NHKテレビのニュースで、アナウンサーが「これまで入っているニュースを、AIによる自動音声でお伝えします」と告げると、その後は読み手がいないままのニュースが続く――という場面が見られます。声は硬い感じはするが、違和感はほとんど感じなくなっています。

 NHKは様々なAIを活用し、ニュース以外の「音声化」も模索しているそうです。例えば視覚障害者向け放送のドラマやバラエティーといった収録番組は、内容を言葉で説明する解説放送を実施しています。

 しかし、プロ野球中継など生放送では簡単にはいきません。そこで、NHK放送技術研究所は、プロ野球中継で画面に映る球速などの表示をAIで認識し、音声で配信するシステムを開発しています。

 投手が構え、投げる動作をAIが読み取ると同時に、球速のほか、ボールカウント、打順など表示された文字を認識して文章化します。これを音声合成して、ユーザーのスマートフォンに解説を配信するというものです。昨年は、プロ野球中継で実証実験が行われ、視覚障害者から高評価を得たそうです。

 それでも、プロ野球中継での解説音声付与のサービス化に向けては、まだ様々な課題があります。例えば、現在は多くの解説テキストを手動で作成しており、自動生成したテキストが占める割合は高くありません。恒久的なサービスとして運用していくには、解説の質を担保したまま自動生成の割合を増やす必要があります。

 アナウンスだけでなく、投球の回転数や曲がり幅、打球の速度や角度をリアルタイムで数値化して視聴者に届けるなど、AIの活用によるプロ野球中継の魅力は増す一方です。選手のパフォーマンスを客観的なデータで提供することで、視聴者はよりプレーの迫力を感じることが出来ると思います。

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 1984年の王監督の時から藤田、長嶋、原監督の時代まで20年以上、巨人を担当した某新聞社運動部元記者。