阪神の近本光司外野手(29)は、今季143安打、セ・リーグ最多の28盗塁を記録。新人から5年目までの通算安打は773安打で、2010年~14年までの長野久義(巨人)を抜いて、プロ野球史上最多をマークしました。5年目までの盗塁王4度は史上4人目です。

 また、ルーキーイヤーから「100安打、20盗塁」を5年続けています。新人からの連続100安打は1959年~78年と20年続けた張本勲(東映・日本ハムー巨人)、連続20盗塁は48年~57年と10年続けた木塚忠助(近鉄)がそれぞれ最長だが、「100安打、20盗塁」は5年が最長で、97年~01年の小坂誠(ロッテ)以来6人目の記録となりました。

 しかし、同じ100安打以上でも、打つカウントには変化がありました。昨季までの近本は早いカウントから打つ積極打法で結果を残してきたが、今季はボール球を見極める慎重なスタイルに変わりました。阪神がチーム全体の四球数が452と、リーグトップで、これが38年ぶりの日本一の一因となったが、近本も「待球作戦」に変えたのです。

 ストライクカウント別の成績を見ても、追い込まれた打席が多くありました。2ストライク時はリーグ1位の打率2割8分1厘をマークしたが、昨季まで高打率だった0、1ストライク時は3割に届きませんでした。特に初球は26打数6安打の打率2割3分1厘で、規定打席到達者では石川昴弥(中日)と並び、リーグ最下位でした。

 2ストライクからの安打は、143安打の58%で、これは2019年の近藤健介(日本ハム)以来。セ・リーグでは1965年の近藤和彦(大洋)、91年の和田真(阪神)、85年の杉浦亨(ヤクルト)に次ぐ高い数字でした。三塁打は12本打ったが、2ストライクからは7本。これは50年の蔭山和夫(南海)、56年の豊田泰光(西鉄)、2014年の西川遥輝(日本ハム)に並ぶ2リーグ制以降最多で、セ・リーグでは初めてでした。

 阪神全体でも、近本個人でも、「待球作戦」は「勝利」、「優勝」には結びついたが、近本個人の打率は2割8分5厘で、入団以来2番目の低さでした。近本の来季は「待球作戦」か、「積極打法」か、どちらを取るかに注目が集まります。

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 1984年の王監督の時から藤田、長嶋、原監督の時代まで20年以上、巨人を担当した某新聞社運動部元記者。