今季のプロ野球で、最も不運だった投手は中日の柳裕也。8月13日の広島戦では、九回まで無安打に抑えながら、0-0のまま降板し、史上3人目の9回以上を無安打でマウンドを降りた投手となりました。
このように、とにかく打線の援護がないシーズンでした。柳が投げている時の中日打線は、7月30日の巨人戦の一回から34イニング連続無得点など、援護得点は24試合で37点。0点が9試合、1点が7試合など援護してもらえず、リーグ最少の1試合平均1・99点でした。ちなみに平均援護点のリーグ最多は小川泰弘(ヤクルト)の4・56点で、その差は2・57点でした。
このため、今季の成績は4勝11敗の借金7で、勝率は2割6分7厘。しかし、防御率はリーグ6位の2・44。規定投球回を達成して勝率3割未満は、柳が延べ103人目。この103人の防御率を見ると、4点以上が42人、3点台が41人、2点台が20人。防御率2・50未満で勝率3割未満は1969年の伊藤久敏(中日)以来、54年ぶり8人目。2リーグ制以降は66年の権藤正利(阪神)と伊藤、柳の3人だけです。
これだけ打線の援護がないと、我慢も限界に近付くことになってしまいます。何しろ、無失点に抑えた5試合のうち、勝利投手になれたのはシーズン終盤の9月3日の広島戦の1試合しかなかったのです。最近よく使われる「6回以上投げて自責点が3点以内のクオリティースタート(QS)」は17試合あったが、その試合は3勝6敗の勝率3割3分3厘。
今季、QSをマークした投手は両リーグ合計461勝168敗、勝率7割3分3厘を記録したのに、柳は負け越しました。規定投球回に到達してQS試合で負け越したのも柳だけという不運ぶりでした。
長いプロ野球の歴史を振り返っても、柳は「不運な投手」の代表と言えます。来季こそ、打線の援護をもらって「幸運な投手」の代表となってほしいものです。
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1984年の王監督の時から藤田、長嶋、原監督の時代まで20年以上、巨人を担当した某新聞社運動部元記者。