プロ野球では「投高打低」の傾向が近年、強くなっています。打率3割を超えた規定打席(443)到達者は今季、セ、パ両リーグで計5人と、2リーグ制となった1950年以降、最少となりました。背景には何があるのでしょうか。

 パ・リーグの首位打者はプロ5年目で初めて規定打席に到達した頓宮裕真(オリックス)で、3割7厘。76年に打率3割9厘だった吉岡悟(太平洋=現西武)を下回るリーグ最低打率でのタイトルでした。しかも、規定打席に到達した22人のうち、3割を超えたのは頓宮と3割3厘の近藤健介(ソフトバンク)の2人だけでした。

 セ・リーグは、2度目の首位打者を獲得した宮崎敏郎(DeNA)が3割2分6厘をマークしたが、2位の西川龍馬(広島、今オフFAでオリックスに移籍)は3割5厘、3位のドミンゴ・サンタナ(ヤクルト)は3割ちょうどでした。宮崎と西川は故障で離脱した時期が長く、宮崎は461打席、西川は規定打席ぎりぎりの443打席で、もし2人が規定打席に届いていなかったら、サンタナが3割で首位打者になっていました。

 近年の3割打者の推移を見ても、20年は12人(セ8人、パ4人)、21年は11人(セ7人、パ4人)、22年は6人(セ4人、パ2人)と、年々減少傾向にあります。

 「投高打低」へのシフトは、米大リーグでは10年以上前から起きていました。投手の進化はテクノロジーの登場と密接に関係しており、高機能カメラや計測器の導入により、ボールの回転数や回転軸といった投球メカニズムの「見える化」が進みました。自分の特徴や課題を数値で把握し、合理的にレベルアップを図れるようになりました。持ち球の分析や取捨選択、精度向上に新球の習得も進みました。これに加え、投手の分業化が進んだために、次から次にリリーフが出てきて、打者の目が慣れる暇もないことや、データを駆使した守備シフトでヒットゾーンまで塞がれることもあります。

 日本でも大リーグに習ってテクノロジーによる投手の進化で「投高打低」が起きているという背景があるのではないでしょうか。

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 1984年の王監督の時から藤田、長嶋、原監督の時代まで20年以上、巨人を担当した某新聞社運動部元記者。