今年の高校野球の話題の一つに、夏の全国選手権で優勝した慶応(神奈川)の髪型が自由だったことが挙げられます。かつては「丸刈り」が当たり前だった高校野球だが、現在では全体的には激減している一方、甲子園出場校は、以前「坊主頭」が主流というちぐはぐさも見られます。

 日本高校野球連盟加盟校の実態調査によると、「部員の頭髪の取り決め」で、「丸刈り」は26・4%。5年前の76・8%から50%以上も激減しました。一方、今夏の甲子園出場校を見ると、49校中、丸刈りでなかったのは7校のみで、まだ丸刈りが多数と言えます。 

 「丸刈り」の歴史を見ていくと、江戸時代までは僧侶と犯罪者以外に丸刈りの人はいませんでした。その後、日清戦争以降、兵士の髪型が丸刈りとなり、一般にも広まったといいます。さらに第二次世界大戦では国民精神の総動員として学生、未成年者の一斉坊主刈りが出現、その名残で戦後も5年間くらいは高校生まで坊主が当然といった風潮でした。

 高校野球に限って言うと、「丸坊主の方が洗いやすく、清潔」、「丸坊主の方が強そうで、かっこいい」、「野球部の伝統だから」などの理由で、「丸刈り」が続きました。

 しかし、大谷翔平選手(エンゼルス)の母校で、今夏の甲子園に出場した花巻東(岩手)は、2018年の夏の大会後、「丸刈りにしないといけない理由が見当たらない」として、野球の邪魔にならない程度に自由にしました。立命館宇治(京都)は「他競技は丸刈りでない」として昨秋の大会後にやめました。慶応は、戦後すぐの大会で既に髪型は自由にしていました。

 「髪型自由」の風潮はこうした理由で全般的には主流になりつつあるが、甲子園常連校では「部員が集まるので頭髪を変える必要がない」、「厳しい練習で規律の徹底への抵抗感がない生徒が多い」、「部員の気持ちが一つになる」などの理由で、坊主刈りをなかなかやめられないようです。

 慶応の107年ぶりの優勝で「髪型自由」の風潮が、甲子園常連校にも進んでいくのかどうかに注目していきたいと思います。

    ◇◇◇◇

 1984年の王監督の時から藤田、長嶋、原監督の時代まで20年以上、巨人を担当した某新聞社運動部元記者。