第97回選抜高校野球大会に「21世紀枠」での出場が決まった神奈川県立横浜清陵高校と長崎県立壱岐高校。他の出場校とは一味違った2校は、思わず応援したくなる野球部です。
横浜清陵は、甲子園で応援する生徒らの旅費や選手の滞在費などを調達するためのクラウドファンディング(CF)や寄付を呼び掛けています。
主催者側から補助されるのは、ベンチ入りメンバーに限っての甲子園出場の往復交通費だけで、選手の滞在費や、選手の保護者、応援する野球部員、吹奏楽部員の交通費は、自前で用意しなければなりません。しかし、強豪私立高のような寄付制度がなく、支援は不十分なのです。
CFの目標額は2000万円だが、これまで700万円しか集まっていません。同校ではOB会でも寄付を募り、県民から現金書留も受け付けています。
同校の甲子園出場は春夏通じて初めてで、昨秋の県大会では、公立校で唯一ベスト8に入りました。練習メニューなどを生徒たちが話し合って決める「自治」の部活動運営などが評価され、21世紀枠に選ばれました。なお、神奈川県の県立高校としては71年ぶりの選抜出場となります。
壱岐高校は、21人の選手と4人の女子マネージャー全員が壱岐出身で、島内にある4つの中学校から集まっています。全国から選手をスカウトする私立強豪高校とは全く異なる壱岐。しかも離島ながら、半数の生徒が国公立大学に進学する「進学校」で、文武両道を貫く伝統が引き継がれています。
21世紀枠に選ばれた理由は、離島のハンデを背負いながらも、九州大会ベスト8に進出した実績が評価されたからです。グラウンドは陸上部や女子ソフトボール部などと共有するハンデも乗り越えました。
練習試合の時は、壱岐から佐賀県の唐津港にわたり、佐賀県の高校が対戦相手となります。夏の長崎大会時には連戦となるため長期間島を離れ、昨秋の九州大会時は、壱岐と九州本土を何度も往復しました。2万4000人の島民が応援する初の甲子園で、勝利の校歌を高らかに斉唱するのが、ナインの目標です。
71年ぶりに神奈川県立高校として出場する横浜清陵と、島内出身者だけの壱岐。思わず応援したくなりませんか?
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1984年の王監督の時代から、藤田、長嶋、原監督まで、20年以上巨人を担当した某新聞社運動部元記者。