描き、その中に球を止める練習を重ねてきたそうです。今年のチームは長打力を欠くため、特に力を入れ、「バントが武器というからには失敗は許されない。確実に決めるための型を体に叩き込んできた」と、谷口は振り返りました。
このほかにも絶妙なバントをことごとく決めた聖隷クリストファー。1試合6犠打は、プロ野球では歴代2位の記録で、1987年6月6日に近鉄が南海相手に7逆犠打をマークしたのがプロ野球記録です。
甲子園での高校野球では、夏は9犠打、春は10犠打が記録で、6犠打は極端に多い数ではないが、「バントでアウトをひとつ与えるより、強打戦法で行った方が効率的」との考えから、昔に比べるとバントが減ってきた感があります。
それでも「飛ばないバット」への変更から、バントは復活してきたようです。好みの違いはあるが、オールド高校野球ファンにとって「バントの多用」は、安心して観戦できる感じがします。
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1984年の王監督の時代から、藤田、長嶋、原監督まで、20年以上巨人を担当した某新聞社運動部元記者。