この回の動画に彼は二度、違った形で出てきます。
まず、絵の展示販売がされている部屋で、Camilleが「あの絵、ジョルジュ・ブラッサンスに似てるわよね」といいます。
そして、お祭りの余興で、手回しオルガンのおじさんと、お姉さんがデュエットする歌が、ジョルジュ・ブラッサンスの『仲間を先に』 Les copains d'abordという歌。
では、このブラッサンスという方はいったい何物なのか?
本国の人気に比べますと、シャンソン歌手としては、日本では今一つ知名度がないようです。私も名前を聞いたことがある程度でした。シャルル・アズナブール、エディット・ピアフなどという名前のほうが有名な気がするわけです。
しかし、調べてみますと、この方はフランスの音楽界の伝説となっている方であり、国民に愛され、亡くなった今でも人気があります。数々の歌手に影響を与えたそうです。また、詩人でもあるので、フランスの小学校では、みな彼の詩を学びます。フランスの現代文化や、フランス人気質というものを知るための研究の対象にもなっており、彼について数々の論文や本が書かれています。
街をゆくお兄さん、お姉さんたちだけでなく、おじいさんもおばあさんも、お父さんもお母さんも、子どもも、フランス人ならば、なんらかの形で知っていると思われる人なのです。
Wikipédiaでの記述も長いです。Georges Brassens - Wikipédia とても読みこなせません。
伝説的とも言える人気の理由のひとつとして、彼が反体制派の歌手だったということがあります。フランス人は日本人と違い、日常的にカフェで政治の話をします。以前、今年の大統領選挙の回を扱った時の「虎と小鳥のフランス日記」の解説で聞きましたが、フランス人が政治について語ることは、自分の哲学を語ることである、そうなのです。
私が「実は私、シンプルライフめざしてるの」と友だちに言うと、「私もときめきなんとかをテレビで見たけど、捨てらんないのよねぇ」と相手が言うのと同じようなものなのかもしれません。
お祭りでみんなが楽しそうに歌っていた船に乗る歌も、仲間を先にのせるべきだ、と歌っているのです。
Les copains d'abord 仲間を先に
日本では ひがしの ひとし という方がカバーしています。
この歌の歌詞、とても難しいです。固有名詞がいっぱいで、自分が作者の本意を汲み取って訳すには30年早い気がします。また、彼の歌はフランス人じゃないとわからないという声もあるそうです。しかし、世界中に彼の信奉者はおり、日本にもブラッサンスの歌をすべて日本語に訳して、解説を試みているというすごいサイトがあります。
もしこの記事でブラッサンスに興味をお持ちになったらごらんになってください。(画像クリックで飛びます)
彼はまた、ルネ・クレール René Clair 監督の「リラの門 Porte des Lilas」 (1957) という映画に楽師の役で出演しています。
映画より抜粋。3分ちょっと
この映画、見たことありませんが Porte des Lilas というのは地下鉄の駅の名前だそうです。ゲンズブールの歌にもでてきますね。
同じ「虎と小鳥のフランス日記」の受講生のRicottaさまも、歌詞を紹介し、訳されています。在仏のRicottaさまによりますと、フランス人はみんなこの歌を知っていて歌えるらしいです。
やはり同じ受講生でこれまた在仏のBijaさまの記事では、フランス人がこの歌手に対して抱いている気持ちをかいまることができるエピソードが紹介されています。Bijaさまは現在、南仏のBrassensの生まれた セート Sete という港町に比較的近いところ(といっても車で90分だそうですが)にお住まいです。
最後に、私が好きな Dans l'eau de la claire fontaine 1962 (澄んだ泉の水の中)という短い歌をお聞きください。
YouTube、埋め込み禁止なのでリンクを貼っておきます。
⇒http://youtu.be/ReTHRNMU2to
始めて聞いたとき、マキシム(Maxime le forestier)に似ていると思ったのですが、彼が、Georges Brassensの影響を受けているのですね。
前述のサイトの解説によりますとこれは水の澄みわたった泉で女の子が裸で泳いでたら、風がふいてきて、服が飛んでいってしまった。女の子が、探してにいってほしい、ついでにみかんと薔薇のお花も持ってきて、と目配せしたから・・・という内容です。
森の奥にある泉のすきとおった水、朝の光、風、まわりにある木々やお花。そんなものを思い浮かべながら聞くとよさそうです。
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