一昔前の高校野球の悪いイメージの象徴は「体罰と丸刈り」でした。
体罰は1920年代から存在していたが、過激化したのは戦後に入ってからといわれています。旧日本軍を経験した学生が復帰したことも理由の一つだが、ベビーブームや野球人気による競技人口の増加も関係していました。
部員数が増加すると、部員一人一人の存在価値が下がり、監督や上級生から体罰やしごきを受けやすくなり、退部する部員が増加します。部員数が減少すると、部員一人一人の存在価値が上がり、指導者や上級生も安易に下級生に体罰やしごきを加えて彼らが退部することがないよう配慮することになります。
限られた練習環境で、限られたレギュラーを、多数の部員が争う状況で、体罰は人数調整弁の役割を果たしていたことになります。嫌なら辞めればいいのだが、部活動は学校に紐づくために違う野球部を選べません。高校野球では、親の転居以外の事情で転校すれば、原則として一定期間公式戦に出場できなくなるため、逃げられない状況で体罰は激化したのです。
一方、日本高校野球連盟加盟校の実態調査によると、「部員の頭髪の取り決め」で、「丸刈り」は26・4%。5年前の76・8%から50%以上も激減しました。それでも昨夏の甲子園出場校を見ると、49校中、丸刈りでなかったのは7校のみで、まだ丸刈りが多数と言えます。
しかし、出場校の中で、大谷翔平選手(ドジャース)の母校の花巻東高校(岩手)は2018年の夏の大会後、優勝した慶応高校(神奈川)は戦後すぐの大会で既に髪型は自由にしていました。
少子化のために高校野球部員数は減少化の一途を辿っています。この影響で部員一人一人の存在価値が上がり、体罰は全体的には減少しています。丸刈りも、それ自体が部員数減少の理由になっていることも合わさって、大幅に減っています。
「体罰と丸刈り」の減少は、いい方向だと思う一方、オールドファンからは「俺たちの時代は」と昔を懐かしむ声が出そうな感じもします。
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1984年の王監督の時から藤田、長嶋、原監督の時代まで20年以上、巨人を担当した某新聞社運動部元記者。