ソバは江戸の粋ですなぁ… 老舗 『大坂屋砂場』の巻   | The Sam's Room

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『粋だねぇ』という言葉が好きな江戸っ子…

『蕎麦なんてのはよぉ、ツユをサッとつけてさぁ啜り込むのが粋ってもんじゃねぇか!  ドバっとたっぷりつけちゃぁいけねぇやな!』
と仰いますな。
蕎麦食いは江戸っ子の『粋』を表す象徴にもなっているようでございます。

蕎麦はまた小説にも屡々登場するようです。
チョット調べてみると、かの文豪・夏目漱石センセーの小説『吾輩は猫である』の中にも登場すると言うことだそうな。
そんな場面あったっけかなぁ…と思い出せないワタシ。
このままでは何となく消化不良なので我が書棚にある古びた『吾輩は猫である』を久々に手に取るのでございます。
もう多分何十年も開いたことがないんと違うヤロか、この本…。

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で、どこにあるンや?
斜め読みをして目で追っていると第6話にそれはありました。

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『打ちたては有難いな。蕎麦の延びたのと、人間の間が抜けたのは由来頼母しくないもんだよ』と薬味をツユの中に入れて無茶苦茶に掻き廻はす。『君そんなに山葵を入れたら辛いぜ』と主人は心配さうに注意した。
『蕎麦はツユと山葵で食ふもんだあね。君は蕎麦が嫌ひなんだらう』『僕は饂飩が好きだ』『饂飩は馬子が食ふもんだ。蕎麦の味を解しない人程気の毒なことはない』
  
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こんなようなやり取りがございます。

作品中、迷亭センセイが苦沙弥センセー宅で勝手に蕎麦の出前を頼み、蕎麦の講釈を垂れて粋がるけれど、ワサビがきつかったり上手く蕎麦を食べられなかったりで四苦八苦するという迷亭センセイの滑稽ぶりにプッと吹き出すタイヘンおもろい話が展開するのでございます。

それにしても、『吾輩は猫である』はオモロイですなぁ。
中学校の英語のセンセーである苦沙弥センセーに拾われたけれど名前を付けてくれない猫が語り手となって話が進んでいくのであります。
主に、苦沙弥センセーの書斎を中心として友人である美学者・迷亭センセーや物理学者の寒月センセーなどの対話で話しが進んでいきます。世俗的なことから文学、芸術、哲学、政治、さらには科学の話しまで何でもありの内容には驚きますなぁ。

おっと…
何の話しだたっけ…

蕎麦、
そう、蕎麦だよねぇ。

脱線してしまいましたよ、初めっから!?

蕎麦の話しに戻りましょ!

で、今回のお話しは、お江戸で有名なおそば屋さんに行ったというお話しなのでございます。ははは…、長い前置きでございました!?

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華のお江戸の御奉行所が集まった『虎ノ門』にあるお店が今回の話題の中心。

『虎ノ門 大阪屋 砂場』というお店なのでございます。

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ほぉらねぇ。
看板一つにしたって風情があるじゃございませんか。

で、正面はと言うと…

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これまたクラシックな木造なのでございます。
聞くところによりますと、この建物は関東大震災の直前、大正12年に建てられたモノだとか。
コンクリートジャングルの中にあっていささか目を引く建物なのでございます。

歴史はもっと古いようで、なぁんとぉ~、明治5年が創業だそうな!
当時は剣術家・山岡鉄舟らにも贔屓されたとか、歴史を感じさせますなぁ。

で、『砂場』って、変わった名前ですよね。
幼稚園児が遊ぶトコロみたい…
お砂場でお遊び…!?

いやいや、これには深い歴史があるそうでございますぞ。

では、いささかウンチクなんぞを垂れてみようではござらぬか
■砂場ってなぁにぃの巻
山やトンネルを作ってお遊びする『砂場』ではございません。
元々、大坂城築城の砂や砂利置き場の近くで営業をしていたソバ屋だったそうです。
砂場に近いから、みんな『砂場』と呼んだことからこの名前が付いたそうな。
へぇ~。
これがどうやらお江戸に進出してきたらしい。
寛延4年(1751)の「蕎麦全書」には江戸の薬研堀に「大和屋 大阪砂場そば」が登場していると言いますよ。
それ以上はよくわかりませんが、『砂場』というソバ屋さんは古くからこの地にあったことだけは確かなようです。

ああ、もうエエ…
ああ、ウンチクなんてめんどくさい…
ああ、もう次の話しに行こうぜぇ…


ではでは、いざ食さん!!!!

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某日、正午過ぎ…
ああ、腹減ったというのと、暑くてたまらンどぉ~という2重苦でお店の暖簾をくぐったワタシ。

ぎょえ~~~~!
ひと、ひとが…、人がいっぱいヤンかぁぁっぁ!

