2019年11月にフランス、ノルマンディー県に一軒家を購入した。
1998年にパリに移り住んでからはずっとパリ在住だった。
随分前から、そしてここ数年は一軒家に住みたいという想いが強くなっていた。
幼い頃の幸せな体験を再現したいという想いだったのかもしれない。
あの頃ゆったりと過ごせた時間は私が育った一軒家の自分の部屋の中か、
庭で一人で過ごした時間だけだった。
フランスに移住してからのいくつかの経験も重なった。
友人の田舎の家で数日過ごした思い出や、昔のボーイフレンドの家族が持っている海辺の家で過ごした日々。
ただ庭に座って緑の中に佇んでいることだけで幸せだった。
旅行に行くのとは違う、次に次にと急ぐのではなく、ただそこにいるだけの至福の時間。
そういうことを求めていたのかもしれない。
私の購入した家は、パリから電車で一時間半のノルマンディーの小さな町にある。
2本の川が流れる、第二次世界大戦の爆撃から逃れた古い町並みの可愛らしい町。
家は質素で、元の大家も不動産会社もこの家が1940年よりも前に作られただろうということしか知らなかった。
でも偶然にも見つけたこの小さな町で、偶然にも最初に見学した家だった。
車の免許を持っていない私でもパリから電車でアクセスでき、
自分のしがない給料でもローンを組むことができるくらいという条件にも当てはまった。
この家を見学した時にすぐにここだと思った。
通りに面した表側は何の変哲も無い家。
でも中に入ると天井に梁があり、小さな可愛らしい部屋がいくつもある。
中庭にはレンガが敷き詰めてあり、赤い愛らしいバラが壁を蔦っていた。
中庭を超えたその先には納屋がある。
壁の作りはレンガでしっかりとしているが、床は半分土だし、
とにかくだだっ広い。
でもこの空間に可能性を感じた。
そして納屋を通り過ぎるともう一つ庭がある。
雑草が生えっぱなしになっているが、ここには二本のりんごの木が生えていた。
特に一本のりんごの木はまるでこの庭を守る妖精のように両手を広げるように立っていて印象深かった。
私はこの家に一目惚れしたのかもしれなかった。
不動産会社のおじさんは見学する前にこの家は見せてもしょうがないと言っていた。
貴方には大きすぎるだろうと。
私は彼氏と別れて一人だったし、40過ぎの大工仕事ができそうに無い
パリから来た日本人にこの家は無理だと思われたのも仕方ない。
私も心を惹かれながらも、頭で考えると
どうやっても手に負えないだろうと思ったし
それを素直に不動産屋に話した。
貴方にもっとぴったりの家があるよと言って、
もっと小さな家をいくつか見せてくれたけど、
心は最初の家にとらわれていた。
その日の見学が終わった後、
もう一度あの家を見せてくださいと言って、見せてもらった。
そして決めてしまった。
一番最初に見学した物件に。

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