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心より感謝申し上げます。ぺこぺこ。
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寝具売り場は、インテリアフロアの一角にあった。
開店直後で、まだフロアにはほとんど客がいなかったが、店員さんは花道を作るようにずらりと並び、こちらに頭を下げてくれた。
それが母には、なんとも小っ恥ずかしかった。
リビングセットや、オシャレなリクライニングチェアが並ぶ中、われら3人はそそくさと奥の目的地に向かった。
フロアの奥片隅に配置された寝具売り場に到着したが、やはり我々が一番乗りだった。
店員さんの視線が集まってくるのを感じて、身の置き所に困った。
見覚えのある「TEM〇UR」の文字を見つけて、すがるように行ってみたが、普通の枕ばかりで、目当てのブツが見あたらない。
「何かお探しでしょうか?」
声をかけてくれた店員さんに、「あの、抱き枕を探しているのですが」と母が答えた。
家族以外の人の前で、「抱き枕」というワードを口にするのはおそらく初めてで、なんだかそれがとても恥ずかしかった。
さっきから自分は恥ずかしがってばかりだ。
何がそんなに恥ずかしいのか。
自分によほど自信がないのか。
そのマインドに自分でもさすがに嫌気がさしたが、仕方がない。
なんせここは、天上人の集う新宿伊◯丹なのだから。←考えすぎ
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「こちらです」
自分たちより少し年上とお見受けする前述の店員さんが奥に案内してくれた。
「うちではこれだけしか置いていませんが、隣のNさんやLさんでも抱き枕は扱っていますよ」
さすがベテランともなると、気遣いが違う。
親切にも他メーカーの商品情報まで教えてくれた。
「実際に試してみますか?」
「はい、ぜひぜひ」
さらに奥の『スリープコンサルティングルーム』なるものに案内された。
そこには4つほど個室が並んでおり、各部屋にベッド1台と椅子1脚が置かれていた。
われら一行はそのうちの1室に通され、店員さんに促されるまま、母は靴を脱いでベッドに横たわった。
そして、T社製の抱き枕を実際に抱いてみた。
率直な感想を述べると、まあ質感はしっかりしているが、丸太のような円柱型をした貴社製品であれば、他の物品、例えば既存の枕や掛布団等で代用できそうな気がした。
「うん、まあ悪くないですね」
天上人の集う店とは言え、ここは妥協できない。
母は嘘偽りない感想を述べた。
すると、いつの間にか入り口近くにいたもう一人の女性店員がつつと入ってきて、別の抱き枕を差し出した。
「それでは、こちらを試してみてはいかがですか?」
彼女から渡された抱き枕は、タツノオトシゴのような流線形をしていた。
抱いてみると、先ほどの物より腕の落ち着きが良い。
「ああ、いいかもしれませんね」
その女性店員は満足げに「ありがとうございます」と応えた。
しかし、それはL社製であった。
母としては、当初のリサーチ通り、T社の他にN社の製品も試してみたかった。
その旨を申し上げると、奥からまた別の店員が現れた。
「ではこちらはいかがでしょう?」
N社担当の販売員と思しきその女性は2つの抱き枕を持ってきた。
2つとも試してみたが、そのうち縦に長さのある方は、これまで試したものにはない、上半身から下半身まで何とも言い難いフィット感を得ることができた。
「おお。これはすばらしい」
思わず感嘆の声が漏れた。
自分の感覚を確かめるがごとく、長女にも勧めてみた。
「ちょっと長女さんも試してみてよ」
肩こりとは無縁な世界に生きるヤングな長女だったが、本製品を抱いた瞬間、
「やばっ」と語彙力ゼロ皆無の反応が返ってきた。
しかし、それだけに彼女の本能が是としたことが母にも伝わった。
T社、L社、N社。
各社試したみたところ、概ね母の心は定まっていた。
あとは、スポンサーたる夫の決断に委ねるところではあるが、「もう少しよく考えます」と慎重に回答し、平民3人は売り場を後にした。
せっかくアテンドしてくださったのに、現場販売員の方々には申し訳ない。
しかし、必ずやこの3社の中から母のプレゼントは決めますので、皆様方のご尽力には感謝いたします。
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こうして、天上人まがいの至福の時を過ごした母だったが、結局当日は、現物を買わぬまま帰宅した。
家で待つ次女とワンコのために、地下の食料品売り場で極上スイーツと高級ササミを買って帰った。
そして、その数日後、夫はネットでN社の抱き枕を注文してくれた。
うん、これが母も一番抱き心地がよかったと思う。
ありがとう。
念願の抱き枕が届き、実際にわがこの手にしてみるその日が楽しみでならない。
本当にありがとう。
ありがとう、新宿伊◯丹。
ダンケシェーン。