ツナギという、高等テクニックについて解説します。
値動きを見ながら臨機応変にポジションを操作する、ひとつのワザです。
ふだん使わなくても、知識としてもっているだけで、売買がスムーズになるケースは多々あると思います。今日は、ツナギのシンプルな活用法を挙げ、実質的な効果というものを考えてみます。
まずは、対面営業の証券会社で現実に起きたことを紹介します。
持ち株の動きが鈍い状況で、担当の証券マンが顧客に「もう切ってしまいましょう」と言いたかったのですが、それでは納得しないだろうと、買いポジションはそのまま、同株数のカラ売りを提案しました。
顧客は、そのとおりに実行しました。
買い値よりも売り値(カラ売りした価格)が少し低いのですが、完全な両建ての状態になりました。すると、日々の値動きを見ながら顧客が、次のように言いました。
「上がってよろこべばいいのか、下がってよろこべばいいのか、わからないよ」
「なんのために両建てしてフタをしたの?」なんてツッコミを入れたくなるかもしれませんが、この感想こそが大切だと思うのです。
ツッコミを入れるとしたら、「あなたの確固たる見通しは?」「なにもないの?」というものです。
「売りでも買いでもいいからポジションを持って、毎日の変動を見て一喜一憂するのが目的なのですか?」ということです。
今回の話は、この「自分の見通し」がキーワードです。
利益を狙ってポジションを取るのですが、ポジションを持った瞬間から、マーケット価格の変動によって含み損益が生じます。それが日々、変わっていきます。大切なカネが期待どおりに増えるか、悲しいことに減るか……とても切実な問題です。
そんなことはオトナとして十分に理解しながらも、つい「これから上がるのか、下がるのか」なんて誰にもわからないことをさぐろうと、情報さがしをしてしまうのが人間の心理です。
そんな気持ちが強くなると、ある重要なものが頭から消えてしまいます。
『自分の想定』『自分自身の見通し』です。
先の株価なんて完全に見通せないので、値動きを見て自分なりに判断するしかありません。
その判断の基準は、他人の情報などではなく、自分自身の基準です。
ポジションを取る行動を、簡略化してみます。
「上がると思うから買う」「下がると思うから売る」という、実に単純な説明が浮かび上がります。
現実では、「わからない(読めない)から何もしない」という重要な選択肢があるのですが、いずれにしても自分の見通しを明確にして、それをポジションに反映させるのが私たち実践者のシゴトです。
こんどは、少し具体的な売買を想像しながら考えてみます。
例えば安値で小動きになっている銘柄について、「底固めをしている」と買いを決断した場合、直近の安値保合をガクンと下回ったときは損切りを決断しやすいでしょう。基準を見出しやすいわけです。
でも、思惑どおりに上昇して中段と思える価格帯になったら、マーケットらしく値動きは荒くなります。高値圏なんて、全くつかみどころがありません。基準を見つけにくいのです。
そんなとき、ツナギ売りをかける方法が有効です。
例えば300円で3千株買ったら、うまく上昇して400円になったとします。
「ここで3千株すべて手仕舞いして利益を確保しようか」「いや、さらに伸びるならポジションを維持したい」と迷うような状況で、“自分なりの基準”を自分の手でつくるのです。
100株、あるいは200株でもいいので、カラ売りを仕掛けてみるのです。
300円で買った3千株の現物は維持したまま、一部を両建てにするということです。
ツナギ売りです。
―12月26日(金)のブログにつづく―