『チョット相談があんねん…』
おぉ!
こういう切り出しは…
絶対にこうなる。
それは…
『チョットいっぱいやりながらどう?』
ははは…
案の定やな。
ははは…
予想通りや!
予想通りや!
てなてな訳で、やって参りました某居酒屋さん。
『で、話って何やねんな…』
『まぁまぁ、よろしい。先に呑もか!』
なんでやねん!?
話がアルんやろ?
焦ってるんちゃうの?
まぁ、エエか…
では、我々の儀式にも似た呪文を唱えるといたしましょう。
あぶだかだぶら、ひかけぇ~ゴマ!
ほな、ご一緒に呪文をお唱えください!
『まずはビ~ル!』

ぐび~!
ぷはぁ~!
ぷはぁ~!
よろしいなぁ、このイッパイ。
たまりまセブン…
『で、話って何やねん…』
と言うか言わないかの間に突きだしがやって参りました。

イタドリ、キュウリの醤油漬け、枝豆…
イタドリかぁ…
季節やな。
でも、こんなモン、山に行ったらアホほど生えてるがな。
イタドリ…
チョットかしこまった言い方やな。
ゴンパチとか、スカンポって言うたりするよな。
『イタドリ』ってのは関東の方なのかな?
ど~でもいいですよぉ~!
で、この枝豆、チョット塩が強すぎるでぇ~、女将さん!
『ほんで、話って?』
『そやねん、例の○×の件やけどな…』
てなてな具合で話が始まります。
なんやかんや、
ど~でこ~で、
わいわいわい、
ど~でこ~で、
わいわいわい、
『ん~、それはそうと何か食べるか?』
メニューを見るとチョットひかれたもの…
これやな!

アボカドとタコとトマトの塩麹のサラダ…
長ったらしい名前やのぉ~!?
まぁ、ええけど…
美味そうやんか。
『アボカドって意外と日本の料理にピッタンコと合うよな、なかなかナイスやで。』
『ホンマやね』
『で、タコもコレ新鮮そのモンやな。食感がたまらんなぁ。』
『塩コウジ、っちゅうのんがメッチャエエどぉ。』
そんなこんなでワイワイ言いながら箸を動かしていると、女将さんが言うのです。
『今日はメニューに載ってないけれど、活きの良いサバが入ったのよ。刺身でOKよ!』
そう言われると絶対にイヤとはいえないでしょ。
鯖のお造りは最高やからね。

『う、う、うまい! 最高やな、この食感…、このお味…』
そうなんです、鯖のお刺身は最高に美味いんです。
おかげさまで写真を撮るのがスッカリ遅くなって、最後の2キレになって…
『あっ、写真撮ってヘンやんか!』
まぁ、遅くはない…、2切れでも許してちょうだい!?
それにしても鯖…
最近は『マサバ』ではなく『ゴマサバ』が多いようですね。
昔は『マサバ』がよく捕れたもんですけどね。
でも、今じゃ8~9割がゴマサバだもんな。水温が高くなったせいでしょうかねぇ。
値段で言うと、ゴマサバはマサバの1/4の価格にしかならないんですよぉ。
とにかく、ココで出されたのは『マサバ』。独特の食感と脂の乗り方が最高。
刺身の王様やなぁ…
で、何のやったかなぁ…
『そや、話の続きや。ウチのなぁ、スタッフのことなんやけど…』
『どないしたん?』
『ホンマ、困ってるンやで…』

で、お造りもう一種類…
やっぱり天然の魚は美味いなぁ…
『そうなんや、天然…。それが問題やねんな』
『何の話?』
『だから、ウチのスタッフの話やんか! そいつがホンマ、天然やねん。天然ボケやな…』
『おぉ、それは困ったもんや。天然ボケかぁ…。でも勉強は昔からできたんやろ?』
『そやねん、でもなぁ…。勉強ができるんと仕事ができるんとは違うねんな。』
『もちろんや。学生時代に勉強できてもアホなヤツは多いからな』
『それそれ、それや! そいつはホンマ、天然なヤツでな…』
『天然モンか…。魚やったらエエ値段付くのに…』
『幻の魚、イトウみたいなモンや。天然でんねん』
『そいつ、名前は古田って言うんやけどな。これからイトウと呼ンだんねん』
ホントに仕事をやっていて『天然な人』はホントに困る。
だいたい空気を読めないのが天然の天然たるゆえん。
そして、意図的にボケてるンじゃなくて、心底から思ったことがズレてる…。
これが『天然者』の正体やな…
周りに居て、自分に直接関係なければ見てておもろいんだけど、
自分の直接関わるところ、またスタッフにそういうのが居ると実に困る、困ったちゃんなのですなぁ。
まぁ、嘆きなサンな…
呑も呑も。
ワインにするかぁ…。白がエエな。
ドン・ロメロ ブランコ
スペインのワインですな。
やや辛口やねんな。フルーティーなワインやで。
フレッシュで生き生きした酸味が特徴やねんな。
お値段安いけど…
コレでエエな…
『いやぁ、その天然のウチのスタッフがなぁ…。なんぎやねん…』
まぁ、そんな話はやめとこ、ドコにでもおるで。そういうヤツ…
食べよ、食べよ。

