米大リーグ・ドジャースのキャンプは、アリゾナ州のグレンデールで連日行われているが、デーブ・ロバーツ監督は、大谷翔平のフリー打撃について、「バットから出る音が違う。バレルゾーンに正確に打つし、パワーは印象的で、バットスピードも本当に素晴らしい」と絶賛しています。
「バレルゾーン」とは、長打になりやすい打球の速度と角度の組み合わせのことです。そこに打った打球の割合を示す「バレル率」は、大谷が昨季19・6%の数字でトップでした。
最近3年間の数字を見ていくと、大リーグ30球団の1位は2021年が42本でナ・リーグ本塁打王のフェルナンド・タティスJr(パドレス)、22年は62本塁打でア・リーグ新記録を樹立したアーロン・ジャッジ(ヤンキース)、23年は44本でア・リーグ本塁打王の大谷が1位でした。
具体的に見ていくと、例えば打球の初速が98㍄(約157・7㌔)の場合は打ち出し角度が26~30度の場合が最も長打になりやすくなり、初速が上がるにつれて角度の範囲は広がっていきます。つまり、大谷はバットスピードが速いため、長打になりやすい角度が広がるので、メジャートップクラスの「バレルゾーンに正確に打つ打撃」を行うことができるのです。
「バレル」は、英語のスラングで「ぶっ飛ばす」という意味を持ちます。まさに大谷の打球は、フリー打撃でも、公式戦の本塁打でも「ぶっ飛ばす」という感じです。
ホームランには2種類あると言われ、1つ目は弾丸のように突き刺さる本塁打。2つ目は放物線を描く「美しい」本塁打。昔は「王貞治は弾丸本塁打、田淵幸一は放物線」などとホームラン打者を色分けしていたが、大谷は昨季、着弾まで「3・99秒」の弾丸ライナーと、打球角度39度の滞空時間の長い本塁打、飛距離150㍍の最長距離本塁打と、「低く、高く、長い」本塁打を打つ万能型ホームラン打者と言えそうです。
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1984年の王監督の時から藤田、長嶋、原監督の時代まで20年以上、巨人を担当した某新聞社運動部元記者。