日本学生野球協会は2日、プロ野球経験者が高校や大学で指導が可能になる学生野球資格回復の認定者を発表し、巨人や楽天、米大リーグで活躍した岩隈久志氏(42)や、日本ハム、巨人などでプレーした小笠原道大氏(50)、元ロッテの清田育宏氏(37)ら合計141人が認定されました。認定者の総数は1608人となりました。

 高校、大学、社会人などのアマ野球とプロ野球とは、プロ側の強引な選手引き抜きで1961年に「柳川事件」(※)が起きるなど、長く断絶状態にありました。しかし、80年代に入ると関係改善が進み、元プロ野球選手が高校教諭として10年以上在職することを条件に指導が可能になる「教諭特例」ができました。

 特例は94年に5年、97年に2年と次第に短縮。2013年からは研修会を受講し、学生野球資格を回復すれば高校、大学野球の指導者に成れる現在の制度が始まりました。さらに19年末の研修会から、プロ球団の退団者だけでなく、現役の選手や球団職員らも受講が可能になりました。

 資格回復制度は、20年にイチローさんが受講したことで関心を呼びました。イチローさんは「学生野球の役に立ちたい」と、研修を受講する申請書に記したそうです。同制度は、母校(イチローさんだと愛知県の愛工大名電高校)なら直ちに、母校以外の学校なら日本高校野球連盟や全日本大学野球連盟に指導者登録すると、指導が可能になります。

 清田氏は、コロナ禍での内規違反で21年5月にロッテから契約解除され、23年3月にBC・埼玉に入団し、昨年末に現役を引退。「1人でも多くの子供に『野球って面白いよ』と伝えられたら」と話していました。

 「柳川事件」(※)= 日本野球機構(NPB)は社会人野球協会(現日本野球連盟)との間で、社会人野球日本選手権が終了する10月末までプロ野球側が社会人野球の選手をスカウトしないという協定を締結していたが、1961年、中日ドラゴンズが4月20日に日本生命の柳川福三外野手と契約してしまいました。この件を発端に、プロ野球退団者の社会チーム入団を拒否。高校野球や大学野球を傘下に置く日本学生野球協会も同調し、学生野球憲章でプロ野球関係者からの指導を禁じました。

 人口減少、少子化の現在、プロとアマが反目しあって良いことは一つもありません。さらなるプロアマ融和を望みます。

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 1984年の王監督の時から藤田、長嶋、原監督の時代まで20年以上、巨人を担当した某新聞社運動部元記者。