今、タケノコが美味しいな。
天ぷらにしてもエエどぉ。
塩で食べるとこれまた美味いんやで。
『そいつなぁ、失敗してもそれを失敗やと思てへんねん。
同じ事を繰り返すんやな。不治の病みたいなモンや…』
いやはや、困り果てている様子ですなぁ。
『うちにもおるで、そういうヤツ。最近そういう若いのが増殖してるな…』
呑も呑も。
愚痴はそれくらいにしょうか…

ワインも空けてしもたし、日本酒はどうや?
燗で呑もうか。
うぅ~、かぁ~!
効くなぁ…
やっぱり日本酒は美味いな。
『でもなぁ、最近血圧が高いしな。血がドロドロ感もあるなぁ』
『ほな、コレ食べよか…』
とメニューを指さす。

新タマネギのサラダ…
『タマネギはな、血がサラサラになってエエねんで』
『タマネギみたいにズル剥け頭になったらイヤやけどな!?』
そんなこんなアホ話も含めつつ…
ワイワイと話していますと、そんな安居酒屋に知り合いがドンドン入ってくる…
『お~、テラさんやないのぉ! 久しぶりやなぁ!』
彼は昔、洋服屋さんを営んでいた人で、アイビー系の服をよくそこに買いに行ったもんです。
昔、ごっつ流行ったな、VANとかのアイビー系。
くろすとしゆきの『トラッド歳時記』という本などを買ったり、『メンズクラブ』なんかもよく読んでたなぁ。
懐かしどぉ~!
『ほら、一緒に呑も、呑も!』

ナスのグラタンみたいなヤツ…
名前は何って言うンだろ?
『コレ、美味いな。濃厚やで。日本酒にはあえへんけどな…』
などと言いつつ、日本酒を飲んでいると…
また新しいお客…
『あらま! たかさん! これまた久しぶりやなぁ。おいで、おいで、ここにおいで!』
ははは…
2人が3人になり、3人が4人、5人…、そしてカウンターにも知り合いのカップル…
小さな店が知り合いばかりになったじゃないか!
まぁ、ようある話ですが…
そんなこんなで、何の話やったかワカランようになってしもうた。
最初の相談の話も途中で、彼のところのスタッフである天然娘の話になってしまったし、
久しぶりに会った友人がリゾート地にすんでて、今度そこに泊まりで遊びに行こうという話になったり。
で、後から来た知人とは久しぶりに昔の仲間で集まろうという話にもなった。
でもな…
酒の場での色んな約束事とか、今度あ~しよ~、こ~しようという話はタイガイは一過性で終わってしまう。
その場で盛り上がってそんな約束をするンだけれど、10%も実行されないのが世の常っちゅうもんや。
酒の席での盛り上がり、
酒の席での約束、
酒の席での約束、
これほど『空小切手』のようなモンはありませんな…
『こんなんあるけど、食べていく? サービスしときますけど…』
と、女将さん…

おぉ、エエヤンか。
居酒屋でデザートなんてねぇ。
居酒屋でデザートなんてねぇ。
美味いヤンか…
『女子みたいやな…』
と、オッサンばかりが喜んで食べてる姿は見てられヘンな。
実に似合わんよな…
そんなこんなの居酒屋放浪記…
で、次の日の朝…
久々に出会ったテラさんにもらった彼の名刺の裏には走り書きで『5月2日』の記載が…
あれ?
なんだっけ?
なんだっけ?
そうです、これが酒を飲んだときの空約束の証明!?
これって?
なんだったっけ???
なんだったっけ???
ははは…
(追伸)
後でやっと思い出したのですが、5月2日と書かれたメモ。
これは、彼の別荘に泊まりでみんなで遊びに行くという約束だったような…
覚えてるやろか、そのときにいたみんなと、テラさん…も!?