巨人の専用球場として使われた旧多摩川グラウンド(東京都大田区)近くで、70年にわたって営業を続けてきたおでん店「グランド小池商店」が、昨年末で閉店しました。「ON」をはじめとするスター選手らが足繁く通った店には選手のグッズや写真などが数多く残されており、これらは球団に寄贈され、3月1日に開業する新ファーム球場「ジャイアンツタウンスタジアム」(東京都稲城市)の内部で展示する予定です。
小池商店は、1952年、燃料店として開店。55年に多摩川グラウンドが造成されたのを機に、おでんや焼きそばなどの販売を始めると、グラウンドを訪れた大勢のファンらで店は賑わいました。
おでんは、選手達にも愛されました。王貞治・ソフトバンク球団会長は「多摩川での練習後は必ず立ち寄った。汗をかいた後に食べるはんぺんやこんにゃくは美味しかった」と、懐かしそうに振り返りました。
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督との「ONコンビ」をはじめ、多くの巨人選手のサイン入りバットやヘルメット、写真、色紙が店内に所狭しと並んでいました。多摩川グラウンドが98年に閉場した後も、往時を懐かしむ巨人OBやファンが来店するなどしていたが、昨年12月31日に閉店。店に残されていたグッズや写真などは、球団に寄贈されることになりました。
新ファーム球場にも、現状のよみうりランド内にある球場にも、クラブハウス内に食堂があり、選手はそこで飲食し、訪れたファンも球場内の飲食施設を利用しています。しかし、多摩川グラウンド時代は、グラウンドに飲食施設はなく、一番近い「小池商店」にファンも選手も通っていたわけです。取材に訪れた報道陣も、もちろん利用していました。
多摩川の河川敷にグラウンドだけあった巨人の専用球場。「V9」はこうした環境の中で達成されたことを考えると、「施設を良くすればチームが強くなる」だけでないことを、改めて感じます。
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1984年の王監督の時代から、藤田、長嶋、原監督まで、20年以上巨人を担当した某新聞社運動部元記者。