お昼時だもんなぁ、
有名店だもんなぁ、

混んどる、こんどる、コンドルは飛んでいく… 
まぁ、すぐ席が空くでしょ。

3分ほど待つと席に着くことが出来ました。
並ぶのが大ッ嫌いなワタシですが、この暑さでまた他の店をめざして放浪するのもヤダ。
と言うわけで覚悟を決めたのですが、肩すかしの『3分待ち』、ウルトラマンが地球上にいられる時間帯で席に着くことが出来ました。

ラッキー!!!

『何になさいますかぁ?』
『そうだなぁ…、今一番お勧めなのはなぁにぃ?』
『そうですねぇ、アナゴのセイロですかねぇ』
『じゃぁ、それください!』

…と注文してからメニューを見ると、

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や、や、やられたぜぇ!

てめぇ! 一番高いの言いやがったなぁ!!! 

… などと賤しいコトを言ってはなりませぬぞ! 
夏にはアナゴですからねぇ…

ええ、イイですとも、イイですとも… 笑ってイイですとも!
ワタシャ、穴子せいろがよろしゅうございます。

で、出てきたのは…

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おおっっ!
見事じゃ!
見事な穴子… 一匹丸ごと穴子!!!
納得でございます。

では、穴子せいろの全景をば…

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いいですねぇ。
さっくりと揚がったまるごと1本のアナゴ天。

いやはや、これでお酒がありゃ百人力なのでございます。
が、モチロンお昼からも仕事、お仕事、workなのでございますぞ。
ココは我慢のしどころでございます。

そういえば…

江戸っ子ちゅうもんは、ソバ屋に入れば、先ずは日本酒を頼み、イタワサかなんぞでキュッと一杯飲んで蕎麦を待ち、ツツッと食べて、そそくさと帰るというのが粋だそうな…
長居は御法度、さっと飲んで、さっと食べて、さっと帰る…、いやいや、江戸っ子は帰るじゃなくて、『けぇ~る』でございましょうかぁ!?

てなことで、ソバ屋さんには日本酒の種類も多く揃ってて、しかも酒の肴の単品も充実していますよねぇ。
ココにも十四代、田酒、磯自慢 愛山などなど20種類近く揃っているようですよ。

蕎麦に日本酒…
エエ取り合わせやなぁ~と思う心にブレーキをかけ、お蕎麦を食べちゃいましょ!

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蕎麦自体はほのかな甘みと香り高いもの。
聞けば、北海道産のそば粉を使っているとか。
太さもちょうどよろしいなぁ。

これを少し甘めが強く濃いおつゆにさっと蕎麦をくぐらせずズズッッッ!
おつゆとお蕎麦が口の中でハーモニー。

コシが強めのもっちり感のある蕎麦がエエ感じですなぁ。

つるつるシコシコ、ズズズゥウゥゥゥ~、ゴックン!

蕎麦はイイなぁ…

最後の仕上げは…

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モチロン、そば湯!
少し濃いめで甘口の汁と茹で汁のベストマッチでございます。
あんまり飲むと塩分とりすぎやけどなぁ… とヤボなことを脳裏に浮かべつつ、半分くらいでやめときましょうね。
ホントは全部飲んでしまいたいけれど、やっぱり華の中年は成人病に恐れを成しておるのでございますよ。

アカンよぉ、塩分のとりすぎは!

………… □□□□ ★★★★ ☆☆☆☆ ■■■■ …………

そんなこんなの『お蕎麦でランチの巻』でございました。

     『虎ノ門 大坂屋 砂場』
                  電話番号03-3501-9807
          東京都港区虎ノ門1-10-6
                営業時間 平日 11:00~20:00
                     土曜日 11:00~15:00


蛇足ではございますが…

お江戸のお蕎麦といえばのウンチクで失礼致します。
■お江戸のお蕎麦、『暖簾の御三家』の巻
代々続いている蕎麦屋といえば、『藪』『更科』『砂場』ですよね。では少しコウシャクを…

①砂場
 一番古くからある暖簾で、大阪に端を発するお江戸最古参の暖簾が砂場らしい。
②薮
  江戸時代、雑司ヶ谷鬼子母神の近くの『やぶ』の中にあった百姓の出していた蕎麦屋が源流。
③更科
 信州更級郡の保科家が殿様にそばを献上していたことは始まり。信州更級と保科家から『更科』とした…らしい。

いやはや、蕎麦とは奧の深いモノですなぁ。
ワタシャ、ツウでも何でも無いので深いことはよくわかりませんが、確かに美味しい食べ物ですねぇ。

でも…、信州信濃のソバより、ワタシャあなたのソバが良い… ですかぁ